32 / 80
第二章
第32話:パーフェクトスリープ
しおりを挟む
皇紀2218年・王歴220年・秋・北山奥地の魔境・10歳
「ハリー様から授かった魔宝石と魔法陣の威力を思い知れ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ……」
余りにも呆気ない幕切れに、茫然自失となってしまいました。
俺ほど猛威を振るっていた強大な敵が、たった一つの魔術で眠りこけたのです。
しかも、ハリー殿から貸し与えられたという剣で急所を刺し貫いても、全く起きる事なく眠ったまま死んでしまいました。
わたくし達の命懸けの戦いなど、ハリー殿から見れば、子供の遊びでしかなかったというのですか。
「ミア王女殿下、何を惚けておられるのですか。
まさか、生まれて初めての実戦で、ハリー様以外の今生きている王国貴族の誰も成し遂げられない竜殺しを、ご自身ができると思われていたのですか。
そのような夢を見ていて、ハリー様の領地に行きたいなどと申されるのは、余りにも無謀でございます。
ご自身ができる事とできない事、味方ができる事とできない事、敵ができる事とできない事、よく理解しておかないと生き延びられませんよ」
はっきりと、それでも、王女として手心を加えられている叱責に、思わず顔が真っ赤になってしまいました。
幸運にも王女に生まれただけで、何の努力もせずに尊き地位を与えられ、狭い限られた範囲ではありますが、権力も与えられたのです。
その使い方を誤れば、皇帝のように周りに不幸を振り撒いてしまいます。
王女の地位を振りかざすだけでは、ハリー殿の、いえ、ハリー様の正室になる事などできないのです。
「分かりました、シャーロット。
不遜過ぎるプライドを持ってしまっていたようですね。
自分の実力に合ったプライドを持って行動するようにしましょう。
それで、この後わたくしは何をすればいいのでしょうか」
「ミア王女殿下は、ご自身の手で鉤竜の群れを全滅されたわけではありません。
しかしながら、指揮官として将兵を率いられて斃されたのは間違いありません。
ミア王女殿下以外の者が指揮を執っていたら、最初の時点で全滅しております。
竜殺しの王女として、堂々と皇居に凱旋していただきます」
実際に鉤竜の群れを全滅させたのはシャーロットなのに、わたくしがその栄光を横取りするような事をしていいのでしょうか。
いえ、シャーロットも四頭の鉤竜を沼に沈めていましたが、完全に斃したわけではなく、ハリー様の魔術のお陰で狩れたのです。
全ての功績はハリー様の手にお返しすべきものなのではないでしょうか。
「ミア王女殿下、世の中には、ちっぽけな名声など不要な方もおられるのですよ」
私の心中の悩みなどシャーロットは簡単に察するのですね。
そして明確な答えを返してくれるのです。
名声が不要なほど強大な力を持った方、それがハリー様なのですね。
そのハリー様が、わたくしに名声を譲ってくださると言う事は、わたくしが名声を得ることがハリー様の利になると言う事ですね。
ハリー様がそのような事を考えておられなくても、シャーロットが考えています。
「分かりました、では、皇居に凱旋させていただきましょう」
「ハリー様から授かった魔宝石と魔法陣の威力を思い知れ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ。
パーフェクトスリープ、パーフェクトスリープ……」
余りにも呆気ない幕切れに、茫然自失となってしまいました。
俺ほど猛威を振るっていた強大な敵が、たった一つの魔術で眠りこけたのです。
しかも、ハリー殿から貸し与えられたという剣で急所を刺し貫いても、全く起きる事なく眠ったまま死んでしまいました。
わたくし達の命懸けの戦いなど、ハリー殿から見れば、子供の遊びでしかなかったというのですか。
「ミア王女殿下、何を惚けておられるのですか。
まさか、生まれて初めての実戦で、ハリー様以外の今生きている王国貴族の誰も成し遂げられない竜殺しを、ご自身ができると思われていたのですか。
そのような夢を見ていて、ハリー様の領地に行きたいなどと申されるのは、余りにも無謀でございます。
ご自身ができる事とできない事、味方ができる事とできない事、敵ができる事とできない事、よく理解しておかないと生き延びられませんよ」
はっきりと、それでも、王女として手心を加えられている叱責に、思わず顔が真っ赤になってしまいました。
幸運にも王女に生まれただけで、何の努力もせずに尊き地位を与えられ、狭い限られた範囲ではありますが、権力も与えられたのです。
その使い方を誤れば、皇帝のように周りに不幸を振り撒いてしまいます。
王女の地位を振りかざすだけでは、ハリー殿の、いえ、ハリー様の正室になる事などできないのです。
「分かりました、シャーロット。
不遜過ぎるプライドを持ってしまっていたようですね。
自分の実力に合ったプライドを持って行動するようにしましょう。
それで、この後わたくしは何をすればいいのでしょうか」
「ミア王女殿下は、ご自身の手で鉤竜の群れを全滅されたわけではありません。
しかしながら、指揮官として将兵を率いられて斃されたのは間違いありません。
ミア王女殿下以外の者が指揮を執っていたら、最初の時点で全滅しております。
竜殺しの王女として、堂々と皇居に凱旋していただきます」
実際に鉤竜の群れを全滅させたのはシャーロットなのに、わたくしがその栄光を横取りするような事をしていいのでしょうか。
いえ、シャーロットも四頭の鉤竜を沼に沈めていましたが、完全に斃したわけではなく、ハリー様の魔術のお陰で狩れたのです。
全ての功績はハリー様の手にお返しすべきものなのではないでしょうか。
「ミア王女殿下、世の中には、ちっぽけな名声など不要な方もおられるのですよ」
私の心中の悩みなどシャーロットは簡単に察するのですね。
そして明確な答えを返してくれるのです。
名声が不要なほど強大な力を持った方、それがハリー様なのですね。
そのハリー様が、わたくしに名声を譲ってくださると言う事は、わたくしが名声を得ることがハリー様の利になると言う事ですね。
ハリー様がそのような事を考えておられなくても、シャーロットが考えています。
「分かりました、では、皇居に凱旋させていただきましょう」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる