上 下
10 / 31
第1章

第10話:レベル上げ:アラキヤストモ視点

しおりを挟む
20XX年4月3日:伏見神社ダンジョン99階:荒木保知55歳視点

 人体実験の被験者を募集したが、あっという間にとんでもない人数になった。
 深雪のチャットには世界中から依頼があったが、翌日来られたのは日本人だけだ。
 その日の内に来られる近場の国もあるが、ダンジョンに入る審査に時間がかかる。

「ショウヘイおじさん、臨床実験は後回しで良いのですか?」

「遠い国の人は日本に来るまで時間がかかる。
 今選ぶと不公平になるからしばらくたってからやる」

「そうですね、でも、今日明日にも死んでしまう人がいるかも……」

「深雪がどうしても気になるのなら、レベル上げを止めるか?
 グリーンドラゴンを狩れる力とエクセレントヒールを使える力がないと、俺が死んだときにまた同じ状態の戻るぞ?」

「それは……」

「他人を優先してお母さんを危険にさらしたいなら好きにすれば良い」

「おじさん、お姉ちゃん、私がレベルを上げて力をつけるわ!
 私は他人の事よりもお母さんの方が大切だわ。
 お姉ちゃんはその間に急いで助けないといけない人を選んでよ」

「いえ、私も他人よりもお母さんの方が大切。
 ショウヘイおじさん、私もレベル上げします」

「ダメだ、自分で言った事の責任はとれ!
 重態の人を見殺しにするのは悪いようなに言って、俺を非難したんだ。
 聖女のような言動をしたのなら、最後まで責任をとれ」

「ごめんなさい、身勝手な事を言いました、私が悪かったです、ゆるしてください」

「ダメだ、正義の為なら他人に不利益を与えても構わないという言動は大嫌いだ。
 さっきの深雪の言葉は、リョウと変わらない。
 レベル上げは佐那だけだ、深雪は他人の世話だけしていろ」

 自分でも偏屈だとは分かっているが、こういう所は譲れない。
 深雪に悪意がないのも善人なのも分かっているが、悪意のない善人なら、何を言ってもいい、何をやってもいいというのは間違っている。

 こういう所をガマンしなくてもいいように、自分を鍛えた。
 自分の思い通りにやりたくて、ダンジョンに籠って他人とのかかわりを絶った。
 不完全な良心が痛むから助けたが、だからと言って言いなりに助ける気はない!

「本当に申し訳ありません、全部私が悪かったです、お許しください」

「ダメだ、自分の言動に責任を持て、他人を助けるのに専念しろ。
 佐那、やる気があるならついて来い、無いなら残っていろ」

「あります、やる気はあります、レベル上げに連れて行ってください!
 お姉ちゃんは反省しながら、時間がないダンジョン病の人を選んでいて。
 人の良さを出して、嘘をついて先に治してもらおうとする人に騙されないでよ」

★★★★★★

 011:なんちゃって賢者
 ショウヘイらしいな、優しすぎる。

 012:名無しW
 なに言っているのよ、今のどこが優しいのよ?!

 013:名無しV
 そうだぞ、昔からの視聴者だからって甘すぎるぞ!

 014:なんちゃって賢者
 愚かな、これまでのショウヘイの言動のどこをみていた!

 015:名無しV
 何を言っているのか分からないんだが、どういう意味だ?

 016:名無しA
 俺も意味が分からん、教えてくれ、このままではショウヘイが誤解されるぞ。

 017:なんちゃって賢者
 何でこんな簡単な事が分からない、深雪がダンジョン病の人を見殺しにして胸を痛めないように、厳しい事を言って重態患者を受け入れる役を与えたんだ。

 018:名無しC
 いや、それはいくら何でも良い方に取り過ぎだよ

 019:名無しE
 そうだ、ひいきが過ぎるぞ!

