44 / 58
第1章
第44話:家族だんらん
しおりを挟む
以前は長くても3日だった行商隊の村たいざいが4日目を迎えた。
行商人たちの村にもなったのだから、当然なのだが、ちょっと困る。
僕としては4日目にはまた旅に行けると思っていたから。
ただ、良かった事もある。
長く村にいる事で、西側に造った家がどんどん大きく良くなっていく。
畑にできる場所は少ないけれど、季節ごとに実る果樹を増やした。
西里山に生えている樹木の半数とは言わないけれど、開拓村に生えている果樹林の10倍はあるから、それだけで1000人は生きて行けると思う。
栗の実は直ぐに虫にやられてしまうと思っていたけれど、行商している間に食べ物を保存する方法を色々と教えてもらえた。
今はウィロウがいるから新鮮な食べ物をいくらでも持ち歩けるけれど、以前は売る物と自分たちが食べる物を、どう配分して運ぶかに命がかかっていたそうだ。
行商人としてお金を稼ぐためには、できるだけ売る物を多く運びたいけれど、自分たちが食べる物を粗末にし過ぎると、死ぬ事もあったそうだ。
特に新鮮な食べ物を集め難い冬の行商は、とても辛かったので、色々と食べ物の保存方法を聞き集めたと言っていた。
その1つに、とても我が家に向いた方法が有った。
それが栗の酒漬けで、半年は保存できると言うのだ。
新しく造った東の拠点は畑が少なくて、そこだけで収穫できる穀物は少ないけれど、栗や果物は山のように収穫できる。
焼くか煮るかした栗を、ワインやシードルに漬けておくだけで半年保存できるのなら、主食のパン代わりに栗の酒漬けを食べればいい。
「おいしい、お兄ちゃんの果物もお母さんのお菓子も美味しけれど、この栗とてもおいしい!」
「本当に美味しいな、甘い物は苦手だったが、これなら美味しく食べられる」
「うふぅふふふ、試食した時も美味しいと思ったけれど、こうしてゆっくりと食べると一段と美味しいわね」
栗の酒漬けの試食として、ワインやシードルを始めとした、各種の酒で煮た栗をお母さんに作ってもらったのだ。
最初は自分で作って見たのだが、あまりの手際の悪さに、お母さんに台所から追い出されてしまったのだ。
最初からお母さんに甘えたわけではないぞ!
ちゃんと自分でやれる事は自分でやろうとしたのだ……できなかったけど。
妹たちには、砂糖大根から作った黒砂糖を加えて煮た栗や、果実水で煮た栗も出してあげたが、煮汁も残さずに飲んでいた。
「どうかな、西の里山で暮らす事になって、穀物があまり収穫できなくなったら、この栗を主食にできるかな?」
「う~ん、そうだな、別にこの栗でなくても、ワインやシードルでも主食の代わりにできるから、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ」
「そうよ、お母さんたちが傭兵や冒険者をしていた頃は、水と干肉だけで何十日も頑張った事があるし、酒だけで何十日も暮らした事もあるわ」
「いや、お父さんとお母さんなら平気でも、エヴィーたちが苦しむから」
「だいじょうぶだよ、しんぱいいらないよ」
「本当に大丈夫か、ワインやシードルばかりで本当にいのか?」
「ほしたくだものがあるんでしょう?」
「ああそうだな、果物なら山のようにあるから、ドライフルーツはたくさんあるよ」
「だったらだいじょうぶ、わたし、リンゴを干した物もブドウを干した物もイチジクを干した物もだいすきだから!」
「ほらな、だいじょうぶだろ、ケーンが成長させた果物とは比べ物にならないが、それでも果物を干した物は甘くて美味しい、子供たちはみんな大好きだ」
「そうよ、心配ばかりしていないで、ケーンも家にいる時間を楽しみなさい」
お父さんとお母さんにこう言われてしまうと、直ぐに旅に行きたいと思っている自分が親不孝過ぎると思ってしまった。
そんな親不孝だけど、家族の事を心配しているのは本当だ。
だから、家族だんらんが終わってからも蔦壁を造った。
ロック鶏に餌をあげて愛情を注いだ。
不思議なのだが、もっと小さい頃から一緒に暮らし、わずかな期間だが乗馬まで教えてくれた馬よりも、ロック鶏の方が可愛い。
助けてあげた事に恩に感じているのか、常に愛情あふれる表現をしてくれる母牛や子牛よりも、ロック鶏の方を可愛く思ってしまう。
ロック鶏も僕の気持ちがなんとなくわかるようで、何も言わないのに西の里山にある少ない平地の樹木を、啄んだり蹴ったりして倒してくれる。
