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第1章
第17話:駆け引き
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今回も行商人との交渉に同行する事になった。
物凄く苦手で疲れるのだが、村の役目ならしかたない。
それに、今はまだ見学だけだし、ウィロウと呼ばれていた子のように、主になって交渉させられるわけじゃない。
ウィロウという名の女の子は、よほど期待されているのだろう。
年配の大人たちも沢山いる50人の隊商なのに、代表の右横に座っている。
勉強の為なのだろうが、最初にいた後見人が同席出来ないのに、もっと幼いウィロウが激しい交渉に加わっている。
僕も頑張らないといけない、苦手なんて言っていられない。
これからも逃げ出したくなるだろうが、泣き言を口にしながらでも頑張る!
「今回の目玉商品はこのスモモだ、見事な大きさだろう」
「ああ、本当だな、こんな大きいスモモは50年生きて来て初めて見た」
「試しに食べてみてくれ、甘いのは当然だが、ほほが落ちるほど美味いぞ!」
「これは、とんでもない美味さだな!
多くの国で行商をしてきたが、これほど美味しいスモモは初めて食べた。
いや、他の果物を含めても1番美味しいぞ!」
「これならどこの王侯貴族に出しても恥ずかしくないはずだ。
今回の目玉として高値で買ってもらう。
安い値段をつけるようなら村の衆で食べる。
このスモモを売りたくないと言っている者は多いのだ」
「そうは言われても、果物の痛みは早い。
特にスモモは痛みが早いのだ、商品にするには不向きだ」
「だったらしかたがない、これまで通り薬草と小麦、酒とドライフルーツを売る。
売った分で塩と鉄器、これまで作った事のない野菜の種をもらおう」
「おい、おい、おい、そう焦るな、何も買わないと言っている訳じゃない。
そちらが思っているほど高くは買えないかもしれないと言っているだけだ」
「だったらいくら払えるか言ってくれ。
さっきも言ったように、スモモを売りたくない者が多いのだ。
豊かになったので、自分たちが食べたい作物は売らなくてもよくなっている」
フィンリー神官と行商隊代表との値段交渉は、前回にも増して激しかった。
僕には胃が痛くなるほど怖かったが、これを乗り越えないと!
僕が気持ちだけなのに、ウィロウと呼ばれていた子は交渉に加わろうとしている。
1人前になるために、僕たちに嫌われても邪魔にされても勉強しようとしていた。
スモモは、僕たちが予想していたよりもはるかに高い値段で買ってもらえた。
お父さんが言っていたように、アイテムボックスがあるのだろう。
それも、とても良いスキルのアイテムボックスだそうだ。
買ってくれた酒の多さで、アイテムボックスに入る量が分かるそうだ。
スモモとワインを買ってくれるので、時間も止められるのが分かるそうだ。
僕は何も知らない、頑張って覚えないといけない。
お父さんとお母さんは、8歳だから当然だと言ってくれるが、前世で12歳まで生きていたのだ、ずっとベッドの上だったとしても、他の子には負けられない!
「今度は俺たちが持って来たものを買ってもらう番だ。
さっき言っていた、ここで作られた事のない野菜の種だ」
「ほう、それは良い、村の衆がよろこぶ種なら高くても買わせてもらう」
「これは絞って煮たら砂糖が取れる野菜だ。
作れる場所が限られているが、この辺りなら上手く育つはずだ。
絶対とは言わないが、買って損はないぞ」
「ほう、砂糖か、甘い物に困ってはいないが、砂糖にして売るなら悪くはないな」
「ああ、俺たちも何時まで酒や果物を買えるか分からない。
砂糖なら暑い場所であろうと遠い場所であろうと運べるからな」
「分かった、で、いくらだ?」
フィンリー神官と行商隊代表の話を聞いていたお父さんの表情が変わった。
「何かあったの?」
僕がささやくように聞いた。
「あとで教えてやる」
行商隊の前では話せないような事なのだろうか?
こんな風に言わると気になってしまう。
激しいやり取りの後で、砂糖が作れると言う作物の種の値段が決まった。
とんでもなく高くて驚いた。
甘い物は果物で十分なので、買わなくても良いと思ってしまうほど高い。
「次は薬草の種だが、ただの薬草ではない、魔法薬の材料になる薬草の種だ!」
「それは確かに凄い物だが、製薬スキルを神与された者がいないと無意味だぞ」
「神官のあんたがいるこの村なら回復の魔法薬など不要だろう。
だが、俺たちのような行商人はもちろん、宝物を探して回る冒険者、神官のいない村では、回復薬は喉から手が出るほど欲しい物だ」
「それは分かっているが、さっきも言ったように、回復薬を作れる神与のスキルがなければ、材料だけあっても意味がない。
この村で作っても買い叩かれるだけだ」
「そこは安心してくれ、俺たちが高値で買い取る」
「ほう、製薬のスキル持ちを行商隊で確保したのか?」
「残念ながらそこまではできなかった。
だが、製薬スキル持ちを確保した貴族とのつながりができた。
そこに薬草を持って行けば高値で買い取ってもらえる」
「……それほど貴重な回復薬の材料なのか?」
「ああ、万年雪が積もり、アイスドラゴンが守る大山脈の高地にしか生えない薬草で、これを使えば最高級回復薬になる、いや、伝説級の回復薬になる。
この薬草を作れさえすれば莫大な金になるが、これまで誰も作れないでいた。
ここでなら、誰も作れなかった薬草を作れるのではないか?」
「さて、言っている意味が分からないが、それほど貴重な薬草の種なら、家の村では買い取れないくらい高いのではないか?」
「他に流さない、俺たちにだけ売ると約束してくれるのなら、今回の買取分で売ってやる」
物凄く苦手で疲れるのだが、村の役目ならしかたない。
それに、今はまだ見学だけだし、ウィロウと呼ばれていた子のように、主になって交渉させられるわけじゃない。
ウィロウという名の女の子は、よほど期待されているのだろう。
年配の大人たちも沢山いる50人の隊商なのに、代表の右横に座っている。
勉強の為なのだろうが、最初にいた後見人が同席出来ないのに、もっと幼いウィロウが激しい交渉に加わっている。
僕も頑張らないといけない、苦手なんて言っていられない。
これからも逃げ出したくなるだろうが、泣き言を口にしながらでも頑張る!
