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第三章「レゼンタック」
第三十六話「アドバイス」
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「ふん……、やっぱりアレンの方が面白いな……」
ノアの目の前で地面に倒れたオニは頭部と鎖骨の下まで広範囲にえぐり取られている。
何が起こった?
槍がオニの頭を吹き飛ばしたのは分かったが、明らかに軌道がおかしかった。
おそらくそれがあの槍の特徴なのだろう。
ノアが槍のS字に湾曲している場所を握り、肩と肘と手首を内側に捩じり込みながら槍を突いていた事はかろうじて目視することができた。
そして、ノアが突いた槍は螺旋状の軌道を描きながらオニの頭部を貫通し、おそらく槍の切っ先の下に垂直についた刃がオニの鎖骨部分を広範囲に削り取ったのだろう。
ノアの関節の柔らかさもそうだが、槍の重心があんなにぶれてよく扱えるな……
「おい、アレン!」
「俺はもう戻るから報告しておけよ!」
「あ、ちょっと待って」
「一つだけいい?」
「なんだ?」
俺は足早に帰ろうとするノアを呼び止めた。
「あの壁より大きなモンスターっているの?」
仕事を初めて改めて思ったが、この辺りのモンスターの強さにあの壁はかなりオーバースペックのような気がする。
メリットよりもデメリットの方がかなり大きく、壁に反対している人がいるのも当然だ。
「そうだな……、地上にはいないんじゃないか?」
「少なくとも俺は知らないな!」
「だよね」
「そんなに心配しなくてもアレンが対応することはないから安心しろ!」
「まぁ、もし現れた時には本気を出してやるよ!」
「その時は背中を向けて一目散に逃げるから見ないよ」
「ガッハッハッハッハ!!」
「それと一つアドバイスだが、モンスターの目はあまり見るなよ!!」
「どんなに慣れた奴でもあの目には呑まれるまれるからな!」
「それだけ気を付けてればアレンなら大丈夫だ!!」
「それじゃ気を付けろよ!!」
ノアはそう言い残すと壁の方に走っていき、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
『目を見るな』か……
たしかにオニにしてもクソ鳥にしても、あの真っ黒な目は怖かったな……
アドバイスするのが遅いよ……
「アレンより指令室へ……」
俺は報告を済ませると、10秒ほどストレッチをすると任務に戻った。
「あ゛―、疲れた!」
俺は片づけを済ませ、東門からレゼンタックに足を進める。
日によってモンスターの出方にバラツキがありすぎて、嫌になる。
だがそのお陰で<ナイフ>に振ったSPの合計が100になり、新たに<体術1>、<弱点感知>を得ることができた。
<弱点感知>に関しては、モンスターは核の輪郭がうっすら光っているように見えるだけなのであまり使えない。
<体術1>は、能力としては<STA(体力)>消費が25%減るとだけスキルボードに書いてあり、あまり期待はしていなかった。
だが隠れた効果として、脳から身体へのイメージの伝達がほんの少し速くなった気がする。
この感覚は何とも形容し難いが、今後、研ぎ澄まされていくならばかなり有用な<特能>だ。
今の状況で<貧者>と<ナイフ>のSP合計がそれぞれ100ポイントになり、<貧者>にもSPを振りたいので今後は<貧者>と<ナイフ>を2対1程度の割合で振ることにする。
距離を縮める<特能>を短期間で取るのはもう諦めた。
「アレン!おそーい!」
レゼンタックに到着し、認識票を返しに階段の方へ向かおうと思ったその時、ソファーに座っていたケイに大声で呼び止められた。
ノアの目の前で地面に倒れたオニは頭部と鎖骨の下まで広範囲にえぐり取られている。
何が起こった?
槍がオニの頭を吹き飛ばしたのは分かったが、明らかに軌道がおかしかった。
おそらくそれがあの槍の特徴なのだろう。
ノアが槍のS字に湾曲している場所を握り、肩と肘と手首を内側に捩じり込みながら槍を突いていた事はかろうじて目視することができた。
そして、ノアが突いた槍は螺旋状の軌道を描きながらオニの頭部を貫通し、おそらく槍の切っ先の下に垂直についた刃がオニの鎖骨部分を広範囲に削り取ったのだろう。
ノアの関節の柔らかさもそうだが、槍の重心があんなにぶれてよく扱えるな……
「おい、アレン!」
「俺はもう戻るから報告しておけよ!」
「あ、ちょっと待って」
「一つだけいい?」
「なんだ?」
俺は足早に帰ろうとするノアを呼び止めた。
「あの壁より大きなモンスターっているの?」
仕事を初めて改めて思ったが、この辺りのモンスターの強さにあの壁はかなりオーバースペックのような気がする。
メリットよりもデメリットの方がかなり大きく、壁に反対している人がいるのも当然だ。
「そうだな……、地上にはいないんじゃないか?」
「少なくとも俺は知らないな!」
「だよね」
「そんなに心配しなくてもアレンが対応することはないから安心しろ!」
「まぁ、もし現れた時には本気を出してやるよ!」
「その時は背中を向けて一目散に逃げるから見ないよ」
「ガッハッハッハッハ!!」
「それと一つアドバイスだが、モンスターの目はあまり見るなよ!!」
「どんなに慣れた奴でもあの目には呑まれるまれるからな!」
「それだけ気を付けてればアレンなら大丈夫だ!!」
「それじゃ気を付けろよ!!」
ノアはそう言い残すと壁の方に走っていき、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
『目を見るな』か……
たしかにオニにしてもクソ鳥にしても、あの真っ黒な目は怖かったな……
アドバイスするのが遅いよ……
「アレンより指令室へ……」
俺は報告を済ませると、10秒ほどストレッチをすると任務に戻った。
「あ゛―、疲れた!」
俺は片づけを済ませ、東門からレゼンタックに足を進める。
日によってモンスターの出方にバラツキがありすぎて、嫌になる。
だがそのお陰で<ナイフ>に振ったSPの合計が100になり、新たに<体術1>、<弱点感知>を得ることができた。
<弱点感知>に関しては、モンスターは核の輪郭がうっすら光っているように見えるだけなのであまり使えない。
<体術1>は、能力としては<STA(体力)>消費が25%減るとだけスキルボードに書いてあり、あまり期待はしていなかった。
だが隠れた効果として、脳から身体へのイメージの伝達がほんの少し速くなった気がする。
この感覚は何とも形容し難いが、今後、研ぎ澄まされていくならばかなり有用な<特能>だ。
今の状況で<貧者>と<ナイフ>のSP合計がそれぞれ100ポイントになり、<貧者>にもSPを振りたいので今後は<貧者>と<ナイフ>を2対1程度の割合で振ることにする。
距離を縮める<特能>を短期間で取るのはもう諦めた。
「アレン!おそーい!」
レゼンタックに到着し、認識票を返しに階段の方へ向かおうと思ったその時、ソファーに座っていたケイに大声で呼び止められた。
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