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第一章

1話

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「ガルシア公爵には謀叛の疑いがある!
 そのような疑惑のある家の女と婚約などできん。
 オリビアとの婚約は無効とする。
 だが王太子たる者、婚約者がなしでは色々と不便だ。
 よって、ガルシア公爵家謀叛の証拠を集めた功のある、シモンズ子爵のナオミ嬢を婚約者とする」

 一瞬意識が真っ白になりました。
 その場に崩れ落ちそうになりました。
 ですが、ここで倒れる訳にはまいりません!
 王都の屋敷には母上しかいないのです。
 ここで私が抗弁しなければ、ガルシア公爵家は潰されてしまいます。

 ですが厳しい状態でしょう。
 財務大臣を務める父上は国境の街にいます。
 兄上はその護衛として行動を共にされておられます。
 北の隣国、ベネットとの関税交渉に赴いているのです。

 宮廷魔導師を務める弟のルークは、大魔境の探索に派遣されています。
 大魔境に異変があると言う事で、急遽探索を命じられたのです。
 あまりにおかしいです。
 ガルシア公爵家に謀叛の濡れ衣を着せるために、王都から遠ざけたとしか思われません。

「王太子殿下。
 我がガルシア公爵家は王家の血を引く名門でございます。
 王家を護る藩屏と自負しております。
 それを謀叛の疑いをかけられるなど、納得いきません。
 私の事が気に食わないと申されるのでしたら、婚約破棄はお受けいたします。
 しかしガルシア公爵家の謀叛容疑は納得できません!」

 ナオミ嬢を婚約者にしたいだけなら、これで引いてくれるかもしれません。
 領地には忠誠を誓う家臣たちがいてくれます。
 兵を動かして無理矢理占領するのは、難しいと考えるはずです。
 悪女の色香に迷ったとは言え、王太子殿下にもそれくらいの分別があるはずです。

「黙れ!
 これを見よ。
 シモンズ子爵が集めた証拠の手紙じゃ。
 ベネット王国の兵を我が国に引き入れ、ネイサンが王に成らんとした手紙じゃ!」

 遠目に見ただけで父上の筆跡と違うのが分かります。
 明らかな偽手紙です。
 無理無体な言い掛かりです。

「遠目に見ただけで父の筆跡でないのが一目瞭然でございます。
 これで父の謀叛だと言うのは酷い事です」

「証拠を残さないように、家臣に代筆させたのだ。
 代筆した家臣が罪を悔いて、シモンズ子爵に全て自白した。
 ほれ、出てこい!」

 ベンジャミンです!
 ガルシア公爵家の威光を笠に、領地の民を苦しめていた大悪人です。
 美しい娘を手籠めにしたり、不当な税を課したりしたので、父が解雇したのです。
 逆恨みして、ガルシア公爵家を陥れようとしているのです。
 絶対に許せません!
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