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1話プロローグ

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「バンバル公爵家令嬢アリア。
 お前のお不貞は実の兄カスター卿と、ゾロア神殿の聖女イボンヌ嬢の証言で明らかである。
 お前のような不貞な女とは結婚できん。
 この場で婚約を破棄して追放刑とする」

「そんな!
 嘘でございます!
 間違いでございます!
 なぜそのような嘘を言われるのですか?!
 カスター兄上!
 聖女イボンヌ!」

「黙れ、黙れ、黙れ!
 バンバル公爵家の恥さらしが!
 お前のようなモノはバンバル公爵家の人間ではない!
 ライドン王太子殿下。
 お願いでございます。
 殿下に婚約破棄追放される前に、アリアがバンバル公爵家から絶縁されていたことにしてください」

 兄上が私をののしった後で、代案をお願いします。

「うむ、分かった。
 私もバンバル公爵家に汚名を着せたいわけではない。
 アリアの不貞が分かったのは、カスター卿が王家に対する忠誠心から、妹を切り捨てる覚悟をしてくれたからこそである。
 私が婚約破棄したのではなく、バンバル公爵家が不都合を起こしたアリア嬢を追放し、婚約解消を申し出たことにしてやろう」

 芝居じみています。
 どう考えても打合せしています。

「王太子殿下。
 それではバンバル公爵家の醜聞が広がってしまうかもしれません。
 ここは私が神託を受けたことにいたしましょう。
 ゾロア神からバンバル公爵家令嬢アリアに、神具の探索が命じられたことにして、何年かるか分からない神具探しを考え、王太子殿下との婚約解消を申し出てきたことにするのです」

 やはりそうです。
 聖女イボンヌが更なる代案を話します。

「おお、それがよい、それれよい。
 聞いていたな、アリア。
 お前の不貞はなかったことにしてやる。
 ありがたく思え。
 さっさと屋敷に戻ってこの国を出る準備をしろ。
 カスター卿、後は任せたぞ」

「お任せください、王太子殿下」

 私は、ずっと無罪を主張していました。
 声が枯れるほど一生懸命訴えました。
 ですが無駄でした。
 途中から分かっていた事ですが、三人の醜い笑顔を見て、改めて仕組まれた事なのだと思い知りました。

 ですが、わずかな希望にすがって、父上と母上に無実を主張しました。
 父上も母上も苦しそうな表情を浮かべるだけで、助けてはくださいませんでした。
 バンバル公爵家の当主である父上でも、いえ、当主であるからこそ、王太子殿下に正面から逆らう事ができないのでしょう。
 まして跡継ぎのカスターまでが王太子殿下の味方をして、私を陥れているのです。
 二人と争って得られるモノは王太子の憎しみだけで、王太子に気に入られている跡継ぎカスターを失うことになるのです。

 それに、この国で隠然たる勢力を持っている、ゾロア神殿を正面から敵に回すことになります。
 聖女を敵に回して戦っても排除などできません。
 私を守ってカスターを失い、王太子と聖女の憎しみを買い、ゾロア神殿を敵に回して、バンバル公爵家が生き残れるはずがないのは、私にも分かります。

「アリア。
 お前と私は負けたのだ。
 このような状態になるまで、陰謀が進んでいるのに気がつかなかった時点で、貴族としては無能なのだ。
 後は生き残る事だけを考えよう」

「はい、父上」
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