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第二章
第41話:化粧領と賠償金
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皇紀2218年・王歴220年・冬・皇居・10歳
「ヴィンセント子爵、カンリフは何と言ってきておるのじゃ。
皇居を攻めると言ってきたのではないだろうな」
「そのような事は言ってきておりませんので、ご安心ください、陛下」
「では何と言ってきておるのじゃ、さっさと申せ」
「畏れ多い事ながら、カンリフは陛下に対しては何も言ってきておりません。
貴族や騎士に王女として命令されたミア王女殿下に詫びを入れ、和平の仲介を願い出て来ているだけでございます」
「何じゃと、朕を無視して、ミアに願い出ていると申すのか」
「今回命令を出されたのはミア王女殿下ございます。
命令を撤回して、和平の仲介をするのは、ミア王女殿下しかおられません。
もし陛下が和平の勅命を出されて、全国の貴族や騎士が勅命に従わなかったら、陛下の威信が地に落ちてしまいます。
ここはミア王女殿下にお任せするのが一番だと思われます」
「……おのれ、おのれ、おのれ、朕を蔑ろにしおって……」
口の中で小さく文句は言っていますが、それをわたくしやヴィンセント子爵に強く叩きつけるほどの勇気は、皇帝にはありません。
そのような勇気があるのなら、自らカンリフに文句を言っています。
皇帝として、王が逃げだした首都で存在感を示す行動をしています。
シャーロットに色々と教えてもらう前には分からなかった事ですが、皇帝や王女という地位は、使いようによっては大きな武器になるのです。
ただ、使いこなすには命懸けの勇気が必要ですけれど。
何故わたくしが後宮ではなく表にいるかといえば、カンリフがわたくしに和平の仲介を頼んだからです。
更に加えるのなら、皇帝や皇国政府の重臣が、わたくしを押しのけてカンリフと交渉する勇気がなかったからです。
そうでなければ、王女であるわたくしが、皇帝の休息室というプライベート空間とはいえ、表に出る事などありませんでした。
「それでヴィンセント子爵、カンリフはどのような賠償をしてくれると言うの」
「はっ、賠償の内容は、ミア王女殿下の化粧領として五千人分の領地と金価格五千枚を支払うと申しております」
「ごっ、ごっ、ごっ、五千人と五千金だと、それだけあれば……」
皇帝がまるで自分がもらえると勘違いしているようですが、お前のような臆病で無情な者には銅貨一枚だって渡しませんわ。
わたくしはハリー様のように優しくはないのです。
いえ、ハリー様だって、わたくしや母上様がいなければ皇帝を助けたりはしなかったはずです。
わたくしも、目先の欲に囚われる事なく、シャーロットが教えてくれた通りの交渉をしなければいけません。
伯父上だけなら、シャーロットが直接説明してくれるでしょうし、表向き伯父上ン騎士となっているハリー様の家臣が全て仕切ってくれます。
ですが今後の為にも、わたくしの力を皇帝に見せつけておかなければいけません。
「領地は一万人分です、それも分割された地や遠方の地は許しません。
和平の仲介をして欲しければ、北山山脈の魔境とエレンバラ王国男爵領の両方に接している地を寄こすようにいなさい。
条件通りの地をくれるのなら、金貨五千枚など不要です。
それくらいのはした金、竜を売れば簡単に手に入ります。
カンリフが領地の割譲に渋るようなら、和平の仲介をする必要はありません」
「ヴィンセント子爵、カンリフは何と言ってきておるのじゃ。
皇居を攻めると言ってきたのではないだろうな」
「そのような事は言ってきておりませんので、ご安心ください、陛下」
「では何と言ってきておるのじゃ、さっさと申せ」
「畏れ多い事ながら、カンリフは陛下に対しては何も言ってきておりません。
貴族や騎士に王女として命令されたミア王女殿下に詫びを入れ、和平の仲介を願い出て来ているだけでございます」
「何じゃと、朕を無視して、ミアに願い出ていると申すのか」
「今回命令を出されたのはミア王女殿下ございます。
命令を撤回して、和平の仲介をするのは、ミア王女殿下しかおられません。
もし陛下が和平の勅命を出されて、全国の貴族や騎士が勅命に従わなかったら、陛下の威信が地に落ちてしまいます。
ここはミア王女殿下にお任せするのが一番だと思われます」
「……おのれ、おのれ、おのれ、朕を蔑ろにしおって……」
口の中で小さく文句は言っていますが、それをわたくしやヴィンセント子爵に強く叩きつけるほどの勇気は、皇帝にはありません。
そのような勇気があるのなら、自らカンリフに文句を言っています。
皇帝として、王が逃げだした首都で存在感を示す行動をしています。
シャーロットに色々と教えてもらう前には分からなかった事ですが、皇帝や王女という地位は、使いようによっては大きな武器になるのです。
ただ、使いこなすには命懸けの勇気が必要ですけれど。
何故わたくしが後宮ではなく表にいるかといえば、カンリフがわたくしに和平の仲介を頼んだからです。
更に加えるのなら、皇帝や皇国政府の重臣が、わたくしを押しのけてカンリフと交渉する勇気がなかったからです。
そうでなければ、王女であるわたくしが、皇帝の休息室というプライベート空間とはいえ、表に出る事などありませんでした。
「それでヴィンセント子爵、カンリフはどのような賠償をしてくれると言うの」
「はっ、賠償の内容は、ミア王女殿下の化粧領として五千人分の領地と金価格五千枚を支払うと申しております」
「ごっ、ごっ、ごっ、五千人と五千金だと、それだけあれば……」
皇帝がまるで自分がもらえると勘違いしているようですが、お前のような臆病で無情な者には銅貨一枚だって渡しませんわ。
わたくしはハリー様のように優しくはないのです。
いえ、ハリー様だって、わたくしや母上様がいなければ皇帝を助けたりはしなかったはずです。
わたくしも、目先の欲に囚われる事なく、シャーロットが教えてくれた通りの交渉をしなければいけません。
伯父上だけなら、シャーロットが直接説明してくれるでしょうし、表向き伯父上ン騎士となっているハリー様の家臣が全て仕切ってくれます。
ですが今後の為にも、わたくしの力を皇帝に見せつけておかなければいけません。
「領地は一万人分です、それも分割された地や遠方の地は許しません。
和平の仲介をして欲しければ、北山山脈の魔境とエレンバラ王国男爵領の両方に接している地を寄こすようにいなさい。
条件通りの地をくれるのなら、金貨五千枚など不要です。
それくらいのはした金、竜を売れば簡単に手に入ります。
カンリフが領地の割譲に渋るようなら、和平の仲介をする必要はありません」
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