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第一章
第19話:少女の嫉妬とアプローチ
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「ウゥウウウウウウ」
「うっううううう、うわあああああん、怖いです、イーライさまぁあああああ」
目の前には信じたくない光景が広がっている。
俺を独占したい大和が、近づいてきた少女を威嚇している。
俺が厳しく躾けたから、孤児たちに牙をむく事はないが、威嚇は止めない。
それを分かっているのに、少女は毎日近づいてくる。
少女に懐いた炎魔狼は大和を怖がっているのだが、少女を見捨てる事もできない。
震えて尻尾を丸めているのに、それでも必死で付いてくる姿は、とても健気だ。
「いやはや、イーライ様はおもてになりますなぁ、羨ましい限りでございます」
セバスチャンが思いっきりからかってくれる。
俺にはそんな気はまったくないのだが、少女からは一途な想いを感じる。
俺が大魔境で助けた少女が孤児院に来ているのだ。
親がいない訳ではないのだが、奴隷だった母親に子供の教育は難しい。
奴隷であろうと愛情豊かに育てる事はできるだが、勉学を教えられない。
だから孤児院で預かって勉学を教えているのだ。
そんな子供は他にもたくさんいるから、孤児院と言うよりは小学校に近い。
だが、公爵家の予算からお金を引っ張るのなら、言葉選びが大切になる。
だから学校ではなく孤児院と呼び、親のある子にもついでに勉強を教える形になるのだが、もちろん愛情豊かな親から無理矢理子供を引きはがしたりはしない。
親の性格がよければ孤児院で住み込みの仕事を与えている。
孤児院に勤めさせられない親なら、近くの奴隷小屋に住まわせている。
「そんな冗談は笑えないな、セバスチャン。
少女の想いを踏みにじるほど薄情ではないが、俺はまだ五歳児なのだぞ。
前世の年齢を加算すれば十六歳だが、身体は幼児なのだぞ。
それに、俺は小さい子供を愛の対象にする気などないぞ。
普通に可愛がってあげたいとは思うが、俺の方が幼いからそれも無理だ」
「それでよろしいのでございますよ、イーライ様。
どうもこの子は魔力を持っているようなのです。
今までは奴隷の子供で虐待対象なので、見落とされていたのでしょう。
本人も自分が弱いモノだと思い込んでいたので、抵抗もしなかったのでしょう。
なにより魔力も魔術も見た事も聞いた事もなかったのでしょう」
確かに、あのような環境では魔術など覚えられないよな。
「以前ゴブリンに襲われていたのも、こうして炎魔狼に懐かれているのも、この子に魔力があるからでしょう」
なるほど、ゴブリンはこの子を食って魔力を得ようとしていたのか。
魔物は他の魔物を魔力を食べて強くなるとセバスチャンが教えてくれた。
他の魔物に飼われたりパートナーになったりする従魔は、主人やパートナーから魔力を与えられて従うようになる。
一時的な力を得るのではなく、永続的に力を分けてもらうのだ。
だがそれだけに、主人やパートナーには魔力量の多さが求められる。
今回魔狼たちが孤児たちに従っているのは、魅了魔術で従えて命令したからだ。
今は魅了魔術に加えて俺の魔力で餌付けしている。
結構多くの魔力を必要とするが、俺の一日魔力生産量から見れば微々たるモノだ。
そんな状態で、一番強い炎魔狼が少女を選んだのだ。
少なくとも孤児院の子供達の中で最も魔力量が多いのは確実だ。
その魔力が士族や貴族以上なら、戦力に数えるのが公爵家嫡男の仕事だよな。
「イーライさまぁあああああ、だいすきです」
「ウゥウウウウウウ、ガウ、ガウ、ガウ」
「うっううううう、うわあああああん、怖いです、イーライさまぁあああああ」
目の前には信じたくない光景が広がっている。
俺を独占したい大和が、近づいてきた少女を威嚇している。
俺が厳しく躾けたから、孤児たちに牙をむく事はないが、威嚇は止めない。
それを分かっているのに、少女は毎日近づいてくる。
少女に懐いた炎魔狼は大和を怖がっているのだが、少女を見捨てる事もできない。
震えて尻尾を丸めているのに、それでも必死で付いてくる姿は、とても健気だ。
「いやはや、イーライ様はおもてになりますなぁ、羨ましい限りでございます」
セバスチャンが思いっきりからかってくれる。
俺にはそんな気はまったくないのだが、少女からは一途な想いを感じる。
俺が大魔境で助けた少女が孤児院に来ているのだ。
親がいない訳ではないのだが、奴隷だった母親に子供の教育は難しい。
奴隷であろうと愛情豊かに育てる事はできるだが、勉学を教えられない。
だから孤児院で預かって勉学を教えているのだ。
そんな子供は他にもたくさんいるから、孤児院と言うよりは小学校に近い。
だが、公爵家の予算からお金を引っ張るのなら、言葉選びが大切になる。
だから学校ではなく孤児院と呼び、親のある子にもついでに勉強を教える形になるのだが、もちろん愛情豊かな親から無理矢理子供を引きはがしたりはしない。
親の性格がよければ孤児院で住み込みの仕事を与えている。
孤児院に勤めさせられない親なら、近くの奴隷小屋に住まわせている。
「そんな冗談は笑えないな、セバスチャン。
少女の想いを踏みにじるほど薄情ではないが、俺はまだ五歳児なのだぞ。
前世の年齢を加算すれば十六歳だが、身体は幼児なのだぞ。
それに、俺は小さい子供を愛の対象にする気などないぞ。
普通に可愛がってあげたいとは思うが、俺の方が幼いからそれも無理だ」
「それでよろしいのでございますよ、イーライ様。
どうもこの子は魔力を持っているようなのです。
今までは奴隷の子供で虐待対象なので、見落とされていたのでしょう。
本人も自分が弱いモノだと思い込んでいたので、抵抗もしなかったのでしょう。
なにより魔力も魔術も見た事も聞いた事もなかったのでしょう」
確かに、あのような環境では魔術など覚えられないよな。
「以前ゴブリンに襲われていたのも、こうして炎魔狼に懐かれているのも、この子に魔力があるからでしょう」
なるほど、ゴブリンはこの子を食って魔力を得ようとしていたのか。
魔物は他の魔物を魔力を食べて強くなるとセバスチャンが教えてくれた。
他の魔物に飼われたりパートナーになったりする従魔は、主人やパートナーから魔力を与えられて従うようになる。
一時的な力を得るのではなく、永続的に力を分けてもらうのだ。
だがそれだけに、主人やパートナーには魔力量の多さが求められる。
今回魔狼たちが孤児たちに従っているのは、魅了魔術で従えて命令したからだ。
今は魅了魔術に加えて俺の魔力で餌付けしている。
結構多くの魔力を必要とするが、俺の一日魔力生産量から見れば微々たるモノだ。
そんな状態で、一番強い炎魔狼が少女を選んだのだ。
少なくとも孤児院の子供達の中で最も魔力量が多いのは確実だ。
その魔力が士族や貴族以上なら、戦力に数えるのが公爵家嫡男の仕事だよな。
「イーライさまぁあああああ、だいすきです」
「ウゥウウウウウウ、ガウ、ガウ、ガウ」
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