そのお陰で、直ぐに種蒔きができるくらい深く耕せている。
開拓村の畑よりも効率は悪いけれど、これで穀物も収穫できる。
一家で西の畑に移住する事になっても、妹たちは大好きなドライフルーツを入れたパンやお菓子を食べ続けられる。
翌朝は僕だけ朝遅くまで眠らせてもらった。
1日働く前の食事は肉や卵をたくさん使った物が普通だ。
僕がいたら野菜や果物、良くてチーズやバターを使った物になる。
僕のせいで家族が食べたい物を食べられないなんて我慢できない。
お昼は元々食べられなかったのが、僕のスキルで食べられるようになったから、パンと果物、チーズとバターに決まった。
それに、後でお父さんとお母さんに合流して畑仕事だ。
約束通り、できるだけ一緒にいるようにする。
行商人たちの村にもなったのだから、当然なのだが、ちょっと困る。
僕としては4日目にはまた旅に行けると思っていたから。
ただ、良かった事もある。
長く村にいる事で、西側に造った家がどんどん大きく良くなっていく。
畑にできる場所は少ないけれど、季節ごとに実る果樹を増やした。
西里山に生えている樹木の半数とは言わないけれど、開拓村に生えている果樹林の10倍はあるから、それだけで1000人は生きて行けると思う。
栗の実は直ぐに虫にやられてしまうと思っていたけれど、行商している間に食べ物を保存する方法を色々と教えてもらえた。
今はウィロウがいるから新鮮な食べ物をいくらでも持ち歩けるけれど、以前は売る物と自分たちが食べる物を、どう配分して運ぶかに命がかかっていたそうだ。
行商人としてお金を稼ぐためには、できるだけ売る物を多く運びたいけれど、自分たちが食べる物を粗末にし過ぎると、死ぬ事もあったそうだ。
特に新鮮な食べ物を集め難い冬の行商は、とても辛かったので、色々と食べ物の保存方法を聞き集めたと言っていた。
その1つに、とても我が家に向いた方法が有った。
それが栗の酒漬けで、半年は保存できると言うのだ。
新しく造った東の拠点は畑が少なくて、そこだけで収穫できる穀物は少ないけれど、栗や果物は山のように収穫できる。
焼くか煮るかした栗を、ワインやシードルに漬けておくだけで半年保存できるのなら、主食のパン代わりに栗の酒漬けを食べればいい。
「おいしい、お兄ちゃんの果物もお母さんのお菓子も美味しけれど、この栗とてもおいしい!」
「本当に美味しいな、甘い物は苦手だったが、これなら美味しく食べられる」
「うふぅふふふ、試食した時も美味しいと思ったけれど、こうしてゆっくりと食べると一段と美味しいわね」
栗の酒漬けの試食として、ワインやシードルを始めとした、各種の酒で煮た栗をお母さんに作ってもらったのだ。
最初は自分で作って見たのだが、あまりの手際の悪さに、お母さんに台所から追い出されてしまったのだ。
最初からお母さんに甘えたわけではないぞ!
ちゃんと自分でやれる事は自分でやろうとしたのだ……できなかったけど。
妹たちには、砂糖大根から作った黒砂糖を加えて煮た栗や、果実水で煮た栗も出してあげたが、煮汁も残さずに飲んでいた。
「どうかな、西の里山で暮らす事になって、穀物があまり収穫できなくなったら、この栗を主食にできるかな?」
「う~ん、そうだな、別にこの栗でなくても、ワインやシードルでも主食の代わりにできるから、そんなに心配しなくても大丈夫だぞ」
「そうよ、お母さんたちが傭兵や冒険者をしていた頃は、水と干肉だけで何十日も頑張った事があるし、酒だけで何十日も暮らした事もあるわ」
「いや、お父さんとお母さんなら平気でも、エヴィーたちが苦しむから」
「だいじょうぶだよ、しんぱいいらないよ」
「本当に大丈夫か、ワインやシードルばかりで本当にいのか?」
「ほしたくだものがあるんでしょう?」
「ああそうだな、果物なら山のようにあるから、ドライフルーツはたくさんあるよ」
「だったらだいじょうぶ、わたし、リンゴを干した物もブドウを干した物もイチジクを干した物もだいすきだから!」
「ほらな、だいじょうぶだろ、ケーンが成長させた果物とは比べ物にならないが、それでも果物を干した物は甘くて美味しい、子供たちはみんな大好きだ」
「そうよ、心配ばかりしていないで、ケーンも家にいる時間を楽しみなさい」
お父さんとお母さんにこう言われてしまうと、直ぐに旅に行きたいと思っている自分が親不孝過ぎると思ってしまった。
そんな親不孝だけど、家族の事を心配しているのは本当だ。
