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第一章

第9話:プロポーズ

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「ハインリヒ、愛しています、私と結婚してください」

 アレッタはとても焦っていた。
 密偵の報告でエクリュアが妊娠していない事が分かったのだ。
 しかもそれを隠蔽しようとして、ウッタル公爵がエクリュアを殺そうとしている。
 エクリュアが殺されてしまったら、また王太子の婚約者にされてしまう。
 そうなってしまったら、この国を捨てて逃げる以外には王太子から逃れられない。

「本気なのですか、アレッタお嬢様、私は孤児ですよ」

 最初は驚愕していたハインリヒだったが、今は真剣に私を見つめてくれている。

「本気です、王都の孤児院で初めて会った時から、ずっと恋していました。
 ハインリヒの側にいたくて、領地に孤児院を作ったのです。
 ハインリヒと結婚できるように、男爵資格を取ってもらったのです。
 どうか私と結婚してください」

「ありがとうございます、喜んでお受けさせていただきます」

 私は思わずハインリヒを抱きしめてしまいました。
 そのままキスまでしてしまいました。
 情熱的にキスした後で、そのまま父上に結婚したいと言いに行きました。
 手はハインリヒと恋人繋ぎしたまま。

「父上、私はハインリヒを愛しています、ハインリヒと結婚させてください。
 もし結婚させてくださらないのなら、家を出て他国に行って冒険者になります」

「お前はやる事は露骨すぎるのだよ。
 こうなる事はとうに分かっていたし、家臣達も気がついていた。
 中にはまだ納得していない者もいるが、大半の家臣はハインリヒの実力を認めているから、何とかなるだろう。
 よかろう、認めてやるが、ハインリヒの爵位はウィーン公爵家の従属爵位とする。
 本当ならば、ダンジョンボスを単独で斃して、王国城伯の資格を得てから結婚させたかったのだが、流石にそれはエクリュアが殺されるまでには不可能だからな」

「ありがとうございます父上、後でやっぱり駄目だはなしですよ」

「分かっている、無理矢理王太子と結婚させようとしたら、お前は躊躇わずにこの国から逃げ出してしまうだろう、そうなれば丸損だからな。
 その代わり、王妃になっていたのを補うくらいダンジョンで稼いでもらうからな」

 私は父上の許可を受けてその日のうちに結婚した。
 王家や貴族には、私とハインリヒが結婚した事実を即時知らせました。
 披露宴は後日行うとしたので、私が公爵令嬢にあるまじき失敗をしたのだと噂されるでしょうが、ハインリヒと結婚できるのなら些細な事です。
 それから六日後にエクリュアが殺されたという知らせが入りました。
 エクリュアに片想いした庭師が、妊娠して幸せそうにしている姿を見て、発狂して襲ったという筋書きでした……。
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