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第二章「セントエクリーガ城下町」
第八十話「不器用」
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ピピピピピピピピ……
朝日が差し込む部屋に目覚ましの音が鳴り響く。
あれから静かに眠ろうとしたが、昨日の傷が痛んで寝られなかった。
7時前の現在でようやく呼吸に意識を向けなくて済むぐらいまでの痛みに落ち着いてきた。
隣に目を向けるとケイが布団の中でムクムクしていたので、耳元に目覚ましを移動させると、俺は顔を洗いに部屋を出た。
しばらくすると、目覚ましが止まり、ケイも部屋から出てくる。
「……」
一切の会話が生まれないまま7時を迎え、俺とケイは朝食を食べに一階に降りる。
ダイニングに行くと、朝食が用意されていた。
ヒナコはケイと話しているが、俺はそれを横目にささっと朝食を済ませると、逃げるように部屋に戻った。
しばらくするとケイも部屋に戻ってきたが、話が生まれない。
そして何もないまま8時を迎えた。
ケイはささっと支度を済ませ部屋を出たが、俺は9時にレゼンタックに行けばいいので畳の上でゴロゴロしながら時間を潰す。
ドタドタドタッ
8時5分頃になった時、誰かが部屋に近づいてくる音が聞こえた。
ヒナコかと思ったが、ドアを開けたのはケイだった。
「……鍵」
ケイはそう言いながら机の上に置いてある鍵を指差す。
俺がケイに向かって鍵を放り投げると、それをケイは慌ただしく受け取った。
今日は遅くなる予定はないので、鍵はどちらが持っていてもいい。
俺は再び畳の上で横なっていると、ケイは鍵を受け取ったまま部屋を出ていかない。
「……行かないの?」
しばらくして、ケイは顔をうつむけながら口を開いた。
「いや、俺は……」
「そうだね、ちょっと待ってて」
俺はグローブをポケットに入れ、赤い花を一本ズボンに挟み、ポーチを取って部屋を出た。
ケイは部屋の鍵を閉めると、俺を追い越して階段を下りて行く。
玄関ではヒナコが見送るために待っていてくれた。
ケイは既に準備を済ませて外に出ていたので、俺は急いで靴を履いて立ち上がる。
「いってらっしゃい!」
無言で玄関を後にしようとした俺の背中にヒナコの声が響いた。
「……いってきます」
俺はわき腹に痛みを感じながら返事を返し、ヒナコの宿を後にした。
ケイの時間が迫っているので、少し早歩きでレゼンタックに向かう。
俺は歩きながらポケットに入れたグローブを取り出し、左手だけはめる。
外出する時は食事中を除いて一応、指輪は隠しておいた方がいいだろう。
それにしても今日はいい天気だ。
昨日小雨が降ったからなのか空気も澄んでいる。
俺とケイの間には重い空気が流れているが、ケイは俺のパーカーの裾を軽くつまんでいる。
昨日はあんなに汚れていたパーカーは、ヒナコの手により新品同様だ。
「ケイ、昼ご飯はどうしてる?」
「お金、渡しといたほうがいい?」
レゼンタックが見えてきた頃、俺はケイに話しかけた。
流石に、これだけは確認しといたほうがいい。
「大丈夫だよ」
ケイは小さな声で返事をする。
レゼンタックに入ると、中はかなり混んでいた。
しかしケイは俺から手を放し、慣れた足取りで人混みをかき分けて、あっという間にいなくなってしまった。
俺は一瞬心配したものの、気にせず4階に向かった。
朝日が差し込む部屋に目覚ましの音が鳴り響く。
あれから静かに眠ろうとしたが、昨日の傷が痛んで寝られなかった。
7時前の現在でようやく呼吸に意識を向けなくて済むぐらいまでの痛みに落ち着いてきた。
隣に目を向けるとケイが布団の中でムクムクしていたので、耳元に目覚ましを移動させると、俺は顔を洗いに部屋を出た。
しばらくすると、目覚ましが止まり、ケイも部屋から出てくる。
「……」
一切の会話が生まれないまま7時を迎え、俺とケイは朝食を食べに一階に降りる。
ダイニングに行くと、朝食が用意されていた。
ヒナコはケイと話しているが、俺はそれを横目にささっと朝食を済ませると、逃げるように部屋に戻った。
しばらくするとケイも部屋に戻ってきたが、話が生まれない。
そして何もないまま8時を迎えた。
ケイはささっと支度を済ませ部屋を出たが、俺は9時にレゼンタックに行けばいいので畳の上でゴロゴロしながら時間を潰す。
ドタドタドタッ
8時5分頃になった時、誰かが部屋に近づいてくる音が聞こえた。
ヒナコかと思ったが、ドアを開けたのはケイだった。
「……鍵」
ケイはそう言いながら机の上に置いてある鍵を指差す。
俺がケイに向かって鍵を放り投げると、それをケイは慌ただしく受け取った。
今日は遅くなる予定はないので、鍵はどちらが持っていてもいい。
俺は再び畳の上で横なっていると、ケイは鍵を受け取ったまま部屋を出ていかない。
「……行かないの?」
しばらくして、ケイは顔をうつむけながら口を開いた。
「いや、俺は……」
「そうだね、ちょっと待ってて」
俺はグローブをポケットに入れ、赤い花を一本ズボンに挟み、ポーチを取って部屋を出た。
ケイは部屋の鍵を閉めると、俺を追い越して階段を下りて行く。
玄関ではヒナコが見送るために待っていてくれた。
ケイは既に準備を済ませて外に出ていたので、俺は急いで靴を履いて立ち上がる。
「いってらっしゃい!」
無言で玄関を後にしようとした俺の背中にヒナコの声が響いた。
「……いってきます」
俺はわき腹に痛みを感じながら返事を返し、ヒナコの宿を後にした。
ケイの時間が迫っているので、少し早歩きでレゼンタックに向かう。
俺は歩きながらポケットに入れたグローブを取り出し、左手だけはめる。
外出する時は食事中を除いて一応、指輪は隠しておいた方がいいだろう。
それにしても今日はいい天気だ。
昨日小雨が降ったからなのか空気も澄んでいる。
俺とケイの間には重い空気が流れているが、ケイは俺のパーカーの裾を軽くつまんでいる。
昨日はあんなに汚れていたパーカーは、ヒナコの手により新品同様だ。
「ケイ、昼ご飯はどうしてる?」
「お金、渡しといたほうがいい?」
レゼンタックが見えてきた頃、俺はケイに話しかけた。
流石に、これだけは確認しといたほうがいい。
「大丈夫だよ」
ケイは小さな声で返事をする。
レゼンタックに入ると、中はかなり混んでいた。
しかしケイは俺から手を放し、慣れた足取りで人混みをかき分けて、あっという間にいなくなってしまった。
俺は一瞬心配したものの、気にせず4階に向かった。
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