大国王女の謀略で婚約破棄され 追放になった小国王子は、 ほのぼのとした日常を望む最強魔法使いでした。

克全

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魔境探査

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「ギース。魔境に狩りに行くから一緒についてきてください。オリビアは村の護りを頼みますね」
「「分かった」」
 言葉数が少ないギースと、片言のフィン王国語がしか使えないオリビアが、同時に返事をしたのがおかしかった。
 開拓村を軌道に乗せるためには、最初にある程度の魔核が必要になるし、長期保存ができるハムやソーセージを自分たちで作れるようになった方がいい。
 フィン王国の魔境と同じ野草があれば同じレシピを教えればいいが、オーランド王国の魔境の植生が分からないので、狩りのついでに調べておく必要が出てきた。
 そこで狩りと村の防衛を両立させるために、ギースとオリビアを分けて働かせることになった。
 自警団は全員村の警備と訓練に必死で、とても魔境に狩りに入る力はなかった。
 ルイとダイは手当たりしだいに銅級や鉄級の魔物を狩り、魔法陣を動かすのに必要な魔核と食料の確保をしつつ、ギースに保存食作りに必要な野草を教えるという忙しい状態だった。
 オーランド王国の魔境に住む魔物の多くは、湿地帯特有の種が多く、名前の頭にウェットランドと付けられていた。
 銅級や鉄級でウェットランド・ファングラットやウェットランド・ポイズンフロッグと言った名前が付けられているものは少なく、単に蟲と魚と呼ばれる魔蟲や魔魚がほとんどで、銀級以上のウェットランド・ポイズンスネークなどから正式な名前が付けられていた。
 そんな魔境で特に恐れられている魔獣が魔鰐で、鋼鉄剣の攻撃を寄せ付けない強固な皮の装甲で護られ、鋼鉄のプレートメイルを噛み砕く牙と顎力を持ち、水中を自由自在に泳げるだけではなく、陸上も時速六十キロメートルで走る脚力を持っているのだ!
 ビッグクロコダイルと呼ばれる魔鰐は、全長十三メートル・体重八トンと言う巨体で、並みの狩人や冒険者では、出会えば死を覚悟するしかない玉鋼級に近い白銀級の魔物なのだ。
 いや、確かに倒した後で採れる魔晶石は総合的に評価して白銀級なのだが、単に戦闘力だけを考えれば玉鋼級と言ってもおかしくない相手なのだ。
「ギース、こいつと戦ってください。万が一危険だと思ったら、私が魔法で支援しますので、安心して戦ってください」
 ルイは非情ともいえる命令をしたのだが、ルイとダイに助けてもらったギースに逆らう事などできるはずもなく、無言でビッグクロコダイルに戦いを挑んでいった。
 ギースの事など手ごろなオヤツとしか思っていないビッグクロコダイルは、時速六十キロメートルの速さで襲い掛かってきた。
 対するギースはひらりとビッグクロコダイルの攻撃をかわすと、槍の一撃をビッグクロコダイルの眼を狙って繰り出したのだが、ビッグクロコダイルは見た目に反したすばやい動きで、槍の一撃をかわすのだった。
 互いの次の攻撃を狙って、ギースもビッグクロコダイルも動き回るのだが、元々も防御力にすぐれたビッグクロコダイルが、思い切った噛みつき攻撃をしかけてきた!

魔鰐:ビッグクロコダイル
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