上 下
42 / 99
第一章冒険者偏

属性竜

しおりを挟む
「属性竜ですか?!」

 私は思わず声をあげてしまいました。
 ジョージ様に相談したのは、もっと穏やかな答えを期待してです。
 命懸けとは言いましたが、命懸けの桁が違います。

「ああ、属性竜だ。
 属性竜が狩れるような戦闘侍女、いや、後宮騎士が求められている。
 厄竜の恐怖を感じているのは後宮も同じだ。
 属性竜を狩れるような護衛を、喉から手が出るほど求めている」

「二度の強制出仕で大量の実力者を召し抱えたのではありませんか?」

「確かに召し抱えたさ。
 だが実際に竜を狩ったのは魔法使いだ。
 チームで協力して亜竜種を狩った冒険者はある程度いる。
 だが属性竜を狩ったモノはいない。
 前衛職だけで、しかも後宮に入れる女性で、亜竜を狩った冒険者はいない
 俺も亜竜は狩ったことがあるが、属性竜はない。
 そもそも属性竜を探し出すことすら難しい」

「その属性竜を狩れと言われるのですか?!」

「単独ではない。
 前衛職だけでもない。
 魔法使いを加えたパーティーでの狩りだ。
 『破竜隊』に何人かの手練れを加える。
 もちろん俺も加わる。
 属性竜を狩れる機会など、もう二度とないかもしれないからな」

 ジョージ様に皇都との交渉をお任せしたのですが、とんでもない話になりました。
 属性竜を狩る!
 冒険者になろうと思った時には、考えもしなかった事です。
 あの時は、何年もかけてでもレイ家の借金さえ返せればいいと思っていました。
 亜竜ですら狩れるとは思っていませんでした。
 いえ、亜竜種に挑む気さえありませんでした。
 それが、今ではドラゴンスレイヤーです。
 それを誇りに思っていましたが、こんな面倒ごとになるとは!

「そんな顔をするな、その分報酬はでかいぞ。
 属性竜の骨革鱗鎧、属性竜牙剣、属性竜牙槍を持っているのは、王侯貴族か属性竜を狩った者だけだ。
 それを装備していれば、後宮でも一目も二目を置かれる。
 嫌がらせや毒を盛られる可能性が低くなる」

「低くなるだけで、嫌がらせや毒殺が、もれなくついてくるんですか?!」

「後宮とはそう言う所だ。
 それは諦めろ。
 だが場合によれば、後宮限定ではなく、政宮にも出仕する、正規の近衛騎士になれるかもしれない。
 属性竜を斃すというのは、それくらい大きな名誉なのだ。
 腹を括れ。
 その代わり、狩れたら最初から士族の最上位、准男爵として召し抱えられる。
 まあ、その分軍役も四十人あるが、それは冒険者の子供を連れて行け」

「分かりました」

 頭と心が混乱していますが、ジョージ様にお任せしたのです。
 やるしかありません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢の隠れた才能

vllam40591
ファンタジー
婚約者から一方的に婚約を破棄された令嬢が、実は王国に伝わる伝説の魔法使いの生まれ変わりだったことが判明する。彼女は自身の力に目覚め、王国を脅かす古代の魔物と戦うことになる。かつて彼女を捨てた婚約者や、彼女を蔑んでいた貴族たちは、彼女の真の姿を目の当たりにして後悔することになる。

私の婚約者が伯爵令嬢に取られそうでしたので、思い詰めてその伯爵令嬢を殺したのですが、殺す前の日にタイムリープしちゃうのです

もぐすけ
ファンタジー
 私はクレア・バートン。花も恥じらう十七歳。婚約者はユリウス・レンブラント。幼少のときから私は彼が大好きで、彼の妻になることが夢だったのよ。ところが、私は親友だとは思っていないのに、親友面するアリサ・リットンに取られそうなの。  だから、思い詰めてアリサを殺したんだけど、何故か殺す日の朝に逆戻り。  タイムリープって現象らしいのだけど、普通は殺された方がタイムリープするのではなくって?  私のバートン家は子爵ではあるけど、手広く貿易商を営んでおり、王国でも有数の資産家なの。ユリウスのレンブラント家は侯爵様だけど、近年事業が上手く行っておらず、財政的に苦しいのよ。そういうことで、むしろこの婚約はレンブラント家の方が乗り気だったのに、どうしてこうなるのよ。  アリサのリットン家は東北地方に古くからある伯爵家みたい。領地は広いけど、寒い地方なので、そんなに裕福だという話は聞いていないわ。ただ、東北地方では力があるし、領内に幾つか鉱山があるそうで、有力貴族の一つではある。  でも、どう考えても、私の方が魅力的だし、お金持ちなのに。  そんなにアリサがいいなら、あなたなんかアリサにくれてやるわっ。

1話でざまぁして終わる、パーティ追放

ひつじのはね
ファンタジー
追放ものってすごく多いですよね!それで、私ならどう書くかなとふと思って書いてみました。 1話でちゃんと「ざまぁ」して終わるのでどうぞご覧下さい!

私、平凡ですので……。~求婚してきた将軍さまは、バツ3のイケメンでした~

玉響なつめ
ファンタジー
転生したけど、平凡なセリナ。 平凡に生まれて平凡に生きて、このまま平凡にいくんだろうと思ったある日唐突に求婚された。 それが噂のバツ3将軍。 しかも前の奥さんたちは行方不明ときたもんだ。 求婚されたセリナの困惑とは裏腹に、トントン拍子に話は進む。 果たして彼女は幸せな結婚生活を送れるのか? ※小説家になろう。でも公開しています

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

侯爵家執事 セバスチャンの日常

蒼あかり
ファンタジー
皆様、はじめまして。 わたくし、セルディング侯爵家執事長のセバスチャンと申します。 本日は、わたくしの日常を書いてくださるという事で、何やらお恥ずかしい限りでございます。特段事件などもおきず、日々の日常でございますので面白おかしいことなどもなく、淡々としたものになるかと。 それでももし、興味を持たれましたならば、ご一読いただけますと嬉しく思います。 どうぞ、よろしくお願いいたします。 執事セバスチャンでございました。

聖女追放。

友坂 悠
ファンタジー
「わたくしはここに宣言いたします。神の名の下に、このマリアンヌ・フェルミナスに与えられていた聖女の称号を剥奪することを」 この世界には昔から聖女というものが在った。 それはただ聖人の女性版というわけでもなく、魔女と対を成すものでも、ましてやただの聖なる人の母でもなければ癒しを与えるだけの治癒師でもない。 世界の危機に現れるという救世主。 過去、何度も世界を救ったと言われる伝説の少女。 彼女こそ女神の生まれ変わりに違いないと、そう人々から目されたそんな女性。 それが、「聖女」と呼ばれていた存在だった。 皇太子の婚約者でありながら、姉クラウディアにもジーク皇太子にも疎まれた結果、聖女マリアンヌは正教会より聖女位を剥奪され追放された。 喉を潰され魔力を封じられ断罪の場に晒されたマリアンヌ。 そのまま野獣の森に捨てられますが…… 野獣に襲われてすんでのところでその魔力を解放した聖女マリアンヌ。 そこで出会ったマキナという少年が実は魔王の生まれ変わりである事を知ります。 神は、欲に塗れた人には恐怖を持って相対す、そういう考えから魔王の復活を目論んでいました。 それに対して異議を唱える聖女マリアンヌ。 なんとかマキナが魔王として覚醒してしまう事を阻止しようとします。 聖都を離れ生活する2人でしたが、マキナが彼女に依存しすぎている事を問題視するマリアンヌ。 それをなんとかする為に、魔物退治のパーティーに参加することに。 自分が人の役にたてば、周りの人から認めてもらえる。 マキナにはそういった経験が必要だとの思いから無理矢理彼を参加させますが。

才女の婚約者であるバカ王子、調子に乗って婚約破棄を言い渡す。才女は然るべき処置を取りました。

サイコちゃん
ファンタジー
王位継承権を持つ第二王子フェニックには才女アローラという婚約者がいた。フェニックは顔も頭も悪いのに、優秀なアローラと同格のつもりだった。しかも従者に唆され、嘘の手柄まで取る。アローラはその手柄を褒め称えるが、フェニックは彼女を罵った。そして気分が良くなってるうちに婚約破棄まで言い渡してしまう。すると一週間後、フェニックは王位継承権を失った――

処理中です...