上 下
66 / 70
第一章

第66話:閑話・変心・ベンソン視点

しおりを挟む
「どういう事よ、なんで私が公爵家の子供ごときに振られなければいけないのよ。
 いえ、分かっているわ、全部あなたのせいよ、あなたが負けたから、私まで家臣にバカにされる事になってしまったのよ、どう責任をとるの、ベンソン」

 クソ、クソ、クソ、こんな小娘に、なんで俺がバカにされなければいけない。

「さっさと謝らんか、元将軍閣下」

「ギャアアアアア」

 クソ、クソ、クソ、ずっと俺様に媚び諂っていた侍従のくせに。

「なに反抗的な目をしているだ、元将軍閣下。
 そんなに鞭で叩かれたいのか、元将軍閣下。
 奴隷になって趣味嗜好がお変わりになったのですかな」

「ギャアアアアア」

 クソ、クソ、この魔力疎外の手鎖と足鎖がなければ、今直ぐ殺してやるのに。
 戦争に負けたのは俺のせいじゃない、兵共が弱かったからだ。
 騎士や徒士に勇気がなく、戦いもせずに逃げ出したからだ。
 いや、それ以前にろくに魔力もない子供に騎士家や徒士家を継がせたからだ。
 何より王に人望がなかったから負けたので、俺のせいじゃない。

「ちょっと、奴隷を叩いている前に先にやる事があるでしょ。
 私を馬鹿にした公爵の子供に報復する方法を考えなさいよ」

 くっ、バカ王女の言葉でこれ以上鞭打ちされなくなったが、そもそも最初に鞭打ちされる原因を作ったのはバカ王女、お前だろう。
 お前に魅力があれば、そもそもこんな事にはなっていなかったんだ。
 お前に魅力があれば、どのような状況になろうと、求婚者が現れる。
 お前に王族とは思えないわずかな魔力しかないから、こんな事になったんだ。
 俺の責任じゃない、戦争が始まったのも、戦争に負けたのも、俺の責任じゃない。

「申し訳ございません、ヴァイオレット王女殿下。
 私はベンソンのような奸臣ではございません。
 国王陛下が決められるべき事を、勝手に考える訳にはいかないのです」

 この野郎、俺が王の権限を奪っていたような言い方をしやがって。
 俺は王の権限を奪っていたわけじゃない。
 バカ王女の願いを叶えるために動いていただけだ。
 自分が権力を欲してやった事ではなく、全てバカ王女に言われてやった事だ。
 そうだ、全部バカ王女が悪いのだ、俺は悪くない、俺は悪くないぞ。

「なによ、それは、役に立たないわね。
 父上は私の言う事はなんでもきいてくださるのよ。
 私のためならなんだってしてくださるのよ。
 お前は私の事をバカにした公爵の子供を思い知らせる方法を考えればいいの。
 考えられないのなら、役立たずとして奴隷にするわよ。
 そこにいいる役立たずと同じように」

 クックックックッ、いい気味だぜ、これでお前も俺と同じように奴隷落ちだ。
 
「申し訳ございませんが、そのような事はできません。
 ベンソンが奴隷に落とされたのは、戦争に負けたからでもなければ、ヴァイオレット王女殿下の役に立たなかったからでもありません。
 王女殿下を騙して、王家王国の政治軍事を勝手に動かしたせいでございます。
 私は国王陛下直々に、もう二度とそのような事がないように、王女殿下の名を騙って献策するなと申されているのでございます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

謎の能力【壁】で始まる異世界スローライフ~40才独身男のちょっとエッチな異世界開拓記! ついでに世界も救っとけ!~

骨折さん
ファンタジー
 なんか良く分からない理由で異世界に呼び出された独身サラリーマン、前川 来人。  どうやら神でも予見し得なかった理由で死んでしまったらしい。  そういった者は強い力を持つはずだと来人を異世界に呼んだ神は言った。  世界を救えと来人に言った……のだが、来人に与えられた能力は壁を生み出す力のみだった。 「聖剣とか成長促進とかがよかったんですが……」  来人がいるのは魔族領と呼ばれる危険な平原。危険な獣や人間の敵である魔物もいるだろう。  このままでは命が危ない! チート【壁】を利用して生き残ることが出来るのか!?  壁だぜ!? 無理なんじゃない!?  これは前川 来人が【壁】という力のみを使い、サバイバルからのスローライフ、そして助けた可愛い女の子達(色々と拗らせちゃってるけど)とイチャイチャしたり、村を作ったりしつつ、いつの間にか世界を救うことになったちょっとエッチな男の物語である! ※☆がついているエピソードはちょっとエッチです。R15の範囲内で書いてありますが、苦手な方はご注意下さい。 ※カクヨムでは公開停止になってしまいました。大変お騒がせいたしました。

聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!

つくも
ファンタジー
錬金術士学院を首席で卒業し、念願であった宮廷錬金術師になったエルクはコストカットで王国を追放されてしまう。 しかし国王は知らなかった。王国に代々伝わる聖剣が偽物で、エルクがこっそりと本物の聖剣を錬成してすり替えていたという事に。 宮廷から追放され、途方に暮れていたエルクに声を掛けてきたのは、冒険者学校で講師をしていた時のかつての教え子達であった。 「————先生。私達と一緒に冒険者になりませんか?」  悩んでいたエルクは教え子である彼女等の手を取り、冒険者になった。 ————これは、不当な評価を受けていた世界最強錬金術師の冒険譚。錬金術師として規格外の力を持つ彼の実力は次第に世界中に轟く事になる————。

「おっさんはいらない」とパーティーを追放された魔導師は若返り、最強の大賢者となる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

平山和人
ファンタジー
かつては伝説の魔法使いと謳われたアークは中年となり、衰えた存在になった。 ある日、所属していたパーティーのリーダーから「老いさらばえたおっさんは必要ない」とパーティーを追い出される。 身も心も疲弊したアークは、辺境の地と拠点を移し、自給自足のスローライフを送っていた。 そんなある日、森の中で呪いをかけられた瀕死のフェニックスを発見し、これを助ける。 フェニックスはお礼に、アークを若返らせてくれるのだった。若返ったおかげで、全盛期以上の力を手に入れたアークは、史上最強の大賢者となる。 一方アークを追放したパーティーはアークを失ったことで、没落の道を辿ることになる。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...