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第一章

第31話:下位神(郷土神)

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 聖歴1216年4月6日:エドゥアル視点

「ワッハハハハ、ざまあみろ、神に逆らう愚か者め。
 人間ごときが神の方針に逆らうからこうなるのだ」

 俺が大闘技場と一緒に消えてなくなり、大闘技場のあった場所には強大なクレーターができていたが、その上空には黒く巨大なオークがいた。
 人間の魔術師とは比べようもない、膨大な魔力を持っているのが感じられる。
 その魔力を、地上に住む生物の命に配慮する事なく、全力で放ったのが先ほどの虹色に光り輝く攻撃魔術なのだろう。

「こうなるとは、どうなる事なのだ。
 まさかとは思うが、神ともあろう者が、俺を殺したつもりだったのか?
 あのていどの攻撃で、俺様を殺せたとでも思っていたのか?
 ガブリエルやルイーズのようなバカしか手先に使っていなかったのは、自分がバカだから、賢い人間は手先に使えなかったのだな!」

「生きていたのか、エドゥアル。
 人間の分際で、神をだましてタダですむと思っているのか!」

「神ともあろう者が、人間の俺にだまされているのじゃねぇよ。
 もっとも、俺にだまされるていど神だと言う事は、神と言っても下も下、人間よりもバカな使いっ走りの神モドキなのだろうな。
 どうりで姿がオークな訳だ」

「ぐぅわあああああ、しね、しね、しね、しね、死にやがれ!」

「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい。
 なんだ、偉そうに言って、そのていどかよ。
 そんな微弱な魔力で、俺を殺せると本気で思っているのか?
 神モドキのオークよ」

「グッガァアアアアア、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す」

「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい。
 魔力が微弱すぎるから、オークらしく殴りかかってきたが、どれほどバカ力でも当たらなければ何の意味もないぞ、バカオーク」

「ブッヒイイイイイ、ブヒ、ブヒ、ブヒ、ブヒ、ブヒ」

「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい。
 ケリを使うのはいいが、バランスを崩してこけるなよ、バカオーク。
 ブヒブヒと鳴くところを見ると、やっぱりオークから進化した神なのか?
 それともオークが神だと嘘をついているだけなのか?」

「ブッヒイイイイイ!」

 魔力量と知能から判断して、やはり最下層の神だと思う。
 激怒してオークの姿すら維持できなくなり、肥え太った雄豚の姿に変化した。
 最初の攻撃で魔力を使い果たしてしまったのか、他に理由があるのか、最初の攻撃ほど強大な魔力攻撃は放ってこない。
 魔力を体内に巡らせて身体を強化させて突撃してきた。

「はい、はい、はい、はい、あんよは上手。
 最下級とはいえ、神ともあろうモノが、勢い余ってコケると恥ずかしいぞ」

「ブッヒイイイイイ!」

 もう言葉すら使う余裕がないのか、怒りのあまり言葉を失っているのか、真直ぐに空を翔けて、魔力のこもった牙で俺を突き殺そうとする。

「もうこれ以上バカな神モドキの遊びに付き合う気はない。
 人間の世界を混乱させた愚かな行いを悔いながら死ね、バカオーク」

「「「「「やらせん」」」」」
「「「「「人間ごときに、古き神々である我らが殺されてたまるか」」」」」

 またしても頭と心に直接響く魔力の言葉が叩きつけられた。
 普通に人間が同じように魔力の言葉を叩きつけられていたら、即死するか発狂していただろうが、俺はとっさに自分の魔力で防御した。

「コボルトにケット・シー、ミノタウロスにアクリス、アラクネにラミア、ぞろぞろと現れやがったな」

「「「「「死ね」」」」」

 6柱の神が一斉に魔力の塊を放ってきやがった。
 それでも、最初に受けた虹色に光り輝く攻撃ほどではない。
 あの時の攻撃は、1つのチャクラに貯めた魔力の半分を消費させるほどだった。
 だが今回の攻撃は、6柱併せても1割も消費しない。
 バカオークが1番魔力量が多かった可能性もあるが、納得できない。

「ほい、ほい、ほい、ほい、ほい。
 そのていどの魔力で、俺を斃せると本気で思っているのか。
 6匹併せてもバカオーク以下の魔力量しかないぞ。
 お前らバカオーク以下の最低の神なのか?」

「「「「「グゥオオオオオ」」」」」

 声にもならない怒りの雄叫びをあげながら、6柱の神が変化していく。
 それぞれの種の根源である、犬、猫、牛、鹿、蜘蛛、蛇の姿になった。
 本物と違うのは、まがりなりにも神だから、魔力で空に浮かんでいる事だ。
 空を縦横無尽に翔けて俺のスキを狙おうとするが、そんな事はさせない。
 
「大した力もないようだから、直ぐに楽にしてあげますよ」

 俺は腰に吊してあったオリハルコン製の長剣を抜く。
 下級とはいえ神だから、普通ならオリハルコン製の剣であっても斬れない。
 弾かれるか、攻撃する者の力が強ければ剣が折れる。
 だが俺ならば、オリハルコン製の剣に神以上の魔力が込められる。
 純度と密度がある魔力をおびた剣ならば、神でも斬れるはずだ。

「ギャッフ、グッハ、ゴギャ、グゲッ、ガッハッ、ゲッボ」

 一斉攻撃で俺に防ぐ間を与えないようにしたかったのだろう。
 空を翔けている利点を使って、6柱が360度別々の方向から突撃してきたが、連中は俺が持つオリハルコン製の剣に注意を払い過ぎていた。
 魔力を込めて神をも斬る武器にするのは、オリハルコン製の剣でなくてもいい。
 手足に魔力を込めれば十分神を殺せる武器になるのだ。

「「「「「おのれ、これで勝ったと思うなよ」」」」」

 俺に首を斬り飛ばされ、魔力器官のある場所を刺し貫かれたはずの神たちが、胴体から斬り飛ばされた首で話しかけてきやがった。
 斬り離したはずの頚の斬り口から、さきほど見た、禍々しい黒いアメーバーのような物質がつながっている。
 それどころか、離れたまま、俺に襲いかかってきやがった。

「そんな事をしてもムダなのだが、そのていどの事も分からないのか。
 バカオーク以下のバカ神だな」

「エリア・ウルトラ・ホーリー・ウォーター・フロウ」などと叫んだりはしなかったが、俺の周囲に聖なる水流の壁が現れた。
 1つだけではなく、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つと創りだす。
 6柱のバカ神だけではなく、地に倒れているバカオークにも備えておく。
 バカオークに不意討ちさせる気はないが、大切な孤児院の子供たちが襲われ事だけは、絶対の防がないといけない。

「「「「「フッフッフッフッ、思い上がるな、人間。
 これで勝ったと思ったら大間違いだ。
 異世界から現れた神に支配された郷土神には勝てても、邪神様のお力を分け与えられた、邪郷土神の力には勝てないぞ」」」」」

 なんだよ、邪郷土神というのは?
 そんな名前を名乗って恥ずかしくないのか?
 それにしても、元々この世界にいた神を、異世界から来た神が支配したのか。
 地球からこの世界を救う召喚聖者が呼び寄せられたのも、その影響か?
 神と人間による異世界征服に手を貸すなんて、俺は絶対に嫌だぞ。

「「「「「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね」」」」」

 俺に禍々しい黒い物体を接触させようとしている。
 恐らくだが、あの黒い物体に触れると邪神の眷属にされるのだろう。
 普通の人間たちは、死んで即座に腐りゾンビになっていた。
 最下級の郷土神は、内部に邪神の力を宿したまま元に姿を保てている。
 郷土神よりも桁違いに多い魔力を持つ俺ならどう変化するのだろうか?

(バカな事を考えてないで戦うのじゃ。
 そのような下級神などさっさと斃して、妾に管理神を斃させるのじゃ)

 色々と心配なのか、ラファエルが心に話しかけてきた。

(分かっているよ、俺は約束を破ったりはしないよ)

 ラファエルを安心させてから邪郷土神たちを本気で滅ぼす。

「さっさと浄化消滅されてしまえ、バカ神ども」

 俺は展開待機させていた聖なる水流の壁を郷土神たちに叩きつけた。
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