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魔虎:ビッグタイガー

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 ルイがレイラのために用意した魔獣は、この魔境では二番目に強い白銀級の魔虎だった。
 ビッグタイガーと呼ばれる魔虎は、体長四メートル・体重五百キログラムの巨体に、魔物特有の強靭な毛と皮の防御力を持ち、並みの鉄剣では全く傷つけることが出来ず、達人級の剣士が鋼鉄剣を使ってわずかにダメージを与えられる程度なのだ。
 しかもビッグタイガーの攻撃力は強力で、前脚を振るった爪の攻撃は、鉄のプレートメイルなら紙のように切り裂き、鋼鉄のプレートメイルでも大きく凹ませて中の人間を殺してしまうほどだ。
 さらに牙による攻撃は、鋼鉄のプレートメイルでさえかみ砕く破壊力があり、ミスリル銀のプレートメイルですら牙が貫通してしまい、玉鋼で作られたプレートメイルでようやく防げるほど強力な攻撃なのだ。
 そんなビッグタイガーと戦うことになったレイラは、恐怖で震えそうになる身体を勇気を振り絞って動かし、多くの冒険者や老人や孤児が見守る中で相対していた。
 覚えたばかりの身体強化魔法と支援魔法と防御魔法を自分自身にかけ、ビッグタイガーに先手を取られないように、一気に距離を詰めて攻撃に向かった。
 白銀級のビッグタイガーともなれば、本能でレイラの持つ魔剣の恐ろしさは感じることができるので、普通なら爪の一撃で迎え討つところを、強靭な脚力を使って魔剣を持っていないレイラに左側に避けるのだった。
 避けた上で、追撃に備えるために爪の攻撃は使わず、強靭なあごの力と鋭い牙の貫通力を併せ持つ、噛みつき攻撃をレイラの左脚に仕掛けてきた!
 だがルイが授けた秘剣はこの状態を想定したものだった!
 身体強化魔法と支援魔法と防御魔法を重ねてかけたレイラの身体は、ビッグタイガーの攻撃を避けるだけの速さがあるので、一度攻撃を避けた上で剣を使って戦い続けることも可能なのだが、今回は弱点である体の内部を大きく開ける噛みつき攻撃を誘ったのだ。
 大きくあけられたビッグタイガーの口に、土を圧縮強化した岩槍を叩き込み、口内から脊髄を叩き切って即死させたのだ! 
 魔物特有の強靭な皮膚と皮の防御力を誇るビッグタイガーであろうと、口の中ならの攻撃には抵抗できず、わずかな時間で勝負がついた。
 だから見ていた冒険者や老人や孤児たちは、レイラの圧勝だと勘違いしていたが、本当は紙一重の勝負なのだ。
 ほんのわずかな攻守の速さの違いが、生死を分けることになったのだ。
 もしビッグタイガーの噛みつき攻撃よりレイラの魔法発動が遅ければ、レイラは攻撃を避ける立場に立たされていただろう。
 そもそもルイから身体強化魔法と支援魔法を伝授されていなければ、ビッグタイガーの攻撃より早く魔法を詠唱することが出来なかっただろう。
 そして何より、魔剣を授けてもらっていなかったら、ビッグタイガーの攻撃は弱点を見せる事のない、爪による攻撃になっていただろう。
 レイラが安堵の息を大きく吐いた時に、ルイは非情な言葉を続けた。
「では次の相手と修練してもらおうか」

魔虎:ビッグタイガー
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