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混沌

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「これはひどいな」
「はい。このような状態は見たことはありません」
 ルイとダイは、エルフ族の結界奥深くに入っていったが、その中央は何とも言えない状態であった。
 木々どころか大地も空もなくなり、いや、無くなったというよりは全てが無秩序に混じり合って溶け合っている状態で、色も極彩色から灰色まで混じり合っていた。
 よく見れば巻き込まれたエルフ族が木々や土地と混じり合い、一部は溶けて液体とも気体とも言えない物質となり、無くなったと思えばまた現れると言った状態であった。
「早く助けるのだ!」
「まて! 無暗に近づくと取り込まれてしまうぞ。ここから魔法で何とかするのだ」
「なんとかとはなんだ!」
「それが分かればとうにやっている!」
 どうやら助けに入ったエルフ族も巻き込まれてしまったようで、周りにいるエルフ族も手の施しようがないようだ。
「お父様、いったい何が起こったのですか?!」
「老師たちが魔境を創り出す実験をしていたのだが、力の制御を失敗したようだ」
「そんなことはない! おじいさまが失敗する事などない」
「愚か者! 今目の前にあるモノを認められない者は愚者でしかない! その傲慢な性格がこのような惨状を創り出したのがまだ分からぬか!」
「く!」
 傲慢なエルフ族の中には、未だに自分たちがしでかした悪夢のような現実を認めない者が多くいるようだが、中には冷静に対処法を探そうとしている者もいるようだ。
「なんとかできると思うか?」
「そうでございますね。何らかの魔法でこのような事が引き起こされているのなら、解除の魔法を組み込むことも可能だとは思いますが、魔法の仕組みを解き明かすのに長い時間が必要だと思われます」
「それに問題は、あのように成り果ててしまったエルフを元に戻せるかだな」
「あらゆる物質と融合してしまった状態なので、今すぐ解除の魔法を使えたとしても、あの状態のまま固まるだけかと思われます」
「それは死ぬと言う事だな」
「はい。土や木と混じり合ったまま生きていけるとは思えません」
「そうだな。だがあの状態をコントロールできるのなら、キメラを創り出すことも可能だな」
「さようでございますね。猪と鷲を融合させてクリューサーオールを創り出すことも、馬と鷲を融合させてペーガソス創り出すことも可能でしょう」
「万が一我々があの魔法で攻撃されたときは、どう対処すべきだと思う?」
「防御魔法で防げるものならよいのですが、そのような事が叶わない、全く別の魔法とも言えない現象だったとすれば、自分自身を強く持って、他な物資と混ざらない事だと思います」
「ダイもそう思うか」
「はい。ですから今巻き込まれているエルフたちも、自分を強く持って、今混じっている物と自分を峻別すれば、あの中から分かれて出てこられると思われます」
「そうだな。それしかないな」
「おい! あれはなんだ?!」
「なんだ? 何のことを言っている?!」
「あの中央にいるモノのことだ!」
「エルフたちも気付いたようだね」
「はい。若様」


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