だから、家族だんらんが終わってからも蔦壁を造った。
ロック鶏に餌をあげて愛情を注いだ。
不思議なのだが、もっと小さい頃から一緒に暮らし、わずかな期間だが乗馬まで教えてくれた馬よりも、ロック鶏の方が可愛い。
助けてあげた事に恩に感じているのか、常に愛情あふれる表現をしてくれる母牛や子牛よりも、ロック鶏の方を可愛く思ってしまう。
ロック鶏も僕の気持ちがなんとなくわかるようで、何も言わないのに西の里山にある少ない平地の樹木を、啄んだり蹴ったりして倒してくれる。
そのお陰で、直ぐに種蒔きができるくらい深く耕せている。
開拓村の畑よりも効率は悪いけれど、これで穀物も収穫できる。
一家で西の畑に移住する事になっても、妹たちは大好きなドライフルーツを入れたパンやお菓子を食べ続けられる。
翌朝は僕だけ朝遅くまで眠らせてもらった。
1日働く前の食事は肉や卵をたくさん使った物が普通だ。
僕がいたら野菜や果物、良くてチーズやバターを使った物になる。
僕のせいで家族が食べたい物を食べられないなんて我慢できない。
お昼は元々食べられなかったのが、僕のスキルで食べられるようになったから、パンと果物、チーズとバターに決まった。
それに、後でお父さんとお母さんに合流して畑仕事だ。
約束通り、できるだけ一緒にいるようにする。
13
お気に入りに追加
724
あなたにおすすめの小説
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
冒険者ではない、世界一のトレジャーハンターになる!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」宝船竜也は先祖代々宝探しに人生を賭けるトレジャーハンターの家に生まれた。竜也の夢は両親や祖父母のような世界1番のトレジャーハンターになる事だ。だが41年前、曾祖父が現役の時代に、世界に突然ダンジョンが現れた。ダンジョンの中でだけレベルアップしたり魔術が使えたりする上に、現れるモンスターを倒すと金銀財宝貴金属を落とす分かって、世は大ダンジョン時代となった。その時代に流行っていたアニメやラノベの影響で、ダンジョンで一攫千金を狙う人たちは冒険者と呼ばれるようになった。だが、宝船家の人たちは頑なに自分たちはトレジャーハンターだと名乗っていた。
魔法が使えない女の子
咲間 咲良
児童書・童話
カナリア島に住む九歳の女の子エマは、自分だけ魔法が使えないことを悩んでいた。
友だちのエドガーにからかわれてつい「明日魔法を見せる」と約束してしまったエマは、大魔法使いの祖母マリアのお使いで魔法が書かれた本を返しに行く。
貸本屋ティンカーベル書房の書庫で出会ったのは、エマそっくりの顔と同じエメラルドの瞳をもつ男の子、アレン。冷たい態度に反発するが、上から降ってきた本に飲み込まれてしまう。
異世界子供会:呪われたお母さんを助ける!
克全
児童書・童話
常に生死と隣り合わせの危険魔境内にある貧しい村に住む少年は、村人を助けるために邪神の呪いを受けた母親を助けるために戦う。村の子供会で共に学び育った同級生と一緒にお母さん助けるための冒険をする。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
わたしの師匠になってください! ―お師匠さまは落ちこぼれ魔道士?―
島崎 紗都子
児童書・童話
「師匠になってください!」
落ちこぼれ無能魔道士イェンの元に、突如、ツェツイーリアと名乗る少女が魔術を教えて欲しいと言って現れた。ツェツイーリアの真剣さに負け、しぶしぶ彼女を弟子にするのだが……。次第にイェンに惹かれていくツェツイーリア。彼女の真っ直ぐな思いに戸惑うイェン。何より、二人の間には十二歳という歳の差があった。そして、落ちこぼれと皆から言われてきたイェンには、隠された秘密があって──。
【完結】落ちこぼれと森の魔女。
たまこ
児童書・童話
魔力が高い家系に生まれたのに、全く魔力を持たず『落ちこぼれ』と呼ばれるルーシーは、とっても厳しいけれど世話好きな魔女、師匠と暮らすこととなる。
たまにやって来てはルーシーをからかうピーターや、甘えん坊で気まぐれな黒猫ヴァンと過ごす、温かくて優しいルーシーの毎日。
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる