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第一章

第69話:実力主義

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「貴卿は先ほどの話しをどう思わられますか」

 俺や従魔が、全ての気配を消して話しを聞いているとは知らない各国の特使が、父上が宣言された事を噂している。
 特に大きな失点をしたリンスター王国の特使が、父上と個人的な関係があると知られた、ハミルトン王家の特使に探りを入れている。

「先ほどの話しと言うのは、公子殿下の正室を魔力量で選ぶという事か」

「ああ、本当に魔力量さえ多ければ、例え相手が奴隷の娘であろうと売春婦であろうと構わないと申されたが、本心なのだろうか」

「確かに信じられない話だと思うが、絶対に違うとも言い切れない」

「いや、自分で言いだしてこんな事を言うのは気が引けるが、いくら何でも奴隷娘や売春婦はないだろう」

「さっきも言ったが、普通ならあり得ないし、信じられない話だ。
 だが我らがここに集まっているのは、公子殿下に絶大な魔力があるからだ。
 そうでなければ、このような事に成ってはいない。
 貴卿も私も、こんな状況に追い込まれてはいないだろう」

「ああ、確かに、全ては公子殿下の魔力が絶大な事が原因だ。
 とはいえ、正室に魔力の多い娘を迎えたからと言って、必ず両親の魔力が伝わるわけではないのは、大陸の常識ではないか」

「ああ、魔力は運の要素が強いと言うのが常識だが、同時に魔力のない親からは魔力のある子が生まれてこないのも常識だ。
 さらに言えば、母親が腹の子に魔力を与えた方がいいとも言われている。
 大公家が、魔力の多い子供を得る事だけに特化したとしたら、公子殿下の妻妾に、魔力の多い娘を手あたり次第集めようと考える理由も分かる」

「では、貴卿は魔力の多い娘を探し出して、大公家の正室として推挙する気か」

「残念だが、今の王家の状況では、魔力の多い娘を探し出すのは無理だ。
 一応王都に帰ってから、大公殿下の言葉を国王陛下にお伝えするが、それに応じた対策を立てる事は無理だな。
 今回は大公殿下が特使を受け入れてくださった事だけで、ハミルトン王家にとっては大成功だ、それで十分だよ」

 ハミルトン王家の特使はそんな事を口にしているが、信じられないな。
 この特使は信用できるが、ベネディクト王と王女は信用できない。
 絶対に裏で悪巧みを考えているはずだ。
 現に副使と随行員が、盛んに他の国の特使や随行員と会っている。
 どう考えても我が家を攻め込むための同盟を相手を探している。
 
「よくそんな事を口にできますな、私が貴国の動きを知らないと思っているのか。
 キャメロン国王陛下や王子方に同盟締結を持ちかけておられると聞いていますぞ。
 この場で恥をかかされた国を調べて、逆転の方法を探しておられるのでしょう」

「それは王家に残った奸臣佞臣が生き残るために勝手に動いている事ですよ。
 ベネディクト王にはもうダグラス大公家と争う気はありませんよ」

 おい、おい、おい、どっちの言う事が本当の事なんだ。
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