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第三章
不器用な愛
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藍を探すためにいろんなところを走り回った。
何故か綺月に背中を押されて、頑張れる気がした。
……自分の気持ちをはっきりさせたいって。
いつの間にかさっき綺月と話していた場所に来ていた。綺月は帰ったのか気になって、辺りを見渡していたら、
「バカだな…」
ぼそっと弱々しい声が綺月の方から聞こえてきた。
え?と、
ふり返るとそこには涙を我慢している綺月の姿が。
屋根があるベンチに腰を掛けながら、下を向いていた。
いつもこんな顔をしている時は、何か自分1人で背負って、何かを我慢している時で…
「……自分だけ幸せになれないって思ってたのかな?あの子のところに行きたくても、私に悪くて出来ない」
綺月はさっきまで我慢していた涙がふと溢れていた。
「弘大は今までさんざん我慢してきた。もう、これ以上弘大が誰かのために我慢する必要はない…」
それを我慢するように唇をぎゅっと噛み締めていた。
「本当に好きなあの子と、藍と幸せになったらいいの」
ーえ?
それって、まさか……綺月はまだ俺の事…
『今は何とも思ってないよ?……幼なじみとしか』
『だからさ、あの子のところに迷わずに行って」
あの時も俺の背中を押すために全部嘘をついたんだ。
なんで、あんな無茶なことを…...
きっと苦しかったはずなのに、俺のために…
でも、考えても考えても、正しい答えが見つからない。
真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる人と、
『先輩の事が………好きです!』
俺の幸せを願って背中を押してくれる人。
『本当に好きなあの子と、藍と幸せになったらいいの』
2人とも大事な人だから傷つけたくない。
『先輩が好き!先輩が好きです!』
『昔から、弘大の事が大好きだから』
だけど、このまま答えを決めなくていいわけない。
『先輩も、正直な気持ちになって、伝えてほしいです』
『弘大、自分の気持ちに正直になって』
『私、先輩の事信じてます』
『……弘大は私を選んでくれるって、信じてるから』
もしも、あいつへの想いが許されるなら。
『先輩!』
もしも、この想いが許されるなら。
『弘大!』
俺は、あいつを失いたくない!
『先輩の事が………好きです!』
『……私、ずっと前から弘大の事が好きだった』
───────────────────────
ーピロン
カバンの中から突然携帯の音がなった。
誰からメールが来たのだろうと、携帯を開けてみると、
「宮坂さん、神社のところで待っています」
と、夜白先輩からだった。
「宮坂さん」
「夜白先輩...」
「宮坂さんは弘大の事が好きなんだよね?」
「はい」
「なら良かった」
ーえ?
先輩はどこか吹っ切れたかのように、私の方に背を向け、屋台が立ち並ぶ方を見た。
「ごめんね。宮坂さんと弘大の間に入るような事しちゃって。でも、あなたがライバルで良かった」
先輩はそれでも背を向けたまま。
何を伝えたいのか、全く分からない...
けど、何でこの言葉を先輩は言うの?
まだ分からないのに......
ーグイッ
と、先輩の浴衣の裾を引っ張る。
「まだ真山先輩の事、好きなんですよね?」
勢いだったけど、先輩は屋台の方に向けていた視線を、私の方にやっと向けてくれた。
「私は、弘大の事...」
と、先輩は私と目が合っても視線を逸らした。
「もう、好きじゃないから」
屋台の方を見ていた時、悲しそうに見えていた先輩の横顔が頭の中を遮る。
「それ、私の目を見て言ってくださいよ!」
まだきっと先輩の事好きなはずなのに、何で?
「......ごめんね。ちょっと、頭を冷やしてくる」
先輩は神社から離れようとした瞬間、一粒の涙がこぼれ落ちたのを見逃さなかった。
「先輩!」
腕を掴もうとしたけど、掴みきれなくて、先輩は人混みの中に紛れるように走って行った。
追いかけなくちゃ、追いかけなくちゃいけないのに......でも、追いかけたところで何て言うの?
───────────────────────
弘大の恋を応援する。
そう決めて、宮坂さんに弘大の事は好きじゃないよ。
って、そう......はっきり言おうと思ったのに...
「私は弘大の事...もう、好きじゃないから」
どうしても自分の気持ちに嘘がつけなかった。
はっきりと。
「それ、私の目を見て言ってくださいよ!」
そう、言われたらどうしたらいいのか分からなくて.....
さっき決意した気持ちが揺るぎ始めていて、
「......ごめんね。ちょっと、頭を冷やしてくる」
あの子の真っ直ぐなところを見ていたら、眩しくて、自分も反射されられそうで......怖かった。
ふと一粒の涙がこぼれ落ちてしまって、
「先輩!」
と、呼び止められそうになったけど、もう私にはどうしたらいいのか分からないと、人混みの中に紛れ込んだ。
あの子に弘大の事は好きじゃないって、はっきり言わないといけないのに......
どうして自分の気持ちに嘘がつけないの?
