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白無垢姿は、クラシカルに
第57話
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この界隈における最強の変態妖怪オタク水瀬雪という奇人は、美人で学校一の美少女と噂されているのにもかかわらず、中身は大変残念である。
当の本人はどう呼ばれようが、どう思われようが、一向に毛の生えた心臓のせいで気にしない。現代日本においては絶滅危惧種扱いともいえる強靭な自己というものを持ち合わせており、どんな男が寄って来ようが、陰で変人と言われようが、至って真面目冷静にどこ吹く風である。
そんな剛毛がたっぷりと生えた鉄製の心臓を持つ彼女においても、やっぱり弱点はあって、それはまさしく〈妖怪〉である。
妖怪のことになると、本当に熱心に話し始めてしまい、というかむしろ妖怪のことしか頭にないのではないかと思われるほどに妖怪ギークだ。それなのに、不思議と女友達は多く、人には好かれるタイプらしい。
しかし残念なことに、妖怪がいくら好きでも妖怪の姿を見ることも声を聞くことも叶わない。そのために、金ぴかの大仏様曰く、俺という人間と巡り合わせたらしい。大変に迷惑であり、その巡り合わせのせいで、俺の日常はことごとく狂いまくって、今や軌道修正をすることさえ叶わない。
かくいう俺はというと妖怪を目に映し、さらには声まで聞こえるという変わり者である。そのために、不思議な言動が多かった幼少期から変人奇人と呼ばれ、性善説に則った純粋な美しい心は、東大寺の大仏池に放り投げて捨ててしまって成長した。今頃は鯉のえさになってしまっていることだろう。
そんなこんなでなぜか妖怪にばかり好かれているために、人間の友達とはうまが合わない。気がつけばいつも周りにいるのは、妖怪か妖怪の端くれと思われる鬼ばばの母親と妹。そして空気のようにまろやかな、ともすれば休日に家にいるのかどうかさえ怪しげな朧気な存在感と雰囲気の父親だけである。
そんなでこぼこの俺と水瀬が出会って、早くも二か月以上が経っており、季節は真夏を過ぎ去ったのにもかかわらず相変わらずうだるような暑さの日々が続いている。
実はこの鹿が人よりたくさん住まうと言われている界隈では、かき氷も大変に有名になりつつあり、色々な店が創意工夫を凝らしたかき氷を提供している。
涼を求めて食べたいなと思い、哲学的思考を思いめぐらせている俺を覗き込んだのは、いつの間にやら実家に上がり込んで、まるで自分の部屋かと思う如くに俺の部屋を占拠しつつある水瀬であった。
このままでは俺の純情が奪われ、さらに言えばプライバシーさえ保証されない生活になりかねない片鱗が見え隠れしている。
そしてもはや、家の使われていない離れに、水瀬と二人で住んでしまえばいいという民子の恐ろしい呪いまでかけられそうになりつつあるので、俺は部屋に鍵でもかけたい気分である。鍵をかけたところで窓が開いているので、そこから入り込まれるのが落ちなのだが。
「飛鳥。今回はここ、行きたい」
突如顔を覗き込んできた美少女の顔にうっとりできたのは、出会って最初の二時間のみだ。後はもう、美少女の皮を被った変態妖怪としか認識できなくなってしまった我が理解力の高い脳みそを憐れみたい。
しかも、美少女に見慣れてしまったので、そん所そこいらの女子やアイドルを見てもその造形が可愛いと思えなくなってしまった。それは、水瀬と出会ってから俺が失ってしまったたくさんの色々の中でも、とりわけ大きなものの一つのように感じている。うらめしや。
当の本人はどう呼ばれようが、どう思われようが、一向に毛の生えた心臓のせいで気にしない。現代日本においては絶滅危惧種扱いともいえる強靭な自己というものを持ち合わせており、どんな男が寄って来ようが、陰で変人と言われようが、至って真面目冷静にどこ吹く風である。
そんな剛毛がたっぷりと生えた鉄製の心臓を持つ彼女においても、やっぱり弱点はあって、それはまさしく〈妖怪〉である。
妖怪のことになると、本当に熱心に話し始めてしまい、というかむしろ妖怪のことしか頭にないのではないかと思われるほどに妖怪ギークだ。それなのに、不思議と女友達は多く、人には好かれるタイプらしい。
しかし残念なことに、妖怪がいくら好きでも妖怪の姿を見ることも声を聞くことも叶わない。そのために、金ぴかの大仏様曰く、俺という人間と巡り合わせたらしい。大変に迷惑であり、その巡り合わせのせいで、俺の日常はことごとく狂いまくって、今や軌道修正をすることさえ叶わない。
かくいう俺はというと妖怪を目に映し、さらには声まで聞こえるという変わり者である。そのために、不思議な言動が多かった幼少期から変人奇人と呼ばれ、性善説に則った純粋な美しい心は、東大寺の大仏池に放り投げて捨ててしまって成長した。今頃は鯉のえさになってしまっていることだろう。
そんなこんなでなぜか妖怪にばかり好かれているために、人間の友達とはうまが合わない。気がつけばいつも周りにいるのは、妖怪か妖怪の端くれと思われる鬼ばばの母親と妹。そして空気のようにまろやかな、ともすれば休日に家にいるのかどうかさえ怪しげな朧気な存在感と雰囲気の父親だけである。
そんなでこぼこの俺と水瀬が出会って、早くも二か月以上が経っており、季節は真夏を過ぎ去ったのにもかかわらず相変わらずうだるような暑さの日々が続いている。
実はこの鹿が人よりたくさん住まうと言われている界隈では、かき氷も大変に有名になりつつあり、色々な店が創意工夫を凝らしたかき氷を提供している。
涼を求めて食べたいなと思い、哲学的思考を思いめぐらせている俺を覗き込んだのは、いつの間にやら実家に上がり込んで、まるで自分の部屋かと思う如くに俺の部屋を占拠しつつある水瀬であった。
このままでは俺の純情が奪われ、さらに言えばプライバシーさえ保証されない生活になりかねない片鱗が見え隠れしている。
そしてもはや、家の使われていない離れに、水瀬と二人で住んでしまえばいいという民子の恐ろしい呪いまでかけられそうになりつつあるので、俺は部屋に鍵でもかけたい気分である。鍵をかけたところで窓が開いているので、そこから入り込まれるのが落ちなのだが。
「飛鳥。今回はここ、行きたい」
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しかも、美少女に見慣れてしまったので、そん所そこいらの女子やアイドルを見てもその造形が可愛いと思えなくなってしまった。それは、水瀬と出会ってから俺が失ってしまったたくさんの色々の中でも、とりわけ大きなものの一つのように感じている。うらめしや。
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