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5話

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 今直ぐこのクソババアをぶち殺したい。
 本当に血の繋がった姪なのか、他人なのかはどうでもいい。
 幼い子供に客をとらせて商売するのなら、最低限のルールは守れ。
 病気にならないように予防し、病気になったら治療をしろ。
 餓えないように食事を与えろ。
 これがハミルトン伯爵から叩きこまれた鉄の掟だ!
 自由になった身でも、この掟だけは絶対に忘れない。

 だがクソババアをぶち殺す前にやらなければいけない事がある。
 虐待されているのが、この子と姉だけかどうかだ。
 この国の売春はハミルトン伯爵がしきっている。
 ハミルトン伯爵が陰で首領を務める犯罪者ギルドの収入源だ。
 闇で売春をやっているのなら、絶対に見逃す事はできない。

「きゃ、いたい」

 クソババアは邪険に女の子を突き飛ばし、玄関のドアを閉めてしまった。
 突き飛ばされた女の子は、膝をすりむいて血を流している。
 もう見ているだけではいられない。

「お嬢ちゃんどうしたの?
 お腹空いたの?
 お姉ちゃんが病気なの?」

「おねえちゃん、だれ?
 たすけてくれるの?
 わたしのおねえちゃんをたすけてくれるの?」

「ええ、助けてあげるわよ。
 だからお姉ちゃんのいる所に案内して」

 痩せ細った女の子に案内された場所は、この家の裏にあるゴミ捨て場でした。
 家の屋根裏部屋さえ与えられず、外で犬以下の状態でした。
 あまりの怒りに、眼の前が真っ暗になるくらいでした。
 私が最初に見た女の子が七歳くらい。
 ミイラかと見間違うほど痩せ衰えた、姉というのが十歳くらいに見えます。

 十歳の女の子に客をとらせていたというのか?!
 病気をうつされるほど頻繁に、客をとらされていたというのですか!
 それなのに、このような場所に、うち捨てるというのですか!
 暗殺者として、聖女として、治療の技を会得していますが、その私でも、助ける事ができないと、断念してしまうほどの状態です。

 女の子に、姉を助けると約束したというのに。
 その舌の根も乾かないうちに、助けられないと言わなければいけない。
 何と情けないことでしょう。
 私に、本当に聖女の力があれば、この姉でも助ける事ができたのに!

 なぜ私には本当の聖女の力がないのですか?!
 治療神や薬神ほどの治癒能力が欲しいわけじゃない!
 どのような神でも持っている、最低限の治癒能力でいいのです。
 その治癒能力と私の技を併せれば、この子でも治す事ができるのに。
 月神コンス様、どうか私にもっと力をください!

 月神コンス様が求められる貢物を捧げます。
 ですから、どうか、私に力を授けてください!
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