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第3章
第25話
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頭を整理する必要がある。
そう考えた月日は、生徒会室でぼっちめしすることにした。
今朝立てた『自分は累のことが好きかもしれない』という仮説について、じっくり胸の中で落とし込む必要がある。
もしかすると、検証と証明までしないといけない。
(ワタシが累のこと好きになる……今まで考えもしなかったわ)
ずっとこの胸のもやもやは、累に好かれていることに対するものだと思っていた。
まさか、逆かもしれないだなんて――……。
誰もいない生徒会室で携帯電話を取り出すと、フォルダーにまとめてある、とびっきり可愛いはるるんの写真を見た。
「ああ、落ち着く……なんて可愛いのかしら、はるるん」
月日が思うかわいい女の子代表のはるるんと、累は似ても似つかない。
そもそも、はるるんは小柄な小動物系女子だが、累はモデルのように高身長でスレンダー。
はるるんは茶髪のくせっけでふわふわ系だが、累は黒髪のストレートだ。
「そうよ、そう。ワタシの思い違いよね、きっと。だってタイプが全然ちがうもの!」
「…………なにを一人で、叫んでいるんですか?」
「きゃあああああああああああああああっ!」
突然、声をかけられて月日は盛大に悲鳴を上げた。
それに累はあきれたを通り越して、半眼で月日をにらむ。
「先輩、私ですから」
「るるるるるるるる累! いつからいたのよっ! いたなら声かけてよっ! いきなり驚くじゃないのっ!」
「今来たから声かけたんです」
累は生徒会室に入ってくると、鞄を机に置いた。
「人の顔見て悲鳴出す癖、直んないんですかね」
オバケじゃないのに、と累は迷惑そうだ。彼女の足元に違和感を覚えて、月日は累の靴を見た。
「累、上履きはどうしたの?」
訊ねられた累は「ああ」と言いながら椅子に腰をおろす。
「なくなっていました。どこかから出てくるでしょう、そのうち」
月日は嫌な予感がした。
「……まさか、誰かに?」
「さあ。でも、靴箱にしまい忘れた覚えはないです。上履きが勝手に歩いていったのなら別ですけど」
「もしかしてイジメなんじゃ……?」
月日は慌てて累に駆け寄った。
累はどこ吹く風でお弁当箱を取り出し、ご飯を食べようとしている。隣に座って、月日は累を覗き込む。
「累ってば」
「どうなんですかね。今どき上履きを持っていくのとか、幼稚すぎません?」
「笑えないわよっ!」
月日は累の腕を掴んだ。掴まれた累は、驚いて目を見開く。
「いつからなの、他になにかされてない? もしかしてワタシのせい……?」
「先輩、痛いです」
力強く累の腕を掴んでいることに気づき、月日はパッと手を放す。
「きゃあ! ごめんなさい! つい……」
累は一瞬だけ困ったような顔をしたが、月日の表情を見ると口を開いた。
「最近ですね、上履きがちょこちょこなくなるのは。机の中にいれっぱなしにしていた教科書に落書きされていたので、それ以来ロッカーに入れています」
「生徒会に入ってから……やっぱり、ワタシと一緒にいるから……!?」
「あ、そうか。上履きもロッカーに入れればいいんだ」
累は思いついた、とポンと手を打つと、嬉しそうに弁当を食べ始める。困っているけれど、それほどではないし気にしていない様子だ。
「……累、あなた大丈夫なの?」
「先輩も食べないと、休み時間終わっちゃいますよ?」
月日はあきれてため息を吐いた。月日は今度は優しく、累の手に自分の手を重ねた。
「あのね、累。ワタシは、ワタシと一緒にいることで、あなたが嫌な思いをしているんじゃないか心配なの」
照り焼きチキンを飲み込むと、累は頷いた。
「心配していただき、ありがとうございます。でも、嫌な思いはしていません。していたら、こうして生徒会室にお菓子をもらいに来ません」
「でも、上履きや落書きの件は」
「十条先輩がやったわけじゃないでしょ?」
累は「麦茶をください」と月日に要求する。
月日が麦茶を手渡すと、累はそれを気持ちよく飲み干した。
そう考えた月日は、生徒会室でぼっちめしすることにした。
今朝立てた『自分は累のことが好きかもしれない』という仮説について、じっくり胸の中で落とし込む必要がある。
もしかすると、検証と証明までしないといけない。
(ワタシが累のこと好きになる……今まで考えもしなかったわ)
ずっとこの胸のもやもやは、累に好かれていることに対するものだと思っていた。
まさか、逆かもしれないだなんて――……。
誰もいない生徒会室で携帯電話を取り出すと、フォルダーにまとめてある、とびっきり可愛いはるるんの写真を見た。
「ああ、落ち着く……なんて可愛いのかしら、はるるん」
月日が思うかわいい女の子代表のはるるんと、累は似ても似つかない。
そもそも、はるるんは小柄な小動物系女子だが、累はモデルのように高身長でスレンダー。
はるるんは茶髪のくせっけでふわふわ系だが、累は黒髪のストレートだ。
「そうよ、そう。ワタシの思い違いよね、きっと。だってタイプが全然ちがうもの!」
「…………なにを一人で、叫んでいるんですか?」
「きゃあああああああああああああああっ!」
突然、声をかけられて月日は盛大に悲鳴を上げた。
それに累はあきれたを通り越して、半眼で月日をにらむ。
「先輩、私ですから」
「るるるるるるるる累! いつからいたのよっ! いたなら声かけてよっ! いきなり驚くじゃないのっ!」
「今来たから声かけたんです」
累は生徒会室に入ってくると、鞄を机に置いた。
「人の顔見て悲鳴出す癖、直んないんですかね」
オバケじゃないのに、と累は迷惑そうだ。彼女の足元に違和感を覚えて、月日は累の靴を見た。
「累、上履きはどうしたの?」
訊ねられた累は「ああ」と言いながら椅子に腰をおろす。
「なくなっていました。どこかから出てくるでしょう、そのうち」
月日は嫌な予感がした。
「……まさか、誰かに?」
「さあ。でも、靴箱にしまい忘れた覚えはないです。上履きが勝手に歩いていったのなら別ですけど」
「もしかしてイジメなんじゃ……?」
月日は慌てて累に駆け寄った。
累はどこ吹く風でお弁当箱を取り出し、ご飯を食べようとしている。隣に座って、月日は累を覗き込む。
「累ってば」
「どうなんですかね。今どき上履きを持っていくのとか、幼稚すぎません?」
「笑えないわよっ!」
月日は累の腕を掴んだ。掴まれた累は、驚いて目を見開く。
「いつからなの、他になにかされてない? もしかしてワタシのせい……?」
「先輩、痛いです」
力強く累の腕を掴んでいることに気づき、月日はパッと手を放す。
「きゃあ! ごめんなさい! つい……」
累は一瞬だけ困ったような顔をしたが、月日の表情を見ると口を開いた。
「最近ですね、上履きがちょこちょこなくなるのは。机の中にいれっぱなしにしていた教科書に落書きされていたので、それ以来ロッカーに入れています」
「生徒会に入ってから……やっぱり、ワタシと一緒にいるから……!?」
「あ、そうか。上履きもロッカーに入れればいいんだ」
累は思いついた、とポンと手を打つと、嬉しそうに弁当を食べ始める。困っているけれど、それほどではないし気にしていない様子だ。
「……累、あなた大丈夫なの?」
「先輩も食べないと、休み時間終わっちゃいますよ?」
月日はあきれてため息を吐いた。月日は今度は優しく、累の手に自分の手を重ねた。
「あのね、累。ワタシは、ワタシと一緒にいることで、あなたが嫌な思いをしているんじゃないか心配なの」
照り焼きチキンを飲み込むと、累は頷いた。
「心配していただき、ありがとうございます。でも、嫌な思いはしていません。していたら、こうして生徒会室にお菓子をもらいに来ません」
「でも、上履きや落書きの件は」
「十条先輩がやったわけじゃないでしょ?」
累は「麦茶をください」と月日に要求する。
月日が麦茶を手渡すと、累はそれを気持ちよく飲み干した。
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