 020:なんちゃって賢者
 ショウヘイが本当に身勝手なら、そもそも重態患者を受け入れていない。

 021:名無しD
 それはそうだが……

 022:なんちゃって賢者
 もの凄く厳しく言ったが、結局重態患者を受け入れている。

 023:名無しV
 それは……その通りだが……

 024:なんちゃって賢者
 身勝手な事を口にした深雪を指導しつつ、人助けをする、善人以外の何者だ?

 025:名無しP
 わかった、ショウヘイが善人なのは認める、認めない奴は出て行け、いいな?

 026:名無しW
 ……私が悪かったわ、でも、言い方があると思うのよ!

 027:名無しX
 やめておけ、それを言うなら、1000億もらっても良い治療を、無償で強要させようと、正義を振りかざした深雪の身勝手さが際立つぞ!

 028:なんちゃって賢者
 ショウヘイが悪者役を引き受けてくれたのを台無しにするな!

 029:名無しD
 分かったな、さっきの会話にはもうふれるな、いいな?!

 030:シッタカ
 これだからニワカの連中は困るんだ。

 031:銀仮面
 いや、よけいな事を言って困らせているのはお前もだから!

 032:お天道様
 その通りだぞ、お天道様に恥ずかしい言動は止めろよ。

 033:内部告発者A(うら若き乙女)
 シッタカも反省していると思うから、もうやめてあげたら。

 034:シッタカ
 ……反省しています。

 035:銀仮面
 集中しろ、グリーンドラゴン狩りが始まるぞ!

 036:シッタカ
 あれ、アンデットドラゴンかカオスドラゴンて言っていなかった?

 037:なんちゃって賢者
 あれは聖女の深雪の補正を考えていたからだ。

 038:シッタカ
 そうか、そうだな、うっかりしていたよ。

 039:内部告発者A(うら若き乙女)
 すごい、すごい、凄い、グリーンドラゴンの群れが半死半生よ!

 040:名無しW
 本当にすごい、佐那に攻撃できないように四肢を斬り飛ばして口をふさいでいる。

 041:名無しの中国人A
萨娜正盘算着一击干掉他。
(佐那が一撃でとどめをさせるように計算している)

 042:名無しのフランス人A(パリジェンヌ)
Même les instructeurs des unités de formation militaire ne peuvent pas faire grand-chose.
(軍の教育部隊の指導教官でもここまではできないわ)

 043:名無しのドイツ人A
Selbst unsere Militärausbilder können das nicht.
(我が軍の指導教官でも無理だな)

 044:名無しのスイス人A
Ich würde dich gerne bitten, in die Schweiz zu kommen, aber das ist nicht möglich, oder?
Wenn es nicht für jedes Land möglich ist, könnte es dann von der Europäischen Union oder der Nordatlantikpakt-Organisation übernommen werden?
(スイスに来てほしいと言いたいところだけど、さすがに無理よね?
 国単位で無理なら、欧州連合か北大西洋条約機構で迎えられないかな?)

 045:名無しのフランス人A(パリジェンヌ)
C'est super, j'ai un ami qui travaille pour l'Union européenne, alors je vais le proposer !
(それは良いわね、知り合いに欧州連合の職員がいるから提案してみるわ!)

 046:名無しのドイツ人A
Je vais également le suggérer à mon ami qui est employé de l'Union européenne.
(俺も友人の欧州連合職員に提案してみる)

 047:シッタカ
 とんでもないことを言い出したぞ!

 048:なんちゃって賢者
 気にするな、引きこもりのショウヘイに移民は無理だ。

 049:内部告発者A(うら若き乙女)
 そんな事より、深雪をなぐさめた方が良いんじゃない、落ち込んでいるわよ。

 050:名無しW
 そうね、こっちもつないだままにしておくけれど、深雪のチャンネルに重点をおいてなぐさめの言葉をかけて来るわ。

 051:なんちゃって賢者
 俺も深雪の方に集中する。

 052:内部告発者A(うら若き乙女)
 私も手元の資料を使って深雪が失敗しないように助けるわ。

 053:ホワイトナイト
That's amazing, even Sana, any dungeon attacker, can hunt green dragons without worrying about pores if Shohei supports them, he's already hunted 100 of them!
(すごいな、佐那ていどのダンジョンアタッカーでも、ショウヘイがサポートしたら何の心配もなしにグリーンドラゴンを狩れるのか、もう100体は狩ってるぞ!)

