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第2章~ヴァルキリーを連れ出せ~
セイラは無事に迎えられました
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「到着……っと」
時間にすればほんの3時間程度の出来事だっただろうか。
セイラを連れて、イレギュラーの拠点に戻ってきた。
「そういえばヴァルキリーを連れてくるなんて一言も言わなかったような……」
今更になって、断られたらどうしようとか思い始めた。あー、くそっ、なるようになれだ!
「おかえり」
扉をくぐると、ユレイルが出迎えてくれた。
「た、ただいま……それで、その、ヴァルキリーを連れてきたんだけど」
「そうか」
短く言うと、ローブを揺らしながら廊下を歩き出した。
えーっと、それだけ?
もしかして、変に心配しているのは俺だけなのか?
結論から言えば、そのとおりだった。
「愛い子じゃないか」
「ほんとにね!!」
俺たちが部屋に入るなり、ミサとティの女子2名はセイラにかけより、椅子に座らせた。
ティアは後ろに回り込むと髪を好きなようにいじっている。さっきはポニーテールだったが、今はおさげ髪だ。個人的には今のほうが好きだ。水色の髪と青いドレスとも相まって、お姫様みたいだ。
「まるでお人形だな」
ミサは腕を組むとうんうんと大きく頷いている。
とりあえず、受け入れてもらえたようで良かった。
「ヤマトよ、お前はこんなに可愛い子たちを7人も侍らせているのか?」
ミサの目は真剣だった。
そういえば転生前のアンケートに、「女の子を侍らせたいですか?」なんて項目があった気がする。答えはもちろん、ノーだったが。
もしかしてイエスにしていたらこの世界に転生していなかったのか?
「何よそれずるい!私にも紹介して!!」
ティアは次の髪型を考えていたようだが、セイラがおさげを気に入ったようなので手を止めた。もしかして俺の好みに合わせてくれたのか?
セイラは俺と目が合うと、すぐに下を向いてしまった。
「まったく騒がしいぞ……」
ユエはずっと本を読んでいたが、呆れたようにため息をついた。だが決して、今の状況を嫌がっている様子ではなかった。
「えーっと……セイラを受け入れてくれてありがとう」
「可愛い子ならいくらでも歓迎だ!」
ミサが意気揚々に言うと、ティアも続いた。
「そうよ。残りの6人はいつ来るの?」
そうそう、俺のジョブ、召喚師についての説明は昨日の宴で済ませてある。7人のヴァルキリーと契約していること、彼女たちが今はクランにいることあたりだ。
「ありがとう……それで、セイラの部屋がほしいんだけどいいかな?」
「部屋ならいくらでも空いている。好きなところを使え」
ユエは興味なさそうに言うと、別の本を開いた。
「そんな冷たい言い方しなくてもいいだろ。ねえお嬢ちゃん、部屋はどうしたい?」
ミサが腕組みしたまま聞くと、セイラは怪訝な顔を浮かべた。俺以外に対してそんな反応をするなんて驚きだ。
「……セイラ」
「え、呼んでいいのか?」
ミサが困ったように聞き返すとセイラは頷いた。
「……ヤマトのお友達ならいい」
「ハッハッハ、お友達、か」
何がおかしいのか、ミサは豪快に笑った。隣ではティアも嬉しそうだ。
「……違うの?」
「さてな、それよりもどんな部屋がいい」
「……ん」
セイラは無言で俺を指差した。
「……ヤマトの部屋」
「は?はああああああああああ!?それは流石にマズイだろ!?」
「……今までも一緒に寝てた」
それはたしかにそうだ。だが決してやましい意味ではない。ご機嫌取りの一環であり、寝顔を見ていたら眠くなってきて気がつけばとかってやつだ。そうだ、添い寝だ。俗に言う添い寝ってやつだ。だというのに……。
「ほほう」
「あらまあ」
ニヤニヤとした視線が突き刺さる。
「別にやましいことはしてないからな?」
俺の必死に問いかけた届いたのか、届かなかったのか。ただばっさり言われた。
「ならば別にいいだろ」
こうして俺は二人に押し切られ(?)、セイラと同室になってしまった。
部屋に向かうセイラの足取りはやけに弾んでいた。いつもの眠そうな姿からは想像できないぐらいに、きっちと背筋を伸ばし、まっすぐに前を向いている。
思えば、クランの塔を出てからずっとご機嫌な気がする。やはり塔に閉じこめられていて窮屈だったのか?悪いことをしたな。
そんなセイラも、部屋に入ると同時に絶望した顔を浮かべた。
なぜだ?昨日住み始めたばかりで汚いはずはない。見られて困る類の本やその他の物品もない。というか、こっちの世界に来てからそんなのは一度も手にしてはいない。
あるのはタンスや机といったどこにでもある家具とベッドぐらいだ。
「……召喚」
セイラは突然言葉を発すると、部屋のベッドを中心に魔法陣が現れた。
「何をするつもりだ!?」
シングルベッドはみるみるうちに大きくなり、セイラがいつも使っているキングサイズに変貌を遂げる。おまけに、どこにでもあるような質素なシーツとマットレスは、ふわふわのものに変わっていた。
しかし、これだけでは終わらない。ベッドを囲むように四本の柱が立てられ、青い帳が作られる。
なんということでしょう。ものの数秒で、塔にあったのと同じ睡眠スペースが出来上がったのです。その広さはなんと部屋の半分!圧迫感が半端ない。
「セイラ、これは?」
「……こうしないと眠れない」
「枕が変わると寝られない的な?」
「……そう。環境が違うと寝られない」
セイラは一人で歩き出し、帳の中へと吸い込まれていった。ま、いっか……。
覗き込むとすでに眠っていた。
さて、俺はどうしようか……。寝顔を見つめながら明日の作戦を練っていると、俺の意識も闇に落ちていた。
時間にすればほんの3時間程度の出来事だっただろうか。
セイラを連れて、イレギュラーの拠点に戻ってきた。
「そういえばヴァルキリーを連れてくるなんて一言も言わなかったような……」
今更になって、断られたらどうしようとか思い始めた。あー、くそっ、なるようになれだ!
「おかえり」
扉をくぐると、ユレイルが出迎えてくれた。
「た、ただいま……それで、その、ヴァルキリーを連れてきたんだけど」
「そうか」
短く言うと、ローブを揺らしながら廊下を歩き出した。
えーっと、それだけ?
もしかして、変に心配しているのは俺だけなのか?
結論から言えば、そのとおりだった。
「愛い子じゃないか」
「ほんとにね!!」
俺たちが部屋に入るなり、ミサとティの女子2名はセイラにかけより、椅子に座らせた。
ティアは後ろに回り込むと髪を好きなようにいじっている。さっきはポニーテールだったが、今はおさげ髪だ。個人的には今のほうが好きだ。水色の髪と青いドレスとも相まって、お姫様みたいだ。
「まるでお人形だな」
ミサは腕を組むとうんうんと大きく頷いている。
とりあえず、受け入れてもらえたようで良かった。
「ヤマトよ、お前はこんなに可愛い子たちを7人も侍らせているのか?」
ミサの目は真剣だった。
そういえば転生前のアンケートに、「女の子を侍らせたいですか?」なんて項目があった気がする。答えはもちろん、ノーだったが。
もしかしてイエスにしていたらこの世界に転生していなかったのか?
「何よそれずるい!私にも紹介して!!」
ティアは次の髪型を考えていたようだが、セイラがおさげを気に入ったようなので手を止めた。もしかして俺の好みに合わせてくれたのか?
セイラは俺と目が合うと、すぐに下を向いてしまった。
「まったく騒がしいぞ……」
ユエはずっと本を読んでいたが、呆れたようにため息をついた。だが決して、今の状況を嫌がっている様子ではなかった。
「えーっと……セイラを受け入れてくれてありがとう」
「可愛い子ならいくらでも歓迎だ!」
ミサが意気揚々に言うと、ティアも続いた。
「そうよ。残りの6人はいつ来るの?」
そうそう、俺のジョブ、召喚師についての説明は昨日の宴で済ませてある。7人のヴァルキリーと契約していること、彼女たちが今はクランにいることあたりだ。
「ありがとう……それで、セイラの部屋がほしいんだけどいいかな?」
「部屋ならいくらでも空いている。好きなところを使え」
ユエは興味なさそうに言うと、別の本を開いた。
「そんな冷たい言い方しなくてもいいだろ。ねえお嬢ちゃん、部屋はどうしたい?」
ミサが腕組みしたまま聞くと、セイラは怪訝な顔を浮かべた。俺以外に対してそんな反応をするなんて驚きだ。
「……セイラ」
「え、呼んでいいのか?」
ミサが困ったように聞き返すとセイラは頷いた。
「……ヤマトのお友達ならいい」
「ハッハッハ、お友達、か」
何がおかしいのか、ミサは豪快に笑った。隣ではティアも嬉しそうだ。
「……違うの?」
「さてな、それよりもどんな部屋がいい」
「……ん」
セイラは無言で俺を指差した。
「……ヤマトの部屋」
「は?はああああああああああ!?それは流石にマズイだろ!?」
「……今までも一緒に寝てた」
それはたしかにそうだ。だが決してやましい意味ではない。ご機嫌取りの一環であり、寝顔を見ていたら眠くなってきて気がつけばとかってやつだ。そうだ、添い寝だ。俗に言う添い寝ってやつだ。だというのに……。
「ほほう」
「あらまあ」
ニヤニヤとした視線が突き刺さる。
「別にやましいことはしてないからな?」
俺の必死に問いかけた届いたのか、届かなかったのか。ただばっさり言われた。
「ならば別にいいだろ」
こうして俺は二人に押し切られ(?)、セイラと同室になってしまった。
部屋に向かうセイラの足取りはやけに弾んでいた。いつもの眠そうな姿からは想像できないぐらいに、きっちと背筋を伸ばし、まっすぐに前を向いている。
思えば、クランの塔を出てからずっとご機嫌な気がする。やはり塔に閉じこめられていて窮屈だったのか?悪いことをしたな。
そんなセイラも、部屋に入ると同時に絶望した顔を浮かべた。
なぜだ?昨日住み始めたばかりで汚いはずはない。見られて困る類の本やその他の物品もない。というか、こっちの世界に来てからそんなのは一度も手にしてはいない。
あるのはタンスや机といったどこにでもある家具とベッドぐらいだ。
「……召喚」
セイラは突然言葉を発すると、部屋のベッドを中心に魔法陣が現れた。
「何をするつもりだ!?」
シングルベッドはみるみるうちに大きくなり、セイラがいつも使っているキングサイズに変貌を遂げる。おまけに、どこにでもあるような質素なシーツとマットレスは、ふわふわのものに変わっていた。
しかし、これだけでは終わらない。ベッドを囲むように四本の柱が立てられ、青い帳が作られる。
なんということでしょう。ものの数秒で、塔にあったのと同じ睡眠スペースが出来上がったのです。その広さはなんと部屋の半分!圧迫感が半端ない。
「セイラ、これは?」
「……こうしないと眠れない」
「枕が変わると寝られない的な?」
「……そう。環境が違うと寝られない」
セイラは一人で歩き出し、帳の中へと吸い込まれていった。ま、いっか……。
覗き込むとすでに眠っていた。
さて、俺はどうしようか……。寝顔を見つめながら明日の作戦を練っていると、俺の意識も闇に落ちていた。
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