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奇襲

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「助けてくれ!」
「許して、子供だけは殺さないで!」
 エステ王国のネッツェ王国侵攻は、完全な奇襲となった。
 ネッツェ王国が、略奪を繰り返すイマーン王国軍を打倒するために、山岳地帯に侵攻したのを確かめてから、エステ王国は侵攻をしたのだ。
 これまでのエステ王国は、ネッツェ王国とも度々問題を起こしてはいたが、基本政策としてネッツェ王国の第二王子を支援して、自分たちに都合のいい傀儡政権を誕生させる方針だった。
 しかも最近では、第一王女の暴走により、強力な魔法を使うベル王家と敵対しており、侵攻するならベルト王国だろうと思われていた。
 それにその様な国際状況で、エステ王国がネッツェ王国に侵攻すれば、ベルト王国が必ずエステ王国に侵攻すると予測されていた。
 だからネッツェ王国では、ベルト王国の侵攻を恐れて、エステ王国がネッツェ王国に侵攻することはないと判断し、イマーン王国侵攻を決断したのだった。
 だがエステ王国第一王女:エミネ・メヴィデド・カディン・エフェンディにとっては、自分が世界で一番の美女であることが一番大切だった。
 ベルト王国軍が自国に侵攻して多くの民が殺されても、それは自分が美しくなるための力、魔王召喚の生贄が達成される喜ばしいことだったのだ。
 そんなエミネ王女が契約した魔族が指揮するエステ王国軍の方針は残虐で、壊し犯し殺すという残虐非道なモノだった。
 普通なら人質にして身代金を要求する人間や、奴隷にして売買する為に殺さない人間も、問答無用で虐殺していった。
 そう虐殺なのだ!
 できるだけ残虐非道に殺すことで、異界に住む魔族にとって質の良い糧になるので、エステ王国軍の行為はこの世界始まって以来の非道なモノになった。
 そしてここで必ず侵攻するだろうと周辺各国に思われていたベルト王国は、無辜の民を戦乱に巻き込む気はないと宣言して、逆にエステ王国民保護を打ち出した。
 この宣言を聞き知ったエステ王国の民は、あらゆる手を使ってベルト王国への逃亡を企てたが、犯罪ギルドに騙され奴隷にされる危険があった。
 だがその事を事前に察していたベル王家は、ミカサ公爵家の精鋭をエステ王国内に送り込み、犯罪ギルドを壊滅させ、無辜の民が安全に逃げられるように手引きさせていた。
 本来なら国境線を護るはずのエステ王国軍国境警備隊からも、多くの逃亡者が出てしまっており、エステ王国のベルト王国と近い地方は、一人の住民も残らないような状況になっていた。
 ルイとダイがダンジョンを家臣にした時期は、丁度そんな国際情勢になっていたのだった。
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