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第一章

第1話:才能の限界

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 俺は前世の知識を持って生まれた転生者だ。
 しかも公爵家に生まれることができた、四男だけど。
 四男だから公爵家を継ぐのはとても難しい、いや、そもそも兄達を押しのけて継ぐ気もない、自分の実力で新たな家を起こせばいいと思っていた。
 生れて直ぐに始めた魔力増幅法で無尽蔵の魔力を保有していた。
 オートクレープと紙風船と魔法袋をイメージして、体内にある魔力の蓄積器官、魔石を幾らでも魔力が貯められるモノに改造してある。

「残念ですが、ヴェデリン様には土と木の属性しかありません。
 騎士を目指すにはとても不利でございます」

 五歳のステータス検査で、俺にはこの世界で不利と考えられている属性しかない事が判明した。
 まあ、そんな事はゼロ歳児からやっている魔術実験で分かっていた事だ。
 基軸の五大属性、木・火・土・金・水のうち二つも使えるのならそれで十分だ。
 無・光・闇・空間、いや、氷・雷・毒と言った限られた属性しか使えないよりはずっと有利だし、土と木を複合させれば色々とやりようはある。

「落ち込まなくて大丈夫だ、ヴェデリン。
 土魔法や木魔法が使えるのなら、工兵科で働くことができる」

 今生の父上、ドニエック公爵家の次期当主リオン卿が慰めてくれる。
 別に落ち込んでいたわけではないのだが、これからの事を考えているのが、父上には落ち込んでいるように見えたのだろう。
 父上は騎士団で働くことで一家を興させようとお考えなのだろう。
 だが俺は別の方法で新たな家を興す心算なのだ。

「いえ、別に落ち込んでいるわけではありません。
 ドニエック公爵家の人間として、剣で家を興すのではなく、開拓で家を興したいと思っていたのです。
 私が授かった土属性と木属性こそ、それに丁度いいと考えていたのです」
 
「よくぞ言ったヴェデリン、それでこそドニエック一族だ。
 大領主であるドニエック公爵家には、未開地を開拓し魔境を抑える義務がある。
 騎士となって魔獣を斃し魔境を抑える役目も大切だが、未開地を開拓して耕作地を広げるのもとても大切な役目だ。
 今から未開地開発と農業支援の魔術を覚えるがいい」

 ドニエック公爵家は貴族には珍しく家族の仲がいい。
 今日のステータス検査も両親と祖父母に兄弟まで勢ぞろいしている。
 まあ、学園に入学して貴族教育を受けている兄達は別だけどね。
 さて、属性の確認をした後は、個々のステータス確認だが、これは教会の神官といえども同席が許されない。
 特にスキルの有無や種類は絶対に他人に教えるわけにはいかない秘密だ。
 それが分かれば暗殺の成功率が跳ね上がるから、貴族家によっては親兄弟でも教えないほどだと聞いたが、ドニエック公爵家はどうなのだろうか?
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