弘大はあの子が好きって、知ってるのに...
何故か綺月に背中を押されて、頑張れる気がした。
……自分の気持ちをはっきりさせたいって。
いつの間にかさっき綺月と話していた場所に来ていた。綺月は帰ったのか気になって、辺りを見渡していたら、
「バカだな…」
ぼそっと弱々しい声が綺月の方から聞こえてきた。
え?と、
ふり返るとそこには涙を我慢している綺月の姿が。
屋根があるベンチに腰を掛けながら、下を向いていた。
いつもこんな顔をしている時は、何か自分1人で背負って、何かを我慢している時で…
「……自分だけ幸せになれないって思ってたのかな?あの子のところに行きたくても、私に悪くて出来ない」
綺月はさっきまで我慢していた涙がふと溢れていた。
「弘大は今までさんざん我慢してきた。もう、これ以上弘大が誰かのために我慢する必要はない…」
それを我慢するように唇をぎゅっと噛み締めていた。
「本当に好きなあの子と、藍と幸せになったらいいの」
ーえ?
それって、まさか……綺月はまだ俺の事…
『今は何とも思ってないよ?……幼なじみとしか』
『だからさ、あの子のところに迷わずに行って」
あの時も俺の背中を押すために全部嘘をついたんだ。
なんで、あんな無茶なことを…...
きっと苦しかったはずなのに、俺のために…
でも、考えても考えても、正しい答えが見つからない。
真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる人と、
『先輩の事が………好きです!』
俺の幸せを願って背中を押してくれる人。
『本当に好きなあの子と、藍と幸せになったらいいの』
2人とも大事な人だから傷つけたくない。
『先輩が好き!先輩が好きです!』
『昔から、弘大の事が大好きだから』
だけど、このまま答えを決めなくていいわけない。
『先輩も、正直な気持ちになって、伝えてほしいです』
『弘大、自分の気持ちに正直になって』
『私、先輩の事信じてます』
『……弘大は私を選んでくれるって、信じてるから』
もしも、あいつへの想いが許されるなら。
『先輩!』
もしも、この想いが許されるなら。
『弘大!』
俺は、あいつを失いたくない!
『先輩の事が………好きです!』
『……私、ずっと前から弘大の事が好きだった』
───────────────────────
ーピロン
カバンの中から突然携帯の音がなった。
誰からメールが来たのだろうと、携帯を開けてみると、
「宮坂さん、神社のところで待っています」
と、夜白先輩からだった。
「宮坂さん」
「夜白先輩...」
「宮坂さんは弘大の事が好きなんだよね?」
「はい」
「なら良かった」
ーえ?
先輩はどこか吹っ切れたかのように、私の方に背を向け、屋台が立ち並ぶ方を見た。
「ごめんね。宮坂さんと弘大の間に入るような事しちゃって。でも、あなたがライバルで良かった」
先輩はそれでも背を向けたまま。
何を伝えたいのか、全く分からない...
けど、何でこの言葉を先輩は言うの?
まだ分からないのに......
ーグイッ
と、先輩の浴衣の裾を引っ張る。
「まだ真山先輩の事、好きなんですよね?」
勢いだったけど、先輩は屋台の方に向けていた視線を、私の方にやっと向けてくれた。
「私は、弘大の事...」
と、先輩は私と目が合っても視線を逸らした。
「もう、好きじゃないから」
屋台の方を見ていた時、悲しそうに見えていた先輩の横顔が頭の中を遮る。
「それ、私の目を見て言ってくださいよ!」
まだきっと先輩の事好きなはずなのに、何で?
「......ごめんね。ちょっと、頭を冷やしてくる」
先輩は神社から離れようとした瞬間、一粒の涙がこぼれ落ちたのを見逃さなかった。
「先輩!」
腕を掴もうとしたけど、掴みきれなくて、先輩は人混みの中に紛れるように走って行った。
追いかけなくちゃ、追いかけなくちゃいけないのに......でも、追いかけたところで何て言うの?
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弘大の恋を応援する。
そう決めて、宮坂さんに弘大の事は好きじゃないよ。
って、そう......はっきり言おうと思ったのに...
「私は弘大の事...もう、好きじゃないから」
どうしても自分の気持ちに嘘がつけなかった。
はっきりと。
「それ、私の目を見て言ってくださいよ!」
そう、言われたらどうしたらいいのか分からなくて.....
さっき決意した気持ちが揺るぎ始めていて、
「......ごめんね。ちょっと、頭を冷やしてくる」
あの子の真っ直ぐなところを見ていたら、眩しくて、自分も反射されられそうで......怖かった。
ふと一粒の涙がこぼれ落ちてしまって、
「先輩!」
と、呼び止められそうになったけど、もう私にはどうしたらいいのか分からないと、人混みの中に紛れ込んだ。
あの子に弘大の事は好きじゃないって、はっきり言わないといけないのに......
どうして自分の気持ちに嘘がつけないの?
弘大はあの子が好きって、知ってるのに...
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