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第一章

第三者視点

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 王都では、ナオミに誑かされた男達が中心となって、叛乱が勃発した。
 狂気に囚われていたのだろう。
 王を弑逆しようとまでした。
 まあ、処刑されそうになった王太子から見れば、殺されそうだから仕方なくやったと言い訳できる。

 本来国王に忠誠を尽くすはずの近衛騎士の多くが、謀叛に加担した。
 最初はナオミに対する邪な獣欲が始まりだった。
 それに金と地位が加わった。
 最後に王太子を奉じる事で、大義名分が手に入った。
 名誉を得る、とまでは言えないが、少なくと自分自身への言い訳になった。

「止めて!
 こんな心算であなたを助けたわけではないわ。
 親子仲良く暮らしましょう!
 せめて殺すのは止めて。
 塔への幽閉に留めて!」

 王太子を助けた王妃は必至で王太子を止めた。
 王妃は自分の産んだ王太子が一番大切だったが、国王を憎んでいる訳ではない。
 愛情などない政略結婚だったが、長年夫婦として暮らした情はあったのだ。
 だからこそ、王太子を助けても、父親の国王を殺すという結末など想像もしていなかったのだ。

「黙っていろ!
 あいつは余を殺そうとしたんだ。
 この国の事を憂い、命懸けで正そうとした余をだ!
 生かしておけば誰かが助けて旗印にするかもしれん。
 王太妃を安全な塔に御案内しろ!」

「ダニエル!
 やめて。
 やめなさい!
 お前は母を幽閉すると言うのですか⁉
 私は貴男の命の恩人ですよ⁈
 ダニエル!
 人でなし!」

 王太子は非情だった。
 いや、冷酷や酷薄と言った方がいいかもしれない。
 処刑しようとした父親を殺そうとしているだけではなかった。
 助けてくれた母親を、自分が閉じ込められていた塔に幽閉したのだ。
 母親の事を王太妃と呼び、自分が王だと宣言していた。

 王妃は絶望していた。
 息子がここまで冷酷非情な人間だとは思っていなかったのだ。
 何より恐ろしかったのは、王太子に侍るナオミの眼だった。
 まるで王妃を豚や鼠を見るような目で見ていた。
 本能的に、殺されると直感したのだ。

 一方国王は何とか城から逃げ延びていた。
 多くの奸臣佞臣が早々に王太子に媚び諂ったが、わずかな忠臣が命懸けで護った。
 特にムーア子爵ジェイデン卿が獅子奮迅の活躍をした。
 得意の槍を縦横無尽に振るい、裏切り者の近衛騎士をを斃し、屍の山を築いた。

 だがジェイデン卿の武勇も、形勢を逆転する事はできなかった。
 もし王を護る必要がなければ、王太子を討ち取り、逆転させる事ができただろう。
 だがそうすると、王が討たれてしまう。
 王を護ることを優先すれば、王太子を討ち取る事は断念しなければいけなかった。
 王は躊躇う事なくルークのいる大魔境を目指した。
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