 054:名無しA
 これなら私でもあっという間にトップダンジョンアタッカーになれそう!

 055:名無しB
 いや、いや、あるていどまでは自分でレベル上げとかないと無理だよ。

 056:名無しのフランス人D
C'est vrai, Miete Sana est également à un assez bon niveau.
Il serait préférable de continuer à s'entraîner comme d'habitude au début.
(そうだな、ああみえて佐那もけっこうなレベルだ。
 初期訓練はこれまで通り行った方が良いな)

 057:名無しのドイツ人A
Am besten wäre es, die ausgewählten Soldaten der Nordatlantikpakt-Organisation ausbilden zu lassen.
(北大西洋条約機構の選抜兵を訓練しもらうのが1番だな)

 056:名無しのフランス人D
Ce serait formidable si les instructeurs de l'Organisation du Traité de l'Atlantique Nord pouvaient faire la même chose que Shohei...
(北大西洋条約機構の指導教官がショウヘイと同じ事ができれば良いのだが……)

 057:名無しA
 また血がドロップした、これで何人のダンジョン病を助けられるんだ?!

★★★★★★

もしよければお気に入り登録と❤をお願いします。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

配信者ルミ、バズる~超難関ダンジョンだと知らず、初級ダンジョンだと思ってクリアしてしまいました~

てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
女主人公です(主人公は恋愛しません)。18歳。ダンジョンのある現代社会で、探索者としてデビューしたルミは、ダンジョン配信を始めることにした。近くの町に初級ダンジョンがあると聞いてやってきたが、ルミが発見したのは超難関ダンジョンだった。しかしそうとは知らずに、ルミはダンジョン攻略を開始し、ハイランクの魔物たちを相手に無双する。その様子は全て生配信でネットに流され、SNSでバズりまくり、同接とチャンネル登録数は青天井に伸び続けるのだった。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ドロップキング 〜 平均的な才能の冒険者ですが、ドロップアイテムが異常です。 〜

出汁の素
ファンタジー
 アレックスは、地方の騎士爵家の五男。食い扶持を得る為に13歳で冒険者学校に通い始めた、極々一般的な冒険者。  これと言った特技はなく、冒険者としては平凡な才能しか持たない戦士として、冒険者学校3か月の授業を終え、最低ランクHランクの認定を受け、実地研修としての初ダンジョンアタックを冒険者学校の同級生で組んだパーティーでで挑んだ。  そんなアレックスが、初めてモンスターを倒した時に手に入れたドロップアイテムが異常だった。  のちにドロップキングと呼ばれる冒険者と、仲間達の成長ストーリーここに開幕する。  第一章は、1カ月以内に2人で1000体のモンスターを倒せば一気にEランクに昇格出来る冒険者学校の最終試験ダンジョンアタック研修から、クラン設立までのお話。  第二章は、設立したクラン アクア。その本部となる街アクアを中心としたお話。  第三章は、クラン アクアのオーナーアリアの婚約破棄から始まる、ドタバタなお話。  第四章は、帝都での混乱から派生した戦いのお話(ざまぁ要素を含む)。  1章20話(除く閑話)予定です。 ------------------------------------------------------------- 書いて出し状態で、1話2,000字~3,000字程度予定ですが、大きくぶれがあります。 全部書きあがってから、情景描写、戦闘描写、心理描写等を増やしていく予定です。 下手な文章で申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。

克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。

処理中です...