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プロローグ

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「先輩…今すぐ燃やしたいのだが…」

 剣を纏っていた火の粉は消えている。
 だがその気になれば、無抵抗な男など消し炭にすることなど、リナにとっては容易だ。

「俺もそれには同意だが、ここは抑えてくれ」
「ぐっ、分かった…」

 聞き分けがよくて助かる。
 いつもこうであってくれたらいいんだけどな。

「ひとつ確認だが、狙いは最初からエミリをだったんだな?」
「ああ、そして君はずるいね。儚いこの一瞬を独り占めだ。もっとみんなに共有していいとは思わないか?彼女の笑顔、振る舞い、ぬくもり。その全てが尊いとは思わないかい!」

 分かったことがある。
 この男は変態だ。
 ついでに言うならロリコンだ。
 対象年齢は10歳までとか言い出すのだろう。

 ちなみにエミリは今年で12だから、オーバーしてるけどな。

「言いたいことはそれだけか?」
「もしや、共感してくれるのかい?では僕にもぬくもりをっ」
「いいぜ、くれてやる」

 ゆっくりと、エミリを抱きしめる力を緩める。
 不安そうな目を一身に受けて、俺は立ち上がる。

「さあ、こちらへっ!」

 歓喜の声を上げると男に向かって、俺は駆けた。

「間接ぬくもりをだけどなっ!」

 エミリの頭に触れていた手を拳にし、全力でぶん殴った。

「がっ、間接ぬくもり、だと…さすがにそんな趣味は…がはっ」
「二度とエミリの前に現れるんじゃねえ」

 振り向くと、エミリの姿は見えなかった。
 リナが誰かを抱きしめているから、きっとその中だろう。
 背中の右と左からは、ツインテールの尻尾も見えている。

 怯える友人を抱きしめる女の子達。
 あの変態野郎じゃないが、『尊い』とは今の状況で使う言葉なのではないだろうか。

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 数日後、今回の一件についてギルドから報告があった。
 男の正体は小説家で、そこそこ人気があったらしい。
 最近は新作を書けずに悩んでいて、町を度々徘徊していたという。

 最後に書いたのは、主人公と怪盗が戦う内容で、決戦の場は美術館。
 ここから先は…まあ、察してくれ。
 
 ひとつだけ付け加えるのなら、今朝のゴミはやけに重かった。
 気になって見てみると、本が10冊ほど入っていた。
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