大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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代官

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「どう言う事だ、王」
「どうもこうもない。民を餓死させるくらいなら、魔族に魂を売ってでも、食料を手に入れる。それだけのことだ」
「自分の民を餓死させないためなら、他国の人間を殺してでも食料を奪う。それが正義だと言うのか?」
「正義? この世界にそんなものはない。あるのは弱肉強食の現実だけだ!」
「ならば強者の我が、弱者の王を殺すのも当然だと言うのだな?」
「そうだ。だが出来れば一つ願いを聞いてもらいたい」
「ふん! 国民を餓死から救ってやってくれか?」
「そうだ。聞いてもらえるなら感謝する」
「感謝などいらん。だが食料は分けてやろう。その代わり死ねとは言わん。我が主人に成り代わり、お前が代官としてこの国を統治しろ」
「直接統治しないのか?」
「今は忙しいからな。ただし人質は出してもらおう」
「人質を出すのは構わないが、民の為なら妻子など見殺しにするぞ?」
「それはお前の自由だ。だがいずれ代官はこちらから送った者に交代させるから、その時には民への責任はなくなる」
「そうか」
「それでは話してもらおうか」
「魔族の事か?」
「そうだ」
「魔族は我と契約した日に出ていった。それから一度も戻らない」
「どこに行った?」
「分からん」
「本当だな」
「いまさら嘘など言わん」
「そうか」
「契約したのはどれくらい前だ?」
「十日ほど前だ。そうだ、丁度十日前だ」
「そうか」
 エステ王国を離れたダイは、直ぐにイマーン王国が侵攻したネッツェ王国領に飛んで行った。
 そこで広範囲の眠りの魔法と麻痺の魔法を使い、両国の将兵を無力化した。
 このままにしていたら、獣に喰い殺されたり、盗賊に殺されたりしまうかもしれない。
 本当はミカサ公爵家の人間を使いたいのだが、人手が足りなかったので、しかたなく少しずつ対抗魔法を使って、一度無力化した将兵を元通り動けるようにしていった。
 そして動けるようにした将兵を徹底的に脅かして、大多数の将兵に縄をかけて捕虜にした。
 その上で魔晶石を使った使い魔を千頭程度起動させ、捕虜の見張りをさせた。
 そこまで手を打ってからイマーン王国に乗り込んだのだが、そこに魔族はおらず、虚無に囚われたような王がいるだけだった。
 国を奪うことはできた。
 軍や貴族が抵抗しようが、ミカサ公爵家がその気になれば、簡単に鎮圧できるだろう。
 いや、ルイやダイなら、一人でも簡単に鎮圧できる。
 ルイは嫌がるだろうが、今さら後戻りはできないし、イマーン王国の民が餓死するのを、見捨てる事などできないだろう。
 当面の食料は、ルイとダイの魔法袋に蓄えられた、莫大な食料を貸し与えれば大丈夫だった。
 ルイは無償で提供しようとするだろうが、ダイは貸与にするつもりだった。
 イマーン王国には豊富な鉱山資源があり、それを加工する技術もあるから、乞食のような生き方をさせるのではなく、職人として誇り高く生きさせるつもりだった。
 だが問題は魔族だった。
 一刻も早く魔族を見つけ出さねばならないので、イマーン王国の統治にミカサ公爵家の人間を使う訳にもいかず、まして自分やルイが当たるわけにもいかないので、当面は元の王を代官として使うことになった。
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