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第一章冒険者偏

裏事情

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「父上、こんなに時間をかけて大丈夫なんですか。
 あれほど強引な方法をとってきた皇族の方です。
 ラナが直ぐに行かないと、処罰しろと言ったりしないですか?」

 私が気にしていたことを、イヴァンが質問してくれます。
 私を本気で心配してくれている事が、表情と声色で分かります。

「それは大丈夫だ。
 今特に切羽詰まって護衛が欲しいわけではない。
 そんな皇族の方が、今無理矢理呼べは亜竜殺しだが、半年待てば属性竜殺しになる護衛を、直ぐに呼ぶと思うか」

「呼ばないですね。
 自分の護衛が属性竜殺しだと自慢したいでしょうからね。
 しかし半年ですか。
 半年で属性竜を狩れますか?」

「このメンバーだ。
 見つけさえできれば狩れるさ。
 半年過ぎて狩れなくても、鉤竜骨革鱗鎧に鉤竜牙剣と鉤竜牙槍を加えて献上すれば、お咎めもないよ」

 さすがですね。
 長年皇城に勤められているだけに、駆け引きが巧みです。
 最底辺の徒士職でも、普段から目配りをかかさなければ、これくらい駆け引きができるようになるのですね。
 考えるのが苦手な、槍一筋の義父上とは違いますね。
 でもなぜでしょう?
 亜竜種を狩った事のあるジョージ様なら、最低でも騎士、士爵の地位は得られたはずですよね。

「父上。
 なぜゲイツ家は徒士職なのですか。
 お爺様や父上なら、騎士や士爵になれたのではありませんか?」

 ダニエルも私と同じことが気になったようです。

「道場とクランを続ける事を条件にしたからさ。
 お目見え以上だと色々うるさいからな。
 だが結局一代騎士を拝命してしまって、マルティンを魔都に送るのが、予定よりだいぶ遅れてしまった。
 しかし属性竜さえ狩れれば、代々属性竜を狩る事ができる当主を育てるためと、人質の嫡男を皇都から自由に出せるようになる。
 ここはゲイツ家にも正念場なのだ」

 色々と事情があるのですね。
 妻子が皇都に残らなければいけないのが人質なのは常識ですが、大ぴらに口にするのは憚られる事なのですが、ジョージ様は平気ですね。
 もっとも、こんな魔境に奥深くについて来れる密偵などいないと思いますが。

「静かにしな。
 禽竜の群れがいるよ。
 最初に前衛職で誘い出して斃せるか試しな。
 厳しいようならエマとニカにやらせるよ」

「「「「「はい」」」」」

 私達はこれを最後に黙りました。
 相手は禽竜です。
 属性竜を狩る前に、中型亜竜、大型亜竜を斃して練習します。
 それに、強制出仕させられることを前提に貯金を殖やしておかないといけません。
 四トン級の禽竜は八千万小銅貨になります。
 七十トン級の腕龍にいたっては四十二億小銅貨です。
 一頭狩れれば無理に冒険者を続ける必要などありません。
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