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2章
27話
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私も父上様に負けておられません。
この領地にはモアの敵の片割れがいます。
本当の敵はイーハ王ですが、キラン・バーンも見過ごす訳にはいきません。
全力で支援して、モラに敵を討ってもらいます。
「皆の者。
ここはモアの敵が領主をしています。
正々堂々と名乗りを上げて、討ち果たしてもらおうと思います。
戦装束に着替えなさい」
「「「「「はい」」」」」
妾の指揮を受けた嬢子団は、予備の馬に積み込んでいた、深紅の陣羽織を羽織りました。
人間だけでなく、馬にも煌びやかな馬装を着せました。
モア一世一代の仇討ちです。
嬢子団の正装を着込んで戦うべき晴れ舞台なのです。
しっかりと準備を整えました。
腹ごしらえもして、万が一の時に見苦しくないように、下の事を済ませました。
斥候の者が、キラン・バーンとその家族が城にいる事も突き止めてきました。
準備万端整えて、嬢子団全騎でバーン城に討ち入りました。
どれほど厳重に城門を固めていようとも、ギャラハー馬の蹴りが破壊してくれます。
「我はダラ・オフラハーティが一子モア・オフラハーティ男爵。
卑怯にも父を騙し討ちしたキラン・バーン。
いざ尋常に勝負しろ」
「ふん。
正々堂々の試合なら、小娘に負ける我ではないわ。
そんな勇気などあるまい」
「馬鹿を言え。
お前のような卑怯者、姫様や友の力を借りるまでもない。
一人で討ち取ってくれる」
「小娘が口だけは一人前だな。
愚か者の子はやはり愚か者だ。
父親同様、体裁に囚われて死ぬがいい」
次々と城門を突破した妾達は、本丸の館まで入り込み、キラン・バーンを引き出しました。
ですが憎々しい事に、キラン・バーンは返り討ちを宣言しました。
モラが正々堂々の勝負を挑むように仕向けて、死地から脱出する心算でしょう。
自分の剣技に自信があるのでしょう。
ですが、それは過信というモノです。
当時は事情を知りませんでしたが、モアの敵討ちにかける思いは鬼気迫るモノでした。
鍛錬する姿は、見ていて寒気がするほどでした。
老臣から伝えられた亡き父の剣すじ。
父上様が付けられた剣術指南役の技。
自ら工夫した新しい技。
その全てを、身に付けています。
反復に反復を重ねる鍛錬で、何時も手足の血豆が破れていました。
時には幾本もの骨が折れ砕けても、実戦訓練で自分より強い相手向かっていってました。
治癒魔法で骨折を癒した直ぐ後で、内臓を痛めて血を吐きながら実戦訓練を重ねていた事もありました。
見ていて寒気がするほどの鍛錬でした。
フィン兄も同じ実戦訓練を重ねていました。
先に双剣術を極めていたフィン兄は、オフラハーティ男爵家の陣代ではありましたが、モアに立ちはだかる壁でもあったのです。
フィン兄にとっても、モアは自分を追い込むためのよきライバルだったのでしょう。
二人が競い合って昇華させたオフラハーティ双剣術は、キラン・バーンに遅れを取ることはないと、妾は信じています。
この領地にはモアの敵の片割れがいます。
本当の敵はイーハ王ですが、キラン・バーンも見過ごす訳にはいきません。
全力で支援して、モラに敵を討ってもらいます。
「皆の者。
ここはモアの敵が領主をしています。
正々堂々と名乗りを上げて、討ち果たしてもらおうと思います。
戦装束に着替えなさい」
「「「「「はい」」」」」
妾の指揮を受けた嬢子団は、予備の馬に積み込んでいた、深紅の陣羽織を羽織りました。
人間だけでなく、馬にも煌びやかな馬装を着せました。
モア一世一代の仇討ちです。
嬢子団の正装を着込んで戦うべき晴れ舞台なのです。
しっかりと準備を整えました。
腹ごしらえもして、万が一の時に見苦しくないように、下の事を済ませました。
斥候の者が、キラン・バーンとその家族が城にいる事も突き止めてきました。
準備万端整えて、嬢子団全騎でバーン城に討ち入りました。
どれほど厳重に城門を固めていようとも、ギャラハー馬の蹴りが破壊してくれます。
「我はダラ・オフラハーティが一子モア・オフラハーティ男爵。
卑怯にも父を騙し討ちしたキラン・バーン。
いざ尋常に勝負しろ」
「ふん。
正々堂々の試合なら、小娘に負ける我ではないわ。
そんな勇気などあるまい」
「馬鹿を言え。
お前のような卑怯者、姫様や友の力を借りるまでもない。
一人で討ち取ってくれる」
「小娘が口だけは一人前だな。
愚か者の子はやはり愚か者だ。
父親同様、体裁に囚われて死ぬがいい」
次々と城門を突破した妾達は、本丸の館まで入り込み、キラン・バーンを引き出しました。
ですが憎々しい事に、キラン・バーンは返り討ちを宣言しました。
モラが正々堂々の勝負を挑むように仕向けて、死地から脱出する心算でしょう。
自分の剣技に自信があるのでしょう。
ですが、それは過信というモノです。
当時は事情を知りませんでしたが、モアの敵討ちにかける思いは鬼気迫るモノでした。
鍛錬する姿は、見ていて寒気がするほどでした。
老臣から伝えられた亡き父の剣すじ。
父上様が付けられた剣術指南役の技。
自ら工夫した新しい技。
その全てを、身に付けています。
反復に反復を重ねる鍛錬で、何時も手足の血豆が破れていました。
時には幾本もの骨が折れ砕けても、実戦訓練で自分より強い相手向かっていってました。
治癒魔法で骨折を癒した直ぐ後で、内臓を痛めて血を吐きながら実戦訓練を重ねていた事もありました。
見ていて寒気がするほどの鍛錬でした。
フィン兄も同じ実戦訓練を重ねていました。
先に双剣術を極めていたフィン兄は、オフラハーティ男爵家の陣代ではありましたが、モアに立ちはだかる壁でもあったのです。
フィン兄にとっても、モアは自分を追い込むためのよきライバルだったのでしょう。
二人が競い合って昇華させたオフラハーティ双剣術は、キラン・バーンに遅れを取ることはないと、妾は信じています。
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