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火の国のギルド
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「おーい、戻ったぞーって、あれ?誰もいない?」
出ていった時は騒がしかった部屋には、誰もいない。
「風呂にでも入りに行ったんじゃないのか?ギルドの公衆浴場があっただろ?」
答えてこそすれど、リナは目を合わせてくれない。
これもいつものことだ。
時間が経てば落ち着く。
「それならいいんだが、なにか忘れている気がする」
風呂…風呂か。
「先輩は過保護過ぎるんだ。もっと2人を信じてもいいと思うぞ」
「その台詞、さっきのリナに聞かせてやりたいな」
「う、うるさい!」
目線だけをそらしていた顔が、完全にそっぽを向いた。
今日はやけに感情が出るな。
それだけホタルが楽しみってことか。
ガラガラガラ。
急に音がして、奥の襖が開く。
あ、思い出した。
この部屋には露天風呂がついているんだった。
で、今はそこから誰かが出てきた、と。
ここからどうなるかなんて、考えるまでもない。
「まったくミキったらドジね。着替えを持っていくのを忘れるなんて」
「エミリも同じでしょ」
楽しそうに話をしながら出てくる2つの影。
平なシルエットと凹凸のあるシルエット。
その2つは、同時にこちらを向いた。
「私は常習犯だからいいのよ…って、嘘」
目があってしまった。
布ひとつ纏わない、産まれたままの姿の少女と。
「しぇ、しぇんぱいっ!?」
目が合ってしまった。
白いタオルで大事なところだけを隠している少女と。
「た、ただいま…リナをつれてきたぞ…?」
笑顔を向ける。
「そう、おかえり」
エミリは気にした様子もなく通りすぎると、クローゼットを開けた。
「見てみて、浴衣よ!ちゃんと人数分ある!似合うかしら」
ガサゴソと、漁る音が聞こえる。
なにしてんだ、といつもなら咎めるところだったが、動くことができない。
今動いたら大惨事だ。
ミキの目は涙でいっぱいだ。
「えーと…だな…湯加減はどうだった?」
問いかけるも、ミキは答えない。
完全に固まってしまっているようだ。
「なあにしてるのよ!ミキも着ましょう!」
エミリがミキを引っ張った瞬間、事件は起きた。
体を被っていた布が落ち、全身が露になる。
終わったな。
「いやーーー」
叫び声と同時に、俺の周囲を力の結晶が生まれる。
普通なら見えない透明の塊。
俺の目はハッキリとらえ、取り囲む壁になり、動きを邪魔する。
そしてもうひとつ。
頭上に四角い塊が。
こんなのが当たったら痛そうだ。
けれどミキに出来るのか?
生み出した結晶を、自分の力から引き離すことなんて。
考えている間に、頭上の塊は動き出し、近づいてくる。
ミキのやつ、力の扱いがうまくなっているな。
後で褒めてやらないと。
「ウガっ」
頭に物体が直撃し、俺は意識を失った。
出ていった時は騒がしかった部屋には、誰もいない。
「風呂にでも入りに行ったんじゃないのか?ギルドの公衆浴場があっただろ?」
答えてこそすれど、リナは目を合わせてくれない。
これもいつものことだ。
時間が経てば落ち着く。
「それならいいんだが、なにか忘れている気がする」
風呂…風呂か。
「先輩は過保護過ぎるんだ。もっと2人を信じてもいいと思うぞ」
「その台詞、さっきのリナに聞かせてやりたいな」
「う、うるさい!」
目線だけをそらしていた顔が、完全にそっぽを向いた。
今日はやけに感情が出るな。
それだけホタルが楽しみってことか。
ガラガラガラ。
急に音がして、奥の襖が開く。
あ、思い出した。
この部屋には露天風呂がついているんだった。
で、今はそこから誰かが出てきた、と。
ここからどうなるかなんて、考えるまでもない。
「まったくミキったらドジね。着替えを持っていくのを忘れるなんて」
「エミリも同じでしょ」
楽しそうに話をしながら出てくる2つの影。
平なシルエットと凹凸のあるシルエット。
その2つは、同時にこちらを向いた。
「私は常習犯だからいいのよ…って、嘘」
目があってしまった。
布ひとつ纏わない、産まれたままの姿の少女と。
「しぇ、しぇんぱいっ!?」
目が合ってしまった。
白いタオルで大事なところだけを隠している少女と。
「た、ただいま…リナをつれてきたぞ…?」
笑顔を向ける。
「そう、おかえり」
エミリは気にした様子もなく通りすぎると、クローゼットを開けた。
「見てみて、浴衣よ!ちゃんと人数分ある!似合うかしら」
ガサゴソと、漁る音が聞こえる。
なにしてんだ、といつもなら咎めるところだったが、動くことができない。
今動いたら大惨事だ。
ミキの目は涙でいっぱいだ。
「えーと…だな…湯加減はどうだった?」
問いかけるも、ミキは答えない。
完全に固まってしまっているようだ。
「なあにしてるのよ!ミキも着ましょう!」
エミリがミキを引っ張った瞬間、事件は起きた。
体を被っていた布が落ち、全身が露になる。
終わったな。
「いやーーー」
叫び声と同時に、俺の周囲を力の結晶が生まれる。
普通なら見えない透明の塊。
俺の目はハッキリとらえ、取り囲む壁になり、動きを邪魔する。
そしてもうひとつ。
頭上に四角い塊が。
こんなのが当たったら痛そうだ。
けれどミキに出来るのか?
生み出した結晶を、自分の力から引き離すことなんて。
考えている間に、頭上の塊は動き出し、近づいてくる。
ミキのやつ、力の扱いがうまくなっているな。
後で褒めてやらないと。
「ウガっ」
頭に物体が直撃し、俺は意識を失った。
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