「今回の目玉商品はこのスモモだ、見事な大きさだろう」
「ああ、本当だな、こんな大きいスモモは50年生きて来て初めて見た」
「試しに食べてみてくれ、甘いのは当然だが、ほほが落ちるほど美味いぞ!」
「これは、とんでもない美味さだな!
多くの国で行商をしてきたが、これほど美味しいスモモは初めて食べた。
いや、他の果物を含めても1番美味しいぞ!」
「これならどこの王侯貴族に出しても恥ずかしくないはずだ。
今回の目玉として高値で買ってもらう。
安い値段をつけるようなら村の衆で食べる。
このスモモを売りたくないと言っている者は多いのだ」
「そうは言われても、果物の痛みは早い。
特にスモモは痛みが早いのだ、商品にするには不向きだ」
「だったらしかたがない、これまで通り薬草と小麦、酒とドライフルーツを売る。
売った分で塩と鉄器、これまで作った事のない野菜の種をもらおう」
「おい、おい、おい、そう焦るな、何も買わないと言っている訳じゃない。
そちらが思っているほど高くは買えないかもしれないと言っているだけだ」
「だったらいくら払えるか言ってくれ。
さっきも言ったように、スモモを売りたくない者が多いのだ。
豊かになったので、自分たちが食べたい作物は売らなくてもよくなっている」
フィンリー神官と行商隊代表との値段交渉は、前回にも増して激しかった。
僕には胃が痛くなるほど怖かったが、これを乗り越えないと!
僕が気持ちだけなのに、ウィロウと呼ばれていた子は交渉に加わろうとしている。
1人前になるために、僕たちに嫌われても邪魔にされても勉強しようとしていた。
スモモは、僕たちが予想していたよりもはるかに高い値段で買ってもらえた。
お父さんが言っていたように、アイテムボックスがあるのだろう。
それも、とても良いスキルのアイテムボックスだそうだ。
買ってくれた酒の多さで、アイテムボックスに入る量が分かるそうだ。
スモモとワインを買ってくれるので、時間も止められるのが分かるそうだ。
僕は何も知らない、頑張って覚えないといけない。
お父さんとお母さんは、8歳だから当然だと言ってくれるが、前世で12歳まで生きていたのだ、ずっとベッドの上だったとしても、他の子には負けられない!
「今度は俺たちが持って来たものを買ってもらう番だ。
さっき言っていた、ここで作られた事のない野菜の種だ」
「ほう、それは良い、村の衆がよろこぶ種なら高くても買わせてもらう」
「これは絞って煮たら砂糖が取れる野菜だ。
作れる場所が限られているが、この辺りなら上手く育つはずだ。
絶対とは言わないが、買って損はないぞ」
「ほう、砂糖か、甘い物に困ってはいないが、砂糖にして売るなら悪くはないな」
「ああ、俺たちも何時まで酒や果物を買えるか分からない。
砂糖なら暑い場所であろうと遠い場所であろうと運べるからな」
「分かった、で、いくらだ?」
フィンリー神官と行商隊代表の話を聞いていたお父さんの表情が変わった。
「何かあったの?」
僕がささやくように聞いた。
「あとで教えてやる」
行商隊の前では話せないような事なのだろうか?
こんな風に言わると気になってしまう。
激しいやり取りの後で、砂糖が作れると言う作物の種の値段が決まった。
とんでもなく高くて驚いた。
甘い物は果物で十分なので、買わなくても良いと思ってしまうほど高い。
「次は薬草の種だが、ただの薬草ではない、魔法薬の材料になる薬草の種だ!」
「それは確かに凄い物だが、製薬スキルを神与された者がいないと無意味だぞ」
「神官のあんたがいるこの村なら回復の魔法薬など不要だろう。
だが、俺たちのような行商人はもちろん、宝物を探して回る冒険者、神官のいない村では、回復薬は喉から手が出るほど欲しい物だ」
「それは分かっているが、さっきも言ったように、回復薬を作れる神与のスキルがなければ、材料だけあっても意味がない。
この村で作っても買い叩かれるだけだ」
「そこは安心してくれ、俺たちが高値で買い取る」
「ほう、製薬のスキル持ちを行商隊で確保したのか?」
「残念ながらそこまではできなかった。
だが、製薬スキル持ちを確保した貴族とのつながりができた。
そこに薬草を持って行けば高値で買い取ってもらえる」
「……それほど貴重な回復薬の材料なのか?」
「ああ、万年雪が積もり、アイスドラゴンが守る大山脈の高地にしか生えない薬草で、これを使えば最高級回復薬になる、いや、伝説級の回復薬になる。
この薬草を作れさえすれば莫大な金になるが、これまで誰も作れないでいた。
ここでなら、誰も作れなかった薬草を作れるのではないか?」
「さて、言っている意味が分からないが、それほど貴重な薬草の種なら、家の村では買い取れないくらい高いのではないか?」
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