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第一章冒険者偏

天誅

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「うっへへへへ!
 もう逃げられんぞ。
 よくも散々恥をかかせてくれたな。
 もっと早く俺の言う事を聞いていればよかったんだよ。
 そうすればこんなことにならなかったんだ。
 だがもう逃がさないからな。
 全員で、吐くまで嬲ってやるよ」

「「「「「ぐへへへへ」」」」」

「恥知らず!
 それでも準男爵ですか!
 騎士団員ですか!
 絶対に許さない!
 泣き寝入りなんてしない!
 訴えてやる!」

「ふっふっふっふ。
 死人に口なしなんだよ」

「はぁあ?!
 何が死人に口なしだ!
 死ぬのはてめえらだ!」

 ドウラさんの怒りは激烈でした。
 情け容赦が一切ありませんでした。
 まあ、私も必要ないと思いますが、私にはあれほどの事はできません。
 だって乙女ですから。

 そして一瞬でした。
 何の躊躇いもなく、皇国に仕える士族の騎士を叩きのめしました。
 ドウラさんは最初に屑騎士が抵抗できないようにしました。
 十一人の騎士の四肢を、膝と肘の部分で粉砕したのです。

 これはかなり残虐な骨の折り方です。
 前腕や上腕、下腿や上腿で折れば、努力次第で元通り使う事も可能です。
 ですが関節部で折られたら、特に骨を粉砕されたら、ほぼ完治は不可能です。
 関節が元通り動くことはありませんし、動かすたびに激痛が走ります。

「ラナ、三人を連れて団本部に戻ってな。
 これから先は女子供の見るもんじゃないよ」

「はい、こちらに来てください」

 たぶん拷問するのでしょう。
 眼を覆い耳を塞ぎたくなるような凄惨な拷問のようです。
 私達を一人前の冒険者にするために、殺人を経験させるほどのドウラさんが、私達に席を外せというくらいですから。

 まあ、我が家やゲイツ家に気を使ったこともあるでしょう。
 底辺に近い士族家、徒士家と騎士家とはいえ、これでも皇国に仕える士族です。
 明らかな犯罪者であろうと、皇国騎士相手に私刑を下すのです。
 参加するのが不味いのは誰の目にも明らかです。

「さて、これは冒険者に伝わる私刑だ。
 冒険者同士の闇討ちじゃあ、ここまではやらん。
 冒険者が依頼人を裏切ったり、何の罪もない女子供を襲った時に行う私刑だ。
 普段偉そうに地位を振りかざして平気で強請り集りをする、誇り高い皇国騎士団様だからこそ、皇帝陛下の御名を穢した時の罰は心得ているよな」

「やめろ、やめんか!
 俺は準男爵だぞ!
 こんなことしてタダですむと思うなよ!」

 私達が母娘の家を出ようとしたとき、首謀者であろう男の声が聞こえました。
 馬鹿です。
 そんな事を言ったら、ドウラさんの怒りの炎に油を注ぐようなモノです。
 でも少しは根性があるのかな?
 あの状態でドウラさんを脅せるのですから。

 いえ、違いますね。
 魔法薬でも飲んだのでしょう。
 腐っても準男爵様ですからね。
 それくらい装備品は持っていたのでしょう。
 でも救い難い馬鹿だと思います。
 同じ痛みを繰り返すだけなのが分かっていません。
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