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第一章
第7話:文通
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皇紀2217年・王歴219年・秋・皇居
「届きました、母上様、ハリー殿からお返事が届きました」
「それはよかったですね、ミア」
「ミアはハリーと手紙のやり取りをしているのか」
「いえ、そうではございません、主上。
ミアは手紙を欲しがったのですが、ハリー殿が王女殿下と直接手紙のやり取りをするのは恐れ多いと、ハリー殿からは手紙を送ってくれなかったのです。
それでわたくしがミアに知恵をつけて、ミアの方から最後に返事が欲しいと書いた手紙を送るようにさせたのです。
それから必ず返事が届くようになったのです」
「ソフィアはそれほどミアをハリーと結婚させたいのか」
「恐れながら主上、娘に幸せになって欲しいと願わない母親などおりません」
「それくらいは朕も分かっておる。
だが、相手は実力があるとはいえ王国男爵に過ぎない。
しかもアーサー王やカンリフに狙われている。
いや、それどことか領地を接する全ての王国貴族に狙われているのだ。
何時攻め滅ぼされるか分からない男に嫁がせたいと言うのが分からん」
「主上、確かにハリー殿のエレンバラ王国男爵家は領民八千人の弱小領主でしたが、それはハリー殿が当主に成るまでの話でございます。
姉のオリビアには哀しい事でしたが、夫で先代当主のチャーリー殿が戦死されて以来、急激に力をつけておられます。
それはもう、信じられないほど財力を高めておられます。
それなのに周辺の領主に攻め込まれないのは、周辺領主以上の軍事力を手に入れているか、外交力が高いからだと思われます。
しかもそれほどの軍事力を準備しながら、わたくし達への支援どころか、皇家への支援をしてくれたのです。
何時金貸しに妻子を連れ去られるか分からない皇国貴族に嫁がせるよりは、武運拙く敗れる事があろうと、共に死んでくれると信じられるハリー殿に、娘を嫁がせたいと思うのは、母として当然ではありませんか」
「なるほど、そういう考え方もあるのか。
生きるために身を穢すよりは、名誉を護って死んだ方がよいと考えるか。
皇室に威信を護るために修道院に入れるよりも、その方が皇室の名誉を汚さずにすむという考えだな」
「はい、既に王国貴族の間にも、修道院の悪評が広まってしまっています。
ミアが修道院に入る事になったら必ず神官共に輪姦されたと思われてしまいます。
その方が王国貴族に降嫁するよりも皇家の威信を穢すのではありませんか」
「朕の耳には、王国貴族どころか、平民にまで悪評が広がっていると入っている。
悪評は否定すればいいと思っていたのだが、そう言っていられないようだな。
問題はハリーの身分が低すぎる事だ。
流石に王国男爵家に皇女を降嫁させるのは難しい」
「恐れながら、先帝陛下の御葬儀費用と主上の即位費用をたった一人で負担した事は、皇室と皇国に対する大きな忠誠と功労ではないでしょうか。
僅かな寄進でも皇国の役職を与えているのですから、皇国爵位を与えても構わないのではありませんか」
「ふむ、皇女の降嫁に相応しい爵位を与えるのか。
一度では厳しいから、書類を改ざんして徐々に爵位を叙爵陞爵したことにするか。
王女のままなら伯爵でもよいが、皇女となると侯爵は必要だな」
「ソフィア様、ハリー様から贈り物が届きました」
「届きました、母上様、ハリー殿からお返事が届きました」
「それはよかったですね、ミア」
「ミアはハリーと手紙のやり取りをしているのか」
「いえ、そうではございません、主上。
ミアは手紙を欲しがったのですが、ハリー殿が王女殿下と直接手紙のやり取りをするのは恐れ多いと、ハリー殿からは手紙を送ってくれなかったのです。
それでわたくしがミアに知恵をつけて、ミアの方から最後に返事が欲しいと書いた手紙を送るようにさせたのです。
それから必ず返事が届くようになったのです」
「ソフィアはそれほどミアをハリーと結婚させたいのか」
「恐れながら主上、娘に幸せになって欲しいと願わない母親などおりません」
「それくらいは朕も分かっておる。
だが、相手は実力があるとはいえ王国男爵に過ぎない。
しかもアーサー王やカンリフに狙われている。
いや、それどことか領地を接する全ての王国貴族に狙われているのだ。
何時攻め滅ぼされるか分からない男に嫁がせたいと言うのが分からん」
「主上、確かにハリー殿のエレンバラ王国男爵家は領民八千人の弱小領主でしたが、それはハリー殿が当主に成るまでの話でございます。
姉のオリビアには哀しい事でしたが、夫で先代当主のチャーリー殿が戦死されて以来、急激に力をつけておられます。
それはもう、信じられないほど財力を高めておられます。
それなのに周辺の領主に攻め込まれないのは、周辺領主以上の軍事力を手に入れているか、外交力が高いからだと思われます。
しかもそれほどの軍事力を準備しながら、わたくし達への支援どころか、皇家への支援をしてくれたのです。
何時金貸しに妻子を連れ去られるか分からない皇国貴族に嫁がせるよりは、武運拙く敗れる事があろうと、共に死んでくれると信じられるハリー殿に、娘を嫁がせたいと思うのは、母として当然ではありませんか」
「なるほど、そういう考え方もあるのか。
生きるために身を穢すよりは、名誉を護って死んだ方がよいと考えるか。
皇室に威信を護るために修道院に入れるよりも、その方が皇室の名誉を汚さずにすむという考えだな」
「はい、既に王国貴族の間にも、修道院の悪評が広まってしまっています。
ミアが修道院に入る事になったら必ず神官共に輪姦されたと思われてしまいます。
その方が王国貴族に降嫁するよりも皇家の威信を穢すのではありませんか」
「朕の耳には、王国貴族どころか、平民にまで悪評が広がっていると入っている。
悪評は否定すればいいと思っていたのだが、そう言っていられないようだな。
問題はハリーの身分が低すぎる事だ。
流石に王国男爵家に皇女を降嫁させるのは難しい」
「恐れながら、先帝陛下の御葬儀費用と主上の即位費用をたった一人で負担した事は、皇室と皇国に対する大きな忠誠と功労ではないでしょうか。
僅かな寄進でも皇国の役職を与えているのですから、皇国爵位を与えても構わないのではありませんか」
「ふむ、皇女の降嫁に相応しい爵位を与えるのか。
一度では厳しいから、書類を改ざんして徐々に爵位を叙爵陞爵したことにするか。
王女のままなら伯爵でもよいが、皇女となると侯爵は必要だな」
「ソフィア様、ハリー様から贈り物が届きました」
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