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出会い~始まりと終わり~

ルームメイトとの誓い

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 寮に帰ってもすることがないので、学園の施設を確認しておいた。
 食堂、図書館、実習室。
 どれも鍵がかけられていて、中に入ることは出来なかった。

 授業が速攻で終わったのは、単にうちの担任がめんどくさがりだったからではない。荷物の搬入は最短で入学式後当日と決まっているのだ。ほとんどの生徒はそのまま部屋にこもり、荷物整理に奮闘する。
 俺がなぜそれをしなかったかと言えば、必要がないからだ。

「205号室、ここか」

 白い床に白い壁。距離感を失いそうな真っ白な廊下を進んだ角に、俺の部屋はあった。
 ルームメイトはすでにいるようで、扉の下からは光が漏れていた。
 ここはノックをしてから入るべきだろうか?
 いやいや俺の部屋だ。そのまま入っても問題ないか?

 などと考えていると、扉は勝手に開いた。

「やはり君か。会えて嬉しいよ」

 金髪の美男子、レイモンド=サーティスは白い歯を覗かせてながら迎えてくれた。

「なぜ俺だと?」
「僕の後に教室を出た人物は他にいなかったからね。そうだ、休憩がてらお茶をしているんだ。君も一杯どうだい?」
「女子かよ」
「よく言われるよ。さあ、どうぞ」

 うやうやしくお辞儀をすると、俺は中に招き入れられた。
 いや、招き入れられたはおかしいか…俺は部屋に入った。

 部屋の真ん中には丸テーブルが置かれ、ティーポットにカップ、クッキーまで用意されていた。

「マジの休憩タイムかよ」
「すまない。毎日の習慣になっていてね」
「ま、いいけど」

 紅茶を飲むのは後にして、部屋の端にあったかばんを手にとった。

「君の荷物はそれだけだったようだが」
「一生ここで暮らすわけじゃないんだ。必要なら買いたすさ」

 中身は着替えと教科書だけだ。
 それよりも気になるのは、壁いっぱいに積み上げられているダンボールの山だ。当然俺のものではない。
 旅行に行く子供が、嬉しすぎて遊び道具を持てるだけに持ってきたような量だ。

「多すぎじゃないか?」
「そ、そんなことは…いやすまない。ここに来るのを楽しみにしていたのは認めよう」
「別に責めてるわけじゃない」

 やたら申し訳無さそうに言われたのでフォローはしておいた。
 
「そうか、ならよかった。それに僕はやはり嬉しいんだ」
「それはさっきも聞いたぞ」
「そうではない。君に出会えたことがだ」

 マジ顔だ。もしかしてこいつ、女より男が好きとかそんなんじゃないよな?
 念のために、寝る時は枕元に剣を置いておくか。

「僕は留学生だ。おまけに学年主席と来た。皆は特別な目で見てくる。だが君は違う、普通だ。むしろ冷たいぐらいだ」
「そっけなくて悪かったな」
「ははは、君は本当に冗談が上手いんだな」

 精一杯皮肉を込めたはずだったが、むしろ好意的に取られてしまったようだ。それからレイモンドは、俺に向かって手を差し出してきた。

「君とは長い付き合いになりそうだ。3年間よろしく頼むよ」
「ほどほどによろしく」

 俺達は握手を交わした。
 ねっとり掴まれたらどうしようかと思ったが、いたって普通の握手だった。

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