57 / 70
第一章
第57話:王配
しおりを挟む
王家の方が強かった時なら、王女の配偶者を分家の公爵家から迎えて、将来は女王の王配と言う形にするのが最善の策だろう。
男系血統を歴史あるハミルトン家のままにして、愛する娘を女王にできるのだから、父王としては最善の選択だったろう。
だが、今のハミルトン家とダグラス家の力関係は以前とは激変しているのだ。
我儘なヴァイオレット王女の配偶者にならなければいけない理由などない。
「お断わりしてください、父上、母上」
俺は即座に断った、父上だけでなく母上も巻き込んで断った。
なぜなら、父上にはまだ王家に対する遠慮があるからだ。
大公に成ると宣言したにもかかわらず、未だにハミルトン王家の分家だという意識があり、主君だった国王に逆らう事をためらっている。
だが母上は、あんな我儘放題に育ったヴァイオレット王女と俺を結婚させる事には、以前から反対していた。
「そうですわ、オークリー、可愛いイーライをあのような王女と結婚させるなんて、私は大反対ですからね」
案の定、母上は本気で怒って反対してくれている。
父上が内心この申し込みを受けるしかないと思っているのを、腹立たしく感じていて、公式な大公と言う呼び方でも、貴男という聞いたかでもなく、名前で呼んだ。
これは、夫婦として対等な立場で強く反対しているのだ。
母上がこう言う言い方した時に、父上が逆らった事は一度もない。
まあ、母上がこう言う言い方をしたのを聞いたのは、まだ二回目だけどな。
「いや、だがそれでは戦争が続いてしまうではないか、愛しのスカイラーよ。
私だって可愛いイーライをあのような王女と結婚させたくないのだ。
だが私は大公となってしまったのだ、家臣領民の事も考えなければならない。
それに、分離独立したとはいえ、王国の民のことも気になる。
このまま我が家と王家が対立していては、他国の侵攻を招きかねん。
そんな事になったら、王国の民が苦しむことになる」
「何をおかしなことを口にしているのですか、オークリーの心配は無用な事です。
先の戦いでイーライが圧勝したではありませんか。
あのような勝ち方をするイーライに、ケンカを売る国がどこにあると言うのです」
「いや、イーライのお陰で大公国に攻め込む国などないだろう。
だがその分、大公家と敵対した王家が狙われる可能性がある」
「その王家の直轄領の代官も我が家に臣従してきています。
ですから王家に残されたのは王都だけす。
それに王家に攻め込むには、大公家に臣従した貴族家を攻めなければいけなくなるのですよ、そんな状況でどの国が攻め込んで来ると言うのですか。
オークリーは王家に気をつかい過ぎです、もうそのような事は止めなさい」
予想通り母上が父上を叱りつけるように論破してくださった。
もうこれで俺が無理矢理ヴァイオレット王女と結婚させられる事はないだろう。
問題は俺がここに来てからずっと聞き役に徹しているセバスチャンだ。
セバスチャンはどういう考えでいるのだろうか。
それが分からないと心から安心する事などできないぞ。
「ありがとうございます、母上、そう言って頂けてとてもうれしいです。
ただセバスチャンの考えも聞いておきたいのです」
男系血統を歴史あるハミルトン家のままにして、愛する娘を女王にできるのだから、父王としては最善の選択だったろう。
だが、今のハミルトン家とダグラス家の力関係は以前とは激変しているのだ。
我儘なヴァイオレット王女の配偶者にならなければいけない理由などない。
「お断わりしてください、父上、母上」
俺は即座に断った、父上だけでなく母上も巻き込んで断った。
なぜなら、父上にはまだ王家に対する遠慮があるからだ。
大公に成ると宣言したにもかかわらず、未だにハミルトン王家の分家だという意識があり、主君だった国王に逆らう事をためらっている。
だが母上は、あんな我儘放題に育ったヴァイオレット王女と俺を結婚させる事には、以前から反対していた。
「そうですわ、オークリー、可愛いイーライをあのような王女と結婚させるなんて、私は大反対ですからね」
案の定、母上は本気で怒って反対してくれている。
父上が内心この申し込みを受けるしかないと思っているのを、腹立たしく感じていて、公式な大公と言う呼び方でも、貴男という聞いたかでもなく、名前で呼んだ。
これは、夫婦として対等な立場で強く反対しているのだ。
母上がこう言う言い方した時に、父上が逆らった事は一度もない。
まあ、母上がこう言う言い方をしたのを聞いたのは、まだ二回目だけどな。
「いや、だがそれでは戦争が続いてしまうではないか、愛しのスカイラーよ。
私だって可愛いイーライをあのような王女と結婚させたくないのだ。
だが私は大公となってしまったのだ、家臣領民の事も考えなければならない。
それに、分離独立したとはいえ、王国の民のことも気になる。
このまま我が家と王家が対立していては、他国の侵攻を招きかねん。
そんな事になったら、王国の民が苦しむことになる」
「何をおかしなことを口にしているのですか、オークリーの心配は無用な事です。
先の戦いでイーライが圧勝したではありませんか。
あのような勝ち方をするイーライに、ケンカを売る国がどこにあると言うのです」
「いや、イーライのお陰で大公国に攻め込む国などないだろう。
だがその分、大公家と敵対した王家が狙われる可能性がある」
「その王家の直轄領の代官も我が家に臣従してきています。
ですから王家に残されたのは王都だけす。
それに王家に攻め込むには、大公家に臣従した貴族家を攻めなければいけなくなるのですよ、そんな状況でどの国が攻め込んで来ると言うのですか。
オークリーは王家に気をつかい過ぎです、もうそのような事は止めなさい」
予想通り母上が父上を叱りつけるように論破してくださった。
もうこれで俺が無理矢理ヴァイオレット王女と結婚させられる事はないだろう。
問題は俺がここに来てからずっと聞き役に徹しているセバスチャンだ。
セバスチャンはどういう考えでいるのだろうか。
それが分からないと心から安心する事などできないぞ。
「ありがとうございます、母上、そう言って頂けてとてもうれしいです。
ただセバスチャンの考えも聞いておきたいのです」
0
お気に入りに追加
293
あなたにおすすめの小説
【改稿版】僕は最強者である事に無自覚のまま、異世界をうろうろする
風の吹くまま気の向くまま
ファンタジー
~なぜ僕にこの力が与えられたのか?~
当面、毎日お昼の11時50分頃更新して参ります。
気が付いたら異世界。
しかも不死身になっている。
何が何だか分からないけれど、とりあえず女の子を拾ったり、勇者と出会ったり、魔王に狙われてみたり。
異世界でうろうろする内に、段々明らかになっていく、規格外の自身の力。
そして、僕は世界の命運を委ねられることになった!
......ってな感じで展開していく予定の王道ファンタジー。
主人公は監禁されたり、タイムトラベルしちゃったりしますが、基本的には完敗はあり得ません。
不死身だし。
ついでに、色んな女の子から好意を寄せられますが、割と一途で行く予定。
※本作は、私が生まれて初めて書いてネットに投稿した小説を、基本、主人公視点で改稿した物となっております。
大筋の内容に大きな変更は有りませんが、改稿自体が生まれて初めての経験でございまして、果たしてうまくいくのか、多分に実験的小説になっていたりします。
お読みになろうという奇特な方は、その点を踏まえてご覧頂きますよう、お願い申し上げます。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!
町島航太
ファンタジー
ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。
ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
今度は悪意から逃げますね!
れもんぴーる
ファンタジー
国中に発生する大災害。魔法師アリスは、魔術師イリークとともに救助、復興の為に飛び回る。
隣国の教会使節団の協力もあり、徐々に災害は落ち着いていったが・・・
しかしその災害は人的に引き起こされたものだと分かり、イリークやアリス達が捕らえられ、無罪を訴えても家族までもが信じてくれず、断罪されてしまう。
長期にわたり牢につながれ、命を奪われたアリス・・・気が付くと5歳に戻っていた。
今度は陥れられないように力をつけなくちゃ!そして自分を嵌めた人間たちや家族から逃げ、イリークを助けなければ!
冤罪をかけられないよう立ち回り、災害から国民を守るために奮闘するアリスのお話。え?頑張りすぎてチートな力が?
*ご都合的なところもありますが、楽しんでいただけると嬉しいです。
*話の流れで少しですが残酷なシーンがあります。詳しい描写は控えておりますが、苦手な方は数段飛ばし読みしてください。お願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる