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第3章~港町での物語~

イレギュラーでの初仕事をもらいます2

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 気まずい空気になりかけたその時、口を開いたのはミサだった。

「ということだが、どうだいヤマト。行ってくれるか?」

 ティアがまだ何かを隠してるのは間違いなかったが、隠し事なんて誰にだってあることだ。それほど気にすることではない。
 それに、俺はイレギュラーの役に立つと決めているのだ。

「もちろんだ」

 俺が頷くと、ティアは安心したようにほっと息を吐いた。

「それで出発はいつなんだ?」
「そうね…三日以内には出たいわね」
「分かった。出るときは行ってくれ」

 俺すぐに頷くと、目の前の二人は驚いた顔を浮かべた。

「おいおいヤマト、荷造りはしなくていいのか」
「必要ない。俺にはインベントリがある」
「インベントリとは何だ?」

 考えてみれば、加護の効果を一つ一つ説明したことはなかった。隠していたわけではないし、聞かれれば答える。ただ、お互いに話す機会がなかったのだ。

「異空間につながるアイテムボックスかな。生きているものとか大きいもの以外は入るから、俺の私物はほとんど入っているよ」
「なるほど。だからヤマトはいつもリュックを持ち歩かなかったのか」

 ティアは出歩く時にポーチを持っている。彼女は戦闘員でないのだからそんなものかもしれない。
 ならばミサは…そういえばいつも拠点にいて、出歩くところを見たことがないな。
 この二人では全く参考にならなかったが、普通の冒険者は小さくでもA4サイズぐらいのリュックを持ち歩き、中には食材や武器、回復アイテムなんかを入れたりしている。

「それは…すごいわね。えっと私には準備が必要だから、そうね…出発は明後日の朝にしましょう」
「分かった。ちなみにどうやって行くんだ?」

 特性白馬の羽…背中には根が生えるやつのことは、二人も知っている。ティアを抱えて翔んでくれと言われれば喜んで引き受ける。
 その速度は、馬車や天馬、俺の知る限りどんな移動手段よりも早い。

「行き方は決まっているわ。ヤマトは私に着いてきてくれるだけで大丈夫よ」
「そういうことなら…そうだ、目的ぐらいは聞いてもいいか?」
「そうね、お墓参りかしら」

 なるほど。それならば地域ごとに風習があってもおかしくない。おとなしくティアの言うことに従うとするか。

「分かった」
「それじゃあ私は準備をするから先に行くわね」

 話を終えると、彼女にしては珍しく早足で去っていく。明らかに、普段のティアではなかった。

「ただの墓参りではないんだよな?」

 ミサはすぐには答えない。いつものように豪快に笑うこともない。
 それはつまり、俺の予想が正しいということだ。

「何も聞かず、黙って着いて行ってくれ。アタイたちは事情を知っているから、どうしても空気が重くなっちまうんだよ」

 イレギュラーのみんなは知っていて、知らないのは俺だけか。それも仕方のないことだ。イレギュラーにいられることになったとは言え、俺は日がまだ浅い。

「それと、出来れば楽しんでくれ。それが一番、ティアが安心するはずだ。女の子との二人旅だぞ。最高じゃないか?」

 今度はニヤッと笑った。
 そういえば、RPGや異世界転生では定番の『女の子と二人で旅をする』をまだやっていなかった。
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