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悪漢の村1
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「部屋を借りたい」
「個室と雑居部屋がある」
「個室だ」
「御貴族様で」
「士族だ」
「貴族の方が来られたら、部屋を空けて頂くことになります」
「分かっている」
「では二階の一番突き当りになります」
「風呂はあるのか」
「御湯を買って頂くことになります」
「いくらだ」
「バスタブ一杯で小銀貨一枚になります」
「どう言う事だ」
「この村では何でも高いんですよ」
「街の風呂屋のように、銅貨一枚とは言わないが、チップ込みで大銅貨一枚でも高いと思うが」
「だったら風呂に入らなければいい。断っておくが、個室の代金は小金貨四枚だ」
いきなり店主の話し方が変わった。
本性を現したのだろうか。
一階の酒場でとぐろを巻いていた連中が此方を伺いだした。
「本当に物価が高いな。街のそれなりの宿でも個室は小銀貨四枚だぞ」
「ああ、そうだろうな。だがここでは小金貨四枚だ」
「おい。不服があるなら俺達が聞いてやろうじゃないか」
「おおよ、気に食わないというのなら、泊まらなければいいのさ」
「もっとも野宿すれば、野盗に嬲り者にされたうえで、身ぐるみ剥がれるからな」
「何なら俺達の家に泊めてやろうか」
「御礼はたっぷりしてもらうがな」
「「「「「ぐへへへへ」」」」」
下卑た連中が、下品な言葉をかけて来る。
事前に魔晶石使い魔で調べていたから、どのような村かは分かっていたが、最低の村だ。
巡検使と名乗らなかったし、余もガビも別の美女の姿に化けているから、組みしやすしと考えているようだ。
それにしても、貴族ではないにしても、士族と名乗っているのに、それでもこの対応だ。
「分かった。払えない訳ではないが、下郎共に儲けさせるのも業腹だ。野宿して野盗を迎え撃たせてもらおう」
「何だとこの女郎」
「ただでここから出ていけると思っているのか」
「たっぷりと思い知らせてやり」
「いい声で泣かせてやるよ」
「本当にやれると思っているのか」
余の挑発に乗って、チンピラ共が襲い掛かってきた。
蛮刀を振りかぶり、力任せに振り下ろしてくる。
技も何もない、力自慢の野蛮な攻撃だ。
武器だってありふれた物だ。
野暮ったい数打ちの鈍らだが、それでも十分人は殺せる。
問題は鮮やかに戦ってはいけない事だ。
野盗の黒幕が逃げ隠れしないように、相手に勝てると思わせないといけない。
ここにいる五人では負けたが、野盗団全体で襲えば必ず勝てると思わせながら勝たなければならない。
だが、まあ、この男は戦力外にしておく。
「ウギャァアァアァアァ」
「この野郎」
「野郎ではない。私は女だ」
軽口を叩きながら、次の男の腕を斬り落とした。
全く刀を抜かないで勝つと、野盗団が警戒してしまうかもしれない。
「個室と雑居部屋がある」
「個室だ」
「御貴族様で」
「士族だ」
「貴族の方が来られたら、部屋を空けて頂くことになります」
「分かっている」
「では二階の一番突き当りになります」
「風呂はあるのか」
「御湯を買って頂くことになります」
「いくらだ」
「バスタブ一杯で小銀貨一枚になります」
「どう言う事だ」
「この村では何でも高いんですよ」
「街の風呂屋のように、銅貨一枚とは言わないが、チップ込みで大銅貨一枚でも高いと思うが」
「だったら風呂に入らなければいい。断っておくが、個室の代金は小金貨四枚だ」
いきなり店主の話し方が変わった。
本性を現したのだろうか。
一階の酒場でとぐろを巻いていた連中が此方を伺いだした。
「本当に物価が高いな。街のそれなりの宿でも個室は小銀貨四枚だぞ」
「ああ、そうだろうな。だがここでは小金貨四枚だ」
「おい。不服があるなら俺達が聞いてやろうじゃないか」
「おおよ、気に食わないというのなら、泊まらなければいいのさ」
「もっとも野宿すれば、野盗に嬲り者にされたうえで、身ぐるみ剥がれるからな」
「何なら俺達の家に泊めてやろうか」
「御礼はたっぷりしてもらうがな」
「「「「「ぐへへへへ」」」」」
下卑た連中が、下品な言葉をかけて来る。
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巡検使と名乗らなかったし、余もガビも別の美女の姿に化けているから、組みしやすしと考えているようだ。
それにしても、貴族ではないにしても、士族と名乗っているのに、それでもこの対応だ。
「分かった。払えない訳ではないが、下郎共に儲けさせるのも業腹だ。野宿して野盗を迎え撃たせてもらおう」
「何だとこの女郎」
「ただでここから出ていけると思っているのか」
「たっぷりと思い知らせてやり」
「いい声で泣かせてやるよ」
「本当にやれると思っているのか」
余の挑発に乗って、チンピラ共が襲い掛かってきた。
蛮刀を振りかぶり、力任せに振り下ろしてくる。
技も何もない、力自慢の野蛮な攻撃だ。
武器だってありふれた物だ。
野暮ったい数打ちの鈍らだが、それでも十分人は殺せる。
問題は鮮やかに戦ってはいけない事だ。
野盗の黒幕が逃げ隠れしないように、相手に勝てると思わせないといけない。
ここにいる五人では負けたが、野盗団全体で襲えば必ず勝てると思わせながら勝たなければならない。
だが、まあ、この男は戦力外にしておく。
「ウギャァアァアァアァ」
「この野郎」
「野郎ではない。私は女だ」
軽口を叩きながら、次の男の腕を斬り落とした。
全く刀を抜かないで勝つと、野盗団が警戒してしまうかもしれない。
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