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火の国のギルド

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 部屋に案内するホムラの元に、浴衣の女性が駆け寄ってきた。
 顔色は青白く、俺達に会釈すると耳打ちを始めた。

「本当ですかっ」

 ホムラの顔色もみるみる青くなり、俺たちを見て固まった。

「もしや被害者がでたのか?」

 だったら今すぐにでも向かわないと。
 ゆっくり休んでいる場合ではない。

「いえ、そういうわけでは…いえ、ある意味ではクエストに関わることかもしれません」
「要領を得ないな。はっきり言ってくれ」
「その、ですね…2部屋ご用意させていただいたというお話なのですが、手違いで1部屋埋まってしまいまして…」
「つまり、1部屋しか開いていないと」
「も、申し訳ございません」

 浴衣の女性が頭を下げてきた。

 困ったな。
 さすがに女の子三人と同じ部屋で寝るわけにはいかない。

 勘違いしないでくれ。
 俺は全く気にしない。
 
 手を出したりなんてするわけないだろ?
 なんか言い訳みたいになってるけど気のせいだ。

「わ、私は一緒でも…その…じゃいじょうぶじぇしゅよ」

 カミカミでよくわからないが、ミキはいいらしい。
 目をそらすどころか、ガン見してきて圧が凄い。

「別にいいんじゃない」

 エミリなんて全く意に介していない。

「いや駄目だろ。俺は他の宿を探す…って、なんのつもりだ」

 回れ右をして外に出ようとすると、ミキとエミリが両手を広げて立っていた。
 こいつら、俺と同室なのを歓迎していやがる。

「リナ、なんとか言ってやってくれ」

 こんな時に頼りになるのはリナしかいない。
 バッサリぶった切ってくれるはずだ。

「ふ、二人がそうしたいなら、その…それで、いいぞ」

 顔を真っ赤にしながら、下を向いている。
 バッサリ切るどころか、錆びて刃が通らなさそうだ。

 だが諦めるのは早い。
 リナが『ノー』といえば、強気な二人だって諦める。

「俺の目を見て言ってもらっていいか?」
「む、無理だ。だ、だが、二人の好きにしてくれえええええええ。私は後から行くううううううう」

 リナは叫びながら、歩いてきた方へと引き返していった。

「ミキ、エミリ、そこをどいてくれ。リナを連れ戻してくる」
「大丈夫ですよ先輩。リナなら勝手に戻ってくるわ」
「何を根拠に…ミキなら分かってくれるよな」

 首を縦に、横にブンブンと振っている。
 肯定なのか否定なのかわからないが、動かないあたり否定なのだろう。

「ミスした我々が言うのもなんですが、他の宿に交渉してみますので、一度お部屋に参りますか?」

 心底申しなさそうに言われたら、頷くしか出来なかった。


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「うわーすごーーーい」

 部屋に入るなり、エミリは大はしゃぎだ。
 エミリだけじゃない。あのおとなしいミキですらも、スキップをしている。

「こんな部屋が2つも用意されるはずだったんですか?」
「はい。すみません」
「いや、責めてるんじゃなくて、どっちかと言うと、申し訳ないと言うか…」

 畳部屋が2つあって、10人近くが余裕で泊まれる。
 おまけに、専用の露天風呂までついている。

 普通に泊まったらいくらかかるんだよ、ここ。

「これなら一緒に泊まっても問題ないか」

 仕切りの障子をしめておけば、別の部屋みたいなもんだ。
 話し声とかは丸聞こえだけど。

「先輩、一緒に泊まるんですか?」

 ミキが壁から半分だけ顔を出してくる。
 期待半分、不安半分と言ったところか。

「そうだな、とりあえずリナを探してくるよ。二人はゆっくり風呂でも入っていてくれ」

「「はーい」」

 嬉しそうな声を背中に、俺は部屋を出るのだった。
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