徳川慶勝、黒船を討つ

克全

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第1章

49話

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 一八五二年、徳川慶恕と徳川幕府は、準備万端整えて米国艦隊の来襲を待ち構えていた。
 国内の職人を総動員して、迎撃に必要な戦力を整えていた。
 交易利益を使って、蘭国と普国から大量の武器と軍艦を輸入した。
 英国と仏国を相手に清国内で戦い、米国と露国を仮想敵国としている徳川慶恕と徳川幕府は、普国のフリードリヒ・ヴィルヘルム四世を同盟相手と考えていた。

 一八四八年にフランスで起きた二月革命と、その一カ月後にベルリンで起きた三月革命で、普国は他の独逸諸国と共に混乱していた。
 そこに国内産業を支えるだけの莫大な武器発注があったのだ。
 徳川幕府から流れ込む銀は、普国にはなくてはならない物となり、最新式小銃ドライゼ銃を輸出するほどだった。

 徳川慶恕は、新たに交易相手となった普国と蘭国から、英国・仏国・米国・露国の情報を手に入れていた。
 米国艦隊が江戸にやってくるまでに、迎え撃つ艦艇を増産していた。
 江戸湾お台場を増やし、砲門数も増やしていた。

 特に期待していたのが、蘭国に発注し完成している七十四門プロペラスクリュー戦列艦だった。
 二隻で銀三六三五貫もの大金をつぎ込んだ、虎の子の戦列艦だった。
 この二隻が南蛮から到着すれば、遠征で補給の厳しい米国艦隊と戦う事も不可能ではなかった。

 蘭国から部品を輸入して蒸気機関を組み立てる方法も、順調に進んでいた。
 国産部品から蒸気機関を組み立てる方法も、徐々に成果を出していた。
 蘭国から部品を輸入して組み立てる方法では、八門カッターをプロペラスクリュー式の蒸気船に改造する事に成功していた。
 フリゲートや戦列艦のような、大型艦に使えるまでには至らなかったが、国難において資金を惜しむ事はできず、莫大な交易利益を投入した。

 キャンパーダウンの海戦で英国の破れた蘭国は、当時仏国に衛星国化されていいたこともあり、トラファルガーの海戦で敗れた仏国が弱腰になったせいで、植民地の大部分を英国に奪われていた。

 この恨みがあったのかもしれないが、蘭国は徳川幕府に味方して、幕府の注文で七十四門プロペラスクリュー戦列艦を建造している事を秘匿していた。
 建造自体は秘匿できないが、自国海軍用と偽っていた。
 徳川慶恕も蘭国に利を与えるため、更に新造戦列艦の建造を依頼した。
 
 排水量五七〇〇トン、八インチ砲 三十四門・三十二ポンド砲 五十六門・六十八ポンド砲一門の、九十一門二等プロペラスクリュー戦列艦を二隻、銀六四四三貫もの大金で発注していた。
 
「現有尾張藩艦隊」
八門カッター   :二百余隻
十門スクナー   :百余隻
二十四門フリゲート:七隻
三十八門フリゲート:七隻
七十四門戦列艦  :三隻
七十四門プロペラスクリュー戦列艦:二隻

「参考資料」
プロペラスクリュー式二等戦艦デファイアンス号建造費
(十一万九千四百二十二ポンド)
一ポンド二十シリング二百四十ペンス
クラウン銀貨:五シリング(銀二五・一五五二〇七グラム)
フローリン銀貨:二シリング(銀一〇・四六二一二グラム)
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