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第三章「レゼンタック」

第九十四話「海上」

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 甲板から7メートルほど浮かび上がった身体は船から海面の上まで放り出された。
 幸か不幸か、そのおかげでこの船に何が起こったのか理解する。

「あ……、あぁ……」

 やばい、高い、怖い……
 どうしよう……

「うぅ……」

 空中で身体が止まり、自由落下を始める。


「アレーン!!」

 事態に気づいたノアが船内から出てきて俺の名前を叫ぶ。

「くッ……、<雲雀>」

 俺は甲板の上に一体だけ残っていたモンスターの背に一瞬で移動し、流れ作業で片づける。
 そして、傾いた船体に足を取られながらもノアの近くに走り寄った。

「ノア、ケーブルが止まってる!」
「このままだとケーブルが切れる!!」

 ボースンの息子は何を血迷ったかケーブルを巻いているドラムにブレーキをかけた。
 おそらく船が止まっていると思い、ケーブルも同じく止めようと思ったのだろう。
 しかし、エンジンが止まっていても船は慣性によって前に動いているので、ブレーキがかかったケーブルはピンと張り、船体が後方に引っ張られしまった。

「……わかった、後ろに回るぞ」

 俺はノアを先頭に狭い通路を走り、ケーブルが海に垂れている場所に向かう。


 船体の真後ろに回ると、ボースンの息子がぐったりと倒れているのを見つけた。
 きっと先程の衝撃で頭でも打ったのだろう。

「おい、起きろ!!」

 ノアがボースンの息子の胸ぐらをゆする横で、俺はケーブルのブレーキを解除するスイッチを探す。
 しかし、電気系統が死んでいるのか目の前の機械から生気を感じない。


「……くそ」
「無理やり壊せないか見てくる」

 俺はノアにそう言い残すと、どこにブレーキがあるのか海に垂れた方の先の方から順に見ていく。
 俺の力で壊せるのかは分からないが、身軽な方が探しやすい。


 ギギギギギ……

 船が横に傾き始めた。
 これはケーブルが切れるよりも先に転覆するかもしれない。
 先程のように、船から放り出されないよう注意しよう。


「アレン!来てくれ!」

 俺はノアの声に振り向き、先程の場所まで戻る。
 ボースンの息子が目を覚ましたのだろう。


「ノア……、それ……」

 壁に寄り掛かっているボースンの息子の横で、ノアがレバーの様な物を持って立っていた。

「硬くて壊れた」

 ノアはそう言うと、持っていたレバーをその辺に放る。

「俺の短剣を付けた時みたいに直せない?」

「わからないが、やってみよう」

 俺は腰から短剣を外してノアに預ける。
 ノアは放ったレバーを拾い上げ、片膝を着きながら作業を始めた。


 ギバチンッ

 ノアが俺の短剣を甲板の上に置いて分解し始めようとした瞬間、再び奇妙な音がする。
 俺は身体が浮かび上がらないように近くの手すりにしがみついた。


 しかし次の瞬間、破断してたわんだケーブルが俺の身体に直撃し、俺は海の上に放り出された。
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