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紅花村1

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「まあぁ、なんて美しいのでしょう」
「そうだね。驚くほど美しいね」
 余とガビの目の前に広がる光景は、一面の花畑だった。
 鮮やかな、今まで見た事のないような鮮やかな赤い色彩が広がっている。
 これほど美しい花畑があるとは思っていなかった。
「ルイ様。少し空から見てみませんか」
「いいけれど、村人を脅かしてしまってはいけないよ」
「分かっておりますわ。認識疎外と気配消去の魔法をかけますわ」
「それなら大丈夫だね」
 余とガビは、それぞれ魔法を重ね掛けして、空を駆けることにした。
 高く低く飛びながら、いろんな角度から紅花畑の風景を愉しんだ
「ルイ様。風になびく風景を見たいですわ」
「村人を驚かしたり、花が散ったりするような、強い風はいけないよ」
「分かっておりますわ」
 ガビは細心注意を払って微風を送り、紅花畑を波打たせた。
 そこ光景は目をくぎ付けにするくらい美しかった。
 やはりガビは芸術眼がある。
 余は自分で風を起こしてまで光景を作ろうと思わない。
「ガビ。そろそろいかないか」
「待ってくださいませ。もう少し愉しませてください」
「分かったよ」
 ガビが二時間ほど風景を楽しんだので、流石に時間を持て余した。
 どれほど美しい光景であろうと、二時間も見ていられない。
 だが、ガビがもっと見たいと言う以上、一緒にいなければならない。
 とは言え、更に三時間は長すぎる。
「ガビ、そろそろ御飯にしないかい」
「そうですわね。御腹が空きましたわね」
「じゃあ村の宿に入ろう」
「はい」
 自分達で作った昼食を食べてから、村長に話を聞こうと昼過ぎに紅花村に入ったのだが、もう夕闇が迫っている。
 何度も風景観賞を切り上げようと思ったのだが、ガビが夕日に映える紅花畑にも夢中になっていたので、こんな時間になってしまった。
 直ぐに闇が訪れてしまう。
 いくら巡検使だとはいっても、非常識な時間に村長を尋ねるわけにはいけない。
「一番上等な部屋は空いているか」
「御貴族様ですか」
「そうだが、空いていなければ野宿をするから構わん」
「そんな事は出来ません」
 やれやれ、困ったものだ。
 まだ前王国の悪癖が残っている。
 前王国の法律では、貴族が宿に訪れたら、一番いい部屋を空けなければならなかった。
 先に平民の泊り客が入っていても、平民を追い出して一番上等な部屋を空けるのだ。
 まあ、普通貴族に、雑魚寝部屋で寝ろとは言えない。
 常識的な貴族なら、チップをはずんで先客に移動してもらうものだ。
 だが余とガビなら、自分で野宿用の家を創り出す事が出来る。
 そしてその家の方が、大抵の宿屋より居心地がいい。
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