上 下
99 / 212
本文

ユニコーン

しおりを挟む
「なんだと?! ユニコーンだと!」
「珍しい者が姿を現しましたね」
 ルイとダイがクリューサーオールとペーガソスに空を駆けさせ、地上の動物なら追いかけられないように、高く駆けさせたら、ついに姿を現したのだ。
だが出てきた相手は、何と伝説の幻獣と呼ばれるユニコーンであった。
伝説通り全体的な形は馬なのだが、クリューサーオールやペーガソスと同じように背中に翼を持ち、尾はライオンそっくりで、顎には牡ヤギのような髭が生えている。
眼は紺色をしており、蹄は馬と違って2つあった。
何より特徴的だったのは、1本の長い角が額の中央に生えていることだ。
その角は螺旋状の筋が入っており、ユニコーンの体長の半分ほどの長さで、槍のように真直ぐで鋭く尖っている。
伝説通りなら、その角には魔法の力が宿っていて、世界のあらゆる毒や呪いを打ち消すことができ、毒水や汚水を清浄な水に変える力あると言う。
「ダイは知っているのか?」
「はい。昔何度か出会ったことがありますが、違うユニコーンのようです」
「ただの人間ではないようだね」
「言葉が話せるのですね」
「珍しいな。男に話しかけるとは」
「私も長く生きているからね。多少は男にも優しくなったのさ。それにあんただけではなく、そこにいるのもただの人間ではないようだしね」
「無礼な事を言うのなら、ユニコーンであろうと許さんぞ」
「無礼など言わないよ。それよりあんた達こそ、その高貴な乙女をどうするつもりだい?!」
「どうもしませんよ。アネットが、エルフの村に閉じこもったままでは偏屈で高慢になってしまうので、一緒に旅がしたいと言うので、同行しているだけですよ」
「不埒な考えはないのだね?!」
「美しい娘さんだとは思いますが、私には国に愛しい婚約者がいます」
「私も同族以外に興味はない」
「話は分かったが、無条件で信じるわけにはいかないね」
 ルイとダイも、ユニコーンの伝説を知っていたので、アネットが処女なのだと思いはしたが、二人とも紳士なのでその事を口にはしなかった。
 だが同時に伝説のユニコーンが高貴な乙女と言うくらいだから、このユニコーンがアネットを特別視していることも直ぐに理解した。
「信じられないのなら、私たちに同行してはいかがですか?」
「本気なのかい?」
「ええ。ユニコーンの伝説は聞いたことがありますから、ここであなたと争う気はありませんよ。あなたがアネットを護りたいと言われるのなら、じゃまをしようとは思いませんよ。それにいつまでもクリューサーオールに二人乗りするのもかわいそうです。あなたがアネットを乗せてくれるのなら、私たちも助かります」
「私の背にその高貴な乙女を乗せさせてくれるのだね?!」
「はい」
「だったら同行させてもらおうじゃないか」
「そのかわり約束してください」
「なにをだい?」
「アネットを必ず護ると」
「言われるまでもないよ! 私の誇りにかけて護るよ!」
「ではお任せしましたよ」


ユニコーン
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

処理中です...