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第一章冒険者偏

魔熊胆

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 ドウラさんの合図です。
 イヴァンが左、ダニエルは右に大きく迂回します。
 ドウラさんの合図で、周りに強敵がいないのは分かっています。
 エマとニカを護衛しながら前進します。
 私達の狙いは魔熊です。

 魔熊はとても強いのに警戒心が強く、狩り難い魔物です。
 魔熊の買い取り価格は千キログラムで二十万小銅貨と、とてもおいしいです。
 しかもドウラさんが高品質で狩れば、三十万銅貨で売ることも可能です。
 でも単に買い取り価格的に考えるのではなく、危険度も考えないといけません。
 逆襲の心配のない魔鹿と同じ値段ですから、狙って狩るなら魔鹿の方が安全です。

 普通のというべきか、今までのというべきかは分かりませんが、今迄の冒険者は単価の高いモノを狩ればいいと言う姿勢でした。
 ですがドウラさんは、市場が必要としている魔獣薬の材料を狙うのです。
 それも最良の状態で、よりよく効く魔獣薬の素材を確保する。
 もう漢気があり過ぎて、惚れてしまうやろ、状態です。
 そんな話を女性クランメンバーと話していたら、イヴァンとダニエルが会話に加わってきました。

「ラナ。
 俺も漢気を磨くように努力する」

「イヴァン!
 抜け駆けするな。
 ラナ。
 俺も漢気を磨く。
 以前のような腐った言動は絶対にしない。
 約束する」

 本当に訳が分かりません。
 イヴァンとダニエルが漢気のある人間になろうと、私には全く関係ありません。
 まあ、ゲイツ道場とは一生縁があると思います。
 いえ、ゲイツ家には命を賭けなければいけないくらいの恩があります。
 ですから、イヴァンとダニエルが漢気のある人間になりたいのなら協力します。
 
 魔熊の気配が右に行きます。
 それくらいの気配は分かるようになりました。
 このメンバーではダニエルが一番弱いのでしょう。
 魔熊は頭がいいので、一番弱い所を狙って逆襲してきます。
 エマとニカが魔法を発動します。
 その気配も分かるようになりました。

 まだ相当遠いのに、魔熊の首がすっぱりと斬り飛ばされました。
 噴き出す血が地を染めずに空中に留まります。
 血液を無駄にしないようにしているのでしょう。
 エマとニカが強くなっています。
 私なんかより遥かに強くなるのが早いです。
 それも当然ですね。
 私の何十倍も多くの魔獣を狩っているのですから。

「助かりましたよドウラさん。
 魔熊胆薬が不足していたのです。
 これで南方で発生している疫病に備えられます」

「そうかい、それはよかった。
 まあ社会貢献は良質な素材を狩る事で果たしている。
 それ相応の対価はいただきたいね」

 ドウラさんはとても心優しい人です。
 ですがそれを表に出すと、それを狙う腐れ外道がいます。
 だから表面的には憎まれ口を叩かれます。
 親しくなれば、ドウラさんの漢気を知ることができます。

「今回は領主が補助金を出していますので、魔熊に関しては三十八小銅貨で買い取らせていただきます」

 美味しい獲物でしたね。
 私の取り分は三万八千小銅貨です。
 単体では目標日当の半分にもなりませんが、他の獣や魔獣を狩っていますから、一日の目標八万小銅貨は確保出来るでしょう。
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