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1話

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「オリビア御嬢様、長旅お疲れになられてでしょう。
 部屋の用意はできております。
 側仕えと護衛の部屋も整えております。
 今日はまずお休みください」

「ありがとう、ジョージ。
 本当に疲れてしまっているの。
 言葉に甘えさせてもらうわ」

 本当は、城を護ってくれている騎士団員全員に挨拶すべきなのですが、今の私にそんな余力はありません。
 ジョージもその事をわかってくれていて、気遣ってくれているのでしょう。
 ジョージは昔から優しい性格なのです。
 勇猛果敢な性格になり、武に秀でるようになるとは思いませんでした。

 公爵家の第二騎士団長を務めるジョージが、わざわざ自ら案内してくれたのは、辺境の飛び地を護る城の最上階、父である公爵が訪れた時に使う部屋です。

「私がここを使っていいのですか?」

「オリビア御嬢様は公爵閣下の名代、城代となられますので、当然ここをお使いいただきます」

 本当に大丈夫なのでしょうか?
 婚約者である王太子を妹に寝取られた私は、公爵令嬢としての面目をなくしてしまいました。
 王家とっても公爵家にとっても、拭い難い醜聞となります。
 隠蔽するには私を殺してから病死として届け、仕方なく妹のアイラが婚約者に選ばれたことにするしかありません。

 ですが父上と母上は、そのような非情な手段はとられませんでした。
 それどころか、アイラと王太子を激しく面罵してくださいました。
 その怒りようは、公爵家が兵を起こすのではないかと、国王陛下を恐怖させるほどだったと、後で家老から聞かされるほどでした。
 本当にありがたい話です。

 事を穏便に収めようとされた国王陛下が、私を重病人として、辺境の飛び地で隠棲させてはどうかと提案されました。
 陛下は優柔不断なところはあられるのですが、決して邪悪な方ではないのです。
 マクリントック公爵家への詫びとして、私の代わりにアイラが婚約者としてえらばれました。
 あの王太子が相手ですから、幸せになれるとは思えませんが、幸せの基準が私とアイラでは全く違いますから、アイラは幸せなのでしょう。

 私個人への詫びは、王家の領地から伯爵に相応しい領地を割譲してくださるそうですが、そのほとんどは王太子の台所領からだという話です。
 それが国王陛下の王太子に対する罰なのでしょうが、その程度の事で懲りる王太子とはおもえません。

 私が割譲された領地に関しては、父上が代官を送って検分してくださっています。
 その王太子が直轄領として統治していたのです。
 もしかしたら再建不可能なくらい荒廃しているかもしれません。
 父上はそれを心配して、私を送らず代官を送ってくださったのでしょう。

「ジョージ。
 私は結婚もできないくらい重病だという事になっているのだけれど。
 割譲していただいた領地にも、そういう理由で代官を送っているのよ。
 本当に城代になってもいいのかしら?」
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