レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
60 / 244
第二章「セントエクリーガ城下町」

第二十三話「買い物」

しおりを挟む
 夕飯が終わり、片づけられたテーブルの上にはドーナツとイチゴが並べられていた。

 俺は、イチゴを一つ取り口に放り込む。

 味は……まぁ普通だ。

「あ、お風呂の事言ってなかった!」
「えっと、お湯は19時から22時までしか出ないからお風呂はその間に入ってね!」
「一応、男女は時間別に分かれてるんだけど、アレンさんとケイちゃんしかいないから好きに入っちゃっていいですよ!」
「私は隙を見て入っちゃうので!」
「場所はそこを出てすぐ、階段の下の廊下を進んだ所ね!」

 ヒナコはドーナツ片手に慌てて説明する。

 時計を確認すると6時40分頃を差していた。

「……ここら辺のお店っていつぐらいに閉まるの?」
「歯ブラシとかタオルとか買いに行きたいんだけど」

 俺は足りないものをふと思い出し、立ち上がった。

「んー、大体10時頃には閉まっちゃうかな」
「買い物するなら、ここを出て左にずっと真っすぐ行った所に[GROCERIES]って大きく書いてあるところで買えるよ」
「一緒に行こうか?」

 ヒナコは説明しながら立ち上がる。

「ううん、大丈夫」
 
 俺はそう言い残しダイニングを後にする。

 ケイはエプロンを着けたままイチゴを片手にテレビに夢中になっていたので、ほっといても大丈夫だろう。

「あ、バスタオルは貸してあげるから買わなくていいよ!」
「それと甦人の登録証持って行ってね!」
「たぶん割引になるから!」

 俺がダイニングの引き戸を閉めようとするとヒナコが大きな声で教えてくれる。

 俺は風呂場に続く薄暗い廊下をチラッと確認してから階段を上り部屋に戻った。


 スーツを羽織り、ポケットに登録証が入っていることを確認する。
 そして、机の上に置いてあったお金の入った袋を取り、部屋を後にした。


 階段を降り、玄関で靴を履かずにダイニングに向かう。

 ガラガラガラ

「ドーナツ残しといてね」

 俺は引き戸に手をかけながら二人に念を押しておく。

 あと二つぐらいは食べたい……

「わかってるって!」

 ヒナコは返事をしたが、ケイは返事をせずテレビから目を離さない。

「……」

 俺は二人を信じて部屋を後にした。


 玄関で靴を履き外に出ると、ヒナコに言われた通り左に進む。

 この通りは大通りから2本外れているので、夜になると少しだけ不安になる。
 昼間と比べて人通りはかなり減り、街灯に照らされた公衆電話が目立っていた。


 しばらく歩くと[GROCERIES]と大きく書かれた看板を見つけた。

 店内はコンビニほどの大きさで食料品が多く売られている。


「傘……まだいいか」
「とりあえず歯ブラシ2つと、歯磨き粉……タオルも一応2つ買っておくか」
「歯ブラシはどこに置こう……少し高いけど歯ブラシ置き買うか……」
「ティッシュは2つで1セットか……まぁいい」
「水……2Lの方が安いか……でも500mlを2つの方が良いよな……」
「お菓子は絶対いらない」

「……とりあえずこんなもんかな」
「かご使えば良かった」

 俺はぶつぶつと独り言を呟きながら商品を選び、それを両手で抱え込みんでレジに進んだ。

 ティッシュが一番高く、12ギニーもした事もそうだが、レジの機械があるのには驚いた。


 グシャ、ピッ……グシャ、ピッ……ガシャ、ピッ……

「……82ギニー」

 不愛想な店員が威圧的に金額を提示する。

 俺はすかさず登録証を内ポケットから取り出した。

「……チッ、57ギニーだ」

 俺は財布から60ギニーを素早く取りだし、お釣りを[LEAVE-A-GUINEY,TAKE-A-GUINEY]と書いてあるプラスチック製のトレイにそっと置くと、商品の入った紙袋を受け取り、素早く店を出た。

 ちょっと怖かった……
 今度からは最初に登録証を呈示しよう。


 小さな街灯に照らされた薄暗い静かな道をコツコツと不協和音を鳴らしながら歩く。


「……何やってるんだろう」

 俺は少し遠回りをしてアパートに戻った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

ランク外の最弱職スマホマスターが実は最強だった話。

飛燕 つばさ
ファンタジー
この世界では、成人を迎えるとジョブを授かる。戦士や魔法使い。上位ジョブでは、剣聖や賢者も存在する。 主人公のヒビキは、これまで聞いたことのないジョブである『スマホマスター』のジョブを手にする。スマホマスターは謎が多いため、ランク外の最弱職と呼ばれていた。希望を持って王都までやって来たヒビキは、この事実に絶望する。 しかし、このスマホマスターは謎に包まれていただけで、実際には強力な能力を秘めていたのであった。ヒビキは、スマホマスターの能力で戦姫と呼ばれる強力なゲームキャラクターを顕現させて戦わせたり、それ以外の素晴らしい能力に目覚めていく…。

喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~

中島健一
ファンタジー
[ルールその1]喜んだら最初に召喚されたところまで戻る [ルールその2]レベルとステータス、習得したスキル・魔法、アイテムは引き継いだ状態で戻る [ルールその3]一度経験した喜びをもう一度経験しても戻ることはない 17歳高校生の南野ハルは突然、異世界へと召喚されてしまった。 剣と魔法のファンタジーが広がる世界 そこで懸命に生きようとするも喜びを満たすことで、初めに召喚された場所に戻ってしまう…レベルとステータスはそのままに そんな中、敵対する勢力の魔の手がハルを襲う。力を持たなかったハルは次第に魔法やスキルを習得しレベルを上げ始める。初めは倒せなかった相手を前回の世界線で得た知識と魔法で倒していく。 すると世界は新たな顔を覗かせる。 この世界は何なのか、何故ステータスウィンドウがあるのか、何故自分は喜ぶと戻ってしまうのか、神ディータとは、或いは自分自身とは何者なのか。 これは主人公、南野ハルが自分自身を見つけ、どうすれば人は成長していくのか、どうすれば今の自分を越えることができるのかを学んでいく物語である。 なろうとカクヨムでも掲載してまぁす

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...