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3話

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「国王陛下!
 大変でございます!
 王城を民が取り囲んでおります!
 いかがいたしましょうか?」

「なにを騒いでおる。
 騎士団と徒士団に鎮圧させればいいであろう。
 愚かな民などそれで大人しくなるわ!」

「それが……」

「それがどうした。
 はっきり言わんか!」

「ほとんどの騎士と徒士が、王都から逃げ出してしまいました。
 王宮の下働きもほとんど逃げ出してしまいました」

「なに?!
 長年を恩を忘れおって!
 貴族に命じろ!
 貴族に命じて諸侯軍を動員しろ!」

「それが、貴族の方々も逃げ出しております。
 白昼夢で名指しされた貴族院議員の方々は、屋敷を民に囲まれて残っておられますが、とても諸侯軍をだせる余裕はないと思われます」

 私は遠見の鏡で、王宮の混乱を高みの見物させてもらっています。
 いい気味ですが、思ったほど悲惨な状況になっていません。
 私的には、民に王が嬲り殺しにされるのを期待していたのですが、思っていたほど民に危機感がないのかもしれません。
 これは少々梃入れが必要かもしれません。

「お姉様。
 あまり民に被害が及ぶことは止めていただけませんか。
 父上や母上から学んだ帝王学では、愚かな民を導くのも領主の務めです」

 父も母も甘いです。
 激甘のアマアマすぎます。
 レノヴァ叔母の、苦虫を嚙み潰したような顔が思い浮かびます。
 でも仕方ありませんね。
 私もついエレノアには甘くなってしまいます。

「仕方ないわね。
 エレノアが頼むから民を殺すのは止めておくわ。
 でも覚えておきなさい。
 多くの民を助けるために、少数の民を殺す決断をするのも、領主の役目よ。
 それが嫌なら、普段から準備をしておかないといけないの。
 どのような事態が起ころうとも、全ての民を救える力を得ようと思うのなら、不断の努力が必要なのよ」

「分かりました!
 お姉様のようにですね。
 これからはお姉様の教えの元、もっと努力することを誓います。
 ご指導宜しく御願いします」

 なんて可愛いんでしょう。
 こんな可愛いエレノアを苦しめたヤツは、絶対に許しません。
 でも直接王を痛めつける訳にはいかなくなりました。
 遠見の鏡の存在をエレノアに教えてしまったから、必ず王都の状況を見せてくれと言うはずです。

 ここは他のヤツを痛めつけるだけで我慢しておきましょう。
 貴族院裁判でエレノアを苦しめた貴族院議員の連中。
 特に貴族院議長、バルフォア侯爵ザシャト。
 こいつだけは絶対に許しません!
 領民を巻き込むと、エレノアが知った時に哀しみますから、バルフォア侯爵と一族一門を狙い打ちで殺さないといけません。
 私が直接行って痛めつけるか、魔獣を放つか、どちらにすべきでしょう?
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