皇女激愛戦記

克全

文字の大きさ
上 下
67 / 80
第二章

第67話:皇都追放刑

しおりを挟む
 皇紀2222年・王歴224年・春・皇居・14歳

「「「「「ギャアアアアア」」」」」
「こ、こ、こ、殺さないでくれ」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「お、お、お、おゆるしを、お許しください」
「へいか、陛下、おたすけを」
「お、お、おた、おた、おたすけ、おたすけください」
「殿下、皇女殿下、私が悪うございました、お許しください」

 魔狼達がわたくしの決定に文句を言った重臣達の首に咬みつきました。
 ほんの少しでも力を加えれば、簡単に咬み千切ることができます。
 いえ、その気になれば頭を喰らう事すらできるのです。
 あまりの恐怖に、国王達のように大小便を垂れ流しています。
 皇帝陛下の決定に逆らっただけでなく、その御前で許し難い失態を起こしたのですから、当然厳重処分にしなければいけません。

「無礼者、皇帝陛下の決定に逆らっただけでなく、下劣で臆病な国王主従と同じように、皇族の御前で粗相をするとは何事か。
 そのような礼儀知らずの根性なしに皇国貴族を名乗る資格はない。
 皇帝陛下の決定に異論をはさんだ罪で一年間の皇都追放刑とする。
 更に皇帝陛下の御前で大小便を垂れ流し、陛下の目を穢した許し難い罪により、奪爵処分とする、皇居からつまみ出せ」

 最初からこうなる事を予測していたシャーロットが、形だけわたくしと皇帝陛下の方を見てから、情け容赦のない断罪を行ってくれました。
 いつ魔狼達による大虐殺が行われるか分からない状態です。
 それを間近に見ている皇帝の背後には、わたくしの決定に文句を言った貴族を何時喰らうか分からない魔狼達よりも、遥かに高位の魔狼が殺気を放っているのです。
 身勝手で憶病で自分が一番大切な皇帝に、この状況でわたくしに逆らう気概など、毛ほどもないのは分かっています。

「皇帝陛下よりも、皇国よりも、寄り親の選帝侯に忠誠を尽くしていると直ぐに分かる謀叛人は追い出しましたが、再度確かめなければいけません。
 ここに残っている者は、忠誠心のある皇国の貴族ですか、それとも、多少は度胸のある謀叛人ですか」

 シャーロットが、皇国会議の場に残った貴族達に、わたくしに忠誠に誓うのか、それとも選帝侯たちに忠誠を使うのか、決断を迫ります。
 馬鹿でない限り、これまでの状況から、皇帝が傀儡で、実際に全てを決めているのがわたくしだと理解しているでしょう。
 皇帝に忠誠を尽くすのでも選帝侯たちにすり寄るのでも構いません。
 忠誠心や胆力を示して皇国会議の場から出て行くのなら、見逃してあげます。
 そしてわたくしの味方に付くのなら、庇護してあげます。

「私は皇帝陛下に忠誠を尽くす皇国貴族でございます。
 寄り親だったアバコーン選帝侯家には代々お世話になってきました。
 ですが、それは、皇国政府の秩序に従っていただけでございます。
 私は皇帝陛下の家臣であり皇国貴族でございます。
 その本分を忘れ、皇家に叛してアバコーン選帝侯に仕える気はありません。
 皇帝陛下の選帝侯家の奪爵と追放に賛成させていただきます」

「私も、私の賛成させていただきます」
「私も皇家家臣です、謀叛など露ほども考えていません」
「私も皇国貴族です、皇家に忠誠を尽くします」
「皇帝陛下の御決定に賛成させていただきます」
「選帝侯家の奪爵と追放に賛成させていただきます」

 皇国会議を始めた時の三分の一ほどになってしまいましたが、残った重臣達が異口同音に皇家に忠誠を誓い、選帝侯家の奪爵と追放に賛成してくれました。
 なかには浅知恵を働かして、皇家ではなく皇帝に忠誠を誓う者がいますが、わたくしの利益になる間は見逃してあげます。
 大切なのは、わたくしがハリー様の所に降嫁できるようにする事です。

 それにしても、伯父上はよくやってくれました。
 事前に話し合っていたとはいえ、よく騒動後の皇国会議を選帝侯家の奪爵と追放の流れに導いてくれました。
 何か御礼をしたいのですが、お金や食糧はハリー様が支援してくれていますから、やはり皇国政府での役職を与えるのが一番ですね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました

扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!? *こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。 ―― ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。 そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。 その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。 結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。 が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。 彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。 しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。 どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。 そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。 ――もしかして、これは嫌がらせ? メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。 「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」 どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……? *WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...