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1章

4話

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 俺にはこの世界の武器の良し悪しなど分からないけれど、呪いにかかったエルフが欲しくなるほどの名剣なのだろう。
 俺は百婆ちゃんが、それほどの名剣を貸してあげるのか心配になった。
 百婆ちゃんは海千山千のしたたか者なのだと、こっちにきてから思い知ったから。

「ふむ、その武器は鬼に特化しておる。
 鬼以外には全く普通の剣と同じじゃ。
 それでは命の恩を返してもらうには不便であろう。
 ヘルミは薙刀は使えるのか?」

「ええ、剣と同じように使えるわ。
 よほど狭い場所でない限り、間合いが長い方が有利だからね。
 狭い場所でも、短く持って戦う技も極めているわ」

「だったらこの薙刀を使ってみろ。
 ある名工が鍛錬した『静御前』と言う銘までつけられている名薙刀だ」

「それを貸してもらえるなら、どんな場所でどんな敵と戦っても負けない自信があるわ、ソウタの教育と護衛は任せて」

 俺を置いてけぼりにして、百婆ちゃんとヘルミの会話はドンドン進んでいく。
 百婆ちゃんが俺に貸してくれた武器は、全部特殊な力が付与されているのだろう。
 恐ろしく強力な武器なのだろうことが、二人の会話で分かる。
 ヘルミが俺の教育係兼護衛を務めてくれるようだが、俺は大丈夫なのだろうか?
 さっきのように興奮してしまって、とても戦いに集中できる状態ではなくなってしまうのではないだろうか?

「槍太。
 冒険者登録が終わったから行くよ」

 百婆ちゃんがサクサクと全部決めていく。
 ヘルミと条件を整えるのに、冒険者組合の食堂を利用したが、そのついでに俺の冒険者新規登録と、百婆ちゃんの冒険者登録確認をした。
 俺の新規登録には何の問題もない。
 書類を書いて提出し、首から下げる階級に応じた認識票をもらうだけだ。

 問題は百婆ちゃんの確認だ。
 高祖父の政就爺ちゃんが亡くなってから異世界にこれなかった百婆ちゃんは、長い間冒険者として活動していないのだ。
 その活動休止期間に死亡認定されている可能性があるし、その当時の認識票を見せても、偽者が成り済まそうとしていると認めてもらえないことがあるそうだ。

 だが、エルフ族のヘルミが本人だと証明してくれたことと、当時の認識票を持っていたことで、何の問題もなく百婆ちゃんは本人だと認定された。
 最初に会った場面であまりに弱く見えたので、気安く対応していたのだが、ヘルミはとんでもなく有名で実力も伴った冒険者のようだ。

 そんなヘルミが、実力を発揮できないでいるのは、とても可哀想だと思った。
 助けてあげられるものなら、助けてあげたいと思った。
 まあ、でも、俺は百婆ちゃんの言いなりなんだけど。

「ミト、次はどこに行くんだ?」

 ヘルミが百婆ちゃんを名前で呼ぶ。
 もうすっかり仲良しのようだ。

「槍太を鍛えるならオーク狩りがよかろう」
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