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城からの脱走劇
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牢獄を出たところで、アリスは困ったようにこちらを向いた。
「あの……クリスティーナ様、助けると行ったところ申し訳ないのですが……私はここからどうやって出るのかを知りません……」
「それならなんとかなるかも」
長い床にきらびやかに彩られたきれいな壁。どれもゲームの中で見た光景だ。
そして私は、この広い城内を自由に歩いたことがある。
シナリオ攻略のミニゲームで、城から脱出する場面があったからだ。クリスティーナとしてではなく、アリスとしてであったが。
「では道案内をお願いします」
「分かりました。えっと……最初の道は右……その次は左……」
ゲームの記憶をたどりながら、最短経路で脱出を試みる。途中で兵士もいたが、すれ違うための隠れ場所も全て把握済みだ。
順調に進んでいたはずなのだが……困った事が起きた。
「行き止まり……」
そうだった。私はゲームをガチでやり込むタイプではない。
攻略サイトのマップを見ながらプレイするタイプだ。
城内マップのすべてを覚えているわけではない。
それでもこの行き止まりが何かは分かった……控えめに言って最悪だ。
「詰みポイント……」
ここは兵士が侵入者を追い込むための場所。普段なら誰も通ることはなく、通過しただけで発動するセンサーも設置されている。
「何者だ!」
振り返るとそこには……城の兵士たちが集まってきていた。
「城から脱獄した者がいると聞いている……さては貴様らだな!」
終わった……このままでは本当に終わり。バッドエンドを迎えてしまう。
確かに私はバッドエンドを目指していた……だけど、こんなバッドエンドは望んだものとは違う。
考えるんだ……確かにこの場所は行き止まりで詰みポイントだ。城の兵士に囲まれて全てが終わる。
「ごめんなさい、クリスティーナ様……」
今すぐにも消えてしまいそうな儚い笑み。まるでバッドエンド直前にはピッタリのと言えるかもしれない……いや待て。
確かにゲームのバッドエンドの展開……だけどそれは、アリスが主人公の時の話だ。
今の私はアリスではない。悪役令嬢と名高いクリスティーナだ。
第一王子の婚約者で傍若無人。どこに出しても恥ずかしくない悪役令嬢だ。
今の私はクリスティーナ……悪役令嬢なら、城の兵士に命令してもなにも不思議はない。
「お黙りなさい!」
できるだけ自信満々に聞こえるように言い放つと、兵士が怯むのが分かった。
「私を誰だとお思いで?ヴァリーン・ブオノーモ第一王子の婚約者、クリスティーナ・ゲバーゼよ!今すぐ道を開けなさい!」
「ク、クリスティーナ様だとっ!?」
「なぜこんなところに……いや、あの悪役令嬢ならいてもおかしくないのか……?」
「だが本物とは限らない……」
「前に遠目に見たことがあるが確かに本人ぽいぞ……」
兵士たちは騒ぎ立てて、わずかに隙間ができた。
「通りますわよ!」
アリスの手を取ると、わずかに空いた隙間を駆け抜ける。
髪が短くて本当によかった。もし長かったら髪が鎧に引っかかっていたかもしれない。
詰みポイントを駆け抜けて、左右を見渡す。すると見つけた。
脱出路につながる目印を。
壁に書かれているのは大きな門。それは一件するとただの絵に見えるが、実は非常用の脱出ゲートだ。
条件を満たしたときにだけ発動し、限られた人しか通ることができない。
そして私は今、その条件を満たしている。
「アリスさん、あの門の絵に触れて!」
「え?えっと……わ、分かりました!」
アリスが戸惑いながらも、壁の絵に触れる。すると壁が光りだし、門の絵が動き出し、さっきまではなかった黒い空気感が生まれた。
「飛び込むわよ」
「は、はい!」
アリスの手を握ったまま、ふたり一緒に飛び込んだ。
「あの……クリスティーナ様、助けると行ったところ申し訳ないのですが……私はここからどうやって出るのかを知りません……」
「それならなんとかなるかも」
長い床にきらびやかに彩られたきれいな壁。どれもゲームの中で見た光景だ。
そして私は、この広い城内を自由に歩いたことがある。
シナリオ攻略のミニゲームで、城から脱出する場面があったからだ。クリスティーナとしてではなく、アリスとしてであったが。
「では道案内をお願いします」
「分かりました。えっと……最初の道は右……その次は左……」
ゲームの記憶をたどりながら、最短経路で脱出を試みる。途中で兵士もいたが、すれ違うための隠れ場所も全て把握済みだ。
順調に進んでいたはずなのだが……困った事が起きた。
「行き止まり……」
そうだった。私はゲームをガチでやり込むタイプではない。
攻略サイトのマップを見ながらプレイするタイプだ。
城内マップのすべてを覚えているわけではない。
それでもこの行き止まりが何かは分かった……控えめに言って最悪だ。
「詰みポイント……」
ここは兵士が侵入者を追い込むための場所。普段なら誰も通ることはなく、通過しただけで発動するセンサーも設置されている。
「何者だ!」
振り返るとそこには……城の兵士たちが集まってきていた。
「城から脱獄した者がいると聞いている……さては貴様らだな!」
終わった……このままでは本当に終わり。バッドエンドを迎えてしまう。
確かに私はバッドエンドを目指していた……だけど、こんなバッドエンドは望んだものとは違う。
考えるんだ……確かにこの場所は行き止まりで詰みポイントだ。城の兵士に囲まれて全てが終わる。
「ごめんなさい、クリスティーナ様……」
今すぐにも消えてしまいそうな儚い笑み。まるでバッドエンド直前にはピッタリのと言えるかもしれない……いや待て。
確かにゲームのバッドエンドの展開……だけどそれは、アリスが主人公の時の話だ。
今の私はアリスではない。悪役令嬢と名高いクリスティーナだ。
第一王子の婚約者で傍若無人。どこに出しても恥ずかしくない悪役令嬢だ。
今の私はクリスティーナ……悪役令嬢なら、城の兵士に命令してもなにも不思議はない。
「お黙りなさい!」
できるだけ自信満々に聞こえるように言い放つと、兵士が怯むのが分かった。
「私を誰だとお思いで?ヴァリーン・ブオノーモ第一王子の婚約者、クリスティーナ・ゲバーゼよ!今すぐ道を開けなさい!」
「ク、クリスティーナ様だとっ!?」
「なぜこんなところに……いや、あの悪役令嬢ならいてもおかしくないのか……?」
「だが本物とは限らない……」
「前に遠目に見たことがあるが確かに本人ぽいぞ……」
兵士たちは騒ぎ立てて、わずかに隙間ができた。
「通りますわよ!」
アリスの手を取ると、わずかに空いた隙間を駆け抜ける。
髪が短くて本当によかった。もし長かったら髪が鎧に引っかかっていたかもしれない。
詰みポイントを駆け抜けて、左右を見渡す。すると見つけた。
脱出路につながる目印を。
壁に書かれているのは大きな門。それは一件するとただの絵に見えるが、実は非常用の脱出ゲートだ。
条件を満たしたときにだけ発動し、限られた人しか通ることができない。
そして私は今、その条件を満たしている。
「アリスさん、あの門の絵に触れて!」
「え?えっと……わ、分かりました!」
アリスが戸惑いながらも、壁の絵に触れる。すると壁が光りだし、門の絵が動き出し、さっきまではなかった黒い空気感が生まれた。
「飛び込むわよ」
「は、はい!」
アリスの手を握ったまま、ふたり一緒に飛び込んだ。
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