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6話
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(我が聖女イザベラ。
その願い聞き届けてやろう。
だが貢物を差し出せ。
夜に三日月の刃を振るい、罪人に制裁を与えろ。
あの腐れ女と家族を、皆殺しにしろ。
だがこのままでは、その娘が夜までもたない。
だから先払いしてやろう)
イザベラは驚いていた。
今迄一度も受ける事のできなかった、神の言葉を得られたのだ。
それも明確な言葉で伝えられたのだ。
さらに言えば、自分の願いをかなえてくれるというのだ。
しかも、生贄を捧げる前に、前払いで願いをかなえてくれるというのだ。
驚かない方がおかしいのだ。
(ありがとうございます、守護神コンス様。
必ず約束を果たさせていただきます。
いえ、これからずっと守護神コンス様の命に従います。
守護神コンス様が裁くと決められた罪人を、殺させていただきます)
イザベラは直ぐにお礼を言い、さらなる約束をした。
イザベラは月神コンス様の影響を色濃く受けている。
罪人を許せない気持ち、これが生まれ持った気性で、それを月神コンスが気に入って聖女に選んだのか、聖女に選ばれたからそういう性格になったのか、それは誰にも分からない事だった。
「おねえちゃんを助けてあげるね。
貴女はこれを食べていなさい」
「おねえちゃんにあげちゃだめ?」
「心配しないで。
おねえちゃんには私が口移しで食べさせてあげるから」
イザベラは寝たきりの姉に口移しで特別なジュースを与えた。
固形物など絶対に食べられそうにない。
固形物どころか、ジュースも自力で飲める状態ではなかった。
起き上がる事すら不可能な状態だ。
だから抱き起して、ゆっくりと特別製のジュースを飲ませた。
特別製のジュースとは、暗殺のために同じ場所に数日隠れなければいけないモノ達のために、少量で身体に必要な栄養と水分を補給できるものが一つ。
もう一つは、ケガや病気で心身が衰えた時に、弱った内臓でも栄養と水分を早く補給することができる物の二つが存在していた。
今回姉の方に与えたのは、即効性の特別ジュースだった。
イザベラに神の啓示が舞い降りた。
先ほどのような具体的な言葉ではなく、一瞬のひらめきとして啓示されたのだ。
ジュースを与えながら、心の中で治癒を願えば、徐々に回復するのだ。
イザベラは神の啓示に従った。
あまりに弱り過ぎた姉の身体には、優しい治癒魔法から始めなければ、治癒魔法の衝撃で死んでしまうかもしれまかったのだ。
この点が、神性に治癒がある神と、最低限の治癒しか与えられない、治癒の神性を持たない神の差だった。
だがイザベラや妹には、神の差などどうでもよかった。
手間や時間が必要であろうと、命を助ける事ができればよかった。
慣れない細心の治療を行うイザベラの緊張は続いた。
その願い聞き届けてやろう。
だが貢物を差し出せ。
夜に三日月の刃を振るい、罪人に制裁を与えろ。
あの腐れ女と家族を、皆殺しにしろ。
だがこのままでは、その娘が夜までもたない。
だから先払いしてやろう)
イザベラは驚いていた。
今迄一度も受ける事のできなかった、神の言葉を得られたのだ。
それも明確な言葉で伝えられたのだ。
さらに言えば、自分の願いをかなえてくれるというのだ。
しかも、生贄を捧げる前に、前払いで願いをかなえてくれるというのだ。
驚かない方がおかしいのだ。
(ありがとうございます、守護神コンス様。
必ず約束を果たさせていただきます。
いえ、これからずっと守護神コンス様の命に従います。
守護神コンス様が裁くと決められた罪人を、殺させていただきます)
イザベラは直ぐにお礼を言い、さらなる約束をした。
イザベラは月神コンス様の影響を色濃く受けている。
罪人を許せない気持ち、これが生まれ持った気性で、それを月神コンスが気に入って聖女に選んだのか、聖女に選ばれたからそういう性格になったのか、それは誰にも分からない事だった。
「おねえちゃんを助けてあげるね。
貴女はこれを食べていなさい」
「おねえちゃんにあげちゃだめ?」
「心配しないで。
おねえちゃんには私が口移しで食べさせてあげるから」
イザベラは寝たきりの姉に口移しで特別なジュースを与えた。
固形物など絶対に食べられそうにない。
固形物どころか、ジュースも自力で飲める状態ではなかった。
起き上がる事すら不可能な状態だ。
だから抱き起して、ゆっくりと特別製のジュースを飲ませた。
特別製のジュースとは、暗殺のために同じ場所に数日隠れなければいけないモノ達のために、少量で身体に必要な栄養と水分を補給できるものが一つ。
もう一つは、ケガや病気で心身が衰えた時に、弱った内臓でも栄養と水分を早く補給することができる物の二つが存在していた。
今回姉の方に与えたのは、即効性の特別ジュースだった。
イザベラに神の啓示が舞い降りた。
先ほどのような具体的な言葉ではなく、一瞬のひらめきとして啓示されたのだ。
ジュースを与えながら、心の中で治癒を願えば、徐々に回復するのだ。
イザベラは神の啓示に従った。
あまりに弱り過ぎた姉の身体には、優しい治癒魔法から始めなければ、治癒魔法の衝撃で死んでしまうかもしれまかったのだ。
この点が、神性に治癒がある神と、最低限の治癒しか与えられない、治癒の神性を持たない神の差だった。
だがイザベラや妹には、神の差などどうでもよかった。
手間や時間が必要であろうと、命を助ける事ができればよかった。
慣れない細心の治療を行うイザベラの緊張は